マインドフルネス研修とは?企業に導入するメリットや実践方法を解説

  • マインドフルネス研修とは?企業に導入するメリットや実践方法を解説

    公開日:2025.03.19

    更新日:2025.03.19

    マインドフルネスとは、自分自身の身体感覚を研ぎ澄まし、「今」の瞬間に意識を集中してあるがままを受け入れることで心の状態を整えることです。企業の施策としてマインドフルネスを導入することで、集中力の向上、ストレス軽減、感情の制御、人間関係の改善などさまざまなメリットがあるとされています。 この記事ではマインドフルネス研修の概要、メリット・デメリット、実践方法、研修実施の流れなどを詳しく解説します。

マインドフルネス研修とは?

マインドフルネスとは、自分自身の身体感覚を研ぎ澄まし、「今」の瞬間に意識を集中して、あるがままを受け入れることで心の状態を整えることです。主に瞑想や呼吸法として実践され、ストレスの軽減や集中力の向上、生産性の向上などの効果があるとされます。マインドフルネスを実践することで、自分の中にある感情や思考への余計な反応を抑え、冷静で客観的な視点を持つことができます。ビジネスシーンや教育の場でも注目されています。

企業で注目される背景とは?

企業がマインドフルネスに注目するようになった背景には、社会情勢とビジネス環境の変化が関係しています。予測困難なVUCA時代と呼ばれる現在では、ビジネス環境は目まぐるしく変化し、状況に適応するだけでも社員には強いストレスと身体的負荷がかかります。そのような状況にあって、 ストレスを軽減しつつ人間らしさを大事にする手段の1つとして「マインドフルネス」が注目されました。 企業を取り巻く課題は環境の変化だけでなく、ハラスメントや早期離職、人材の高齢化などさまざまです。厳しい環境の中にあっても、社員が心身の状態をコントロールし、最大限のパフォーマンスを発揮するためにはマインドフルネスが欠かせなくなっています。マインドフルネス研修とは、企業と社員が安定的に働くために必要な研修といえるでしょう。

ビジネスシーンにマインドフルネス研修を導入するメリット

ビジネスにおいて、マインドフルネス研修を導入することでどのようなメリットがあるのか紹介します。

ストレス軽減・緩和

マインドフルネスにはストレスを直接軽減する効果ではなく、ストレスを外的刺激と捉え、どう向き合うかという心の姿勢を身につける効果があります。人間が働くうえでは、人間関係や仕事のノルマ、評価などさまざまな外的刺激があります。そのような外的刺激に対して、自分がどう向き合っていくかという意識を変化させることで、ストレスを軽減・緩和するのがマインドフルネスです。 ある研究では、マインドフルネスの瞑想を行った後に脳のMRIを撮影したところ、感情制御や自意識、記憶に関わる脳の一部が肥大化していたという結果もあります。脳が肥大化したということは、脳の血流が高まって機能が向上し、感情的になるのを抑える効果があったということです。つまり、マインドフルネスは科学的にも証明されたストレス軽減策といえます。

集中力の維持・向上

マインドフルネスは、他の余計な情報や雑念を取り払い、「今」のこの瞬間に集中することです。今の自分と正面から向き合うことで、高い集中力を発揮できるようになります。また仕事でも勉強でも同様ですが、周囲の雑音は少ないほど集中しやすくなります。マインドフルネスによって余計な音や声を遮断し、自分の内面と向き合うことで、集中力と生産性を高められるでしょう。最初のうちは難しくても、瞑想を繰り返すうちに集中力が高くなり、周囲の外的刺激によって集中力を乱されることも少なくなります。

人間関係の改善

マインドフルネスで自分自身と向き合うことで、自分の中にある考えや価値観、精神状態を自分で掴むことができるようになります。自分自身への理解度が高まることで、感情に振り回されることが少なくなり、他者の意見や考えを受け入れる余裕も生まれてきます。良好な人間関係を構築するには、他者の意見を傾聴し共感することが重要です。特に部下の多い管理職やメンバーを抱えるリーダー的立場にある人は、安定した精神状態で人と向き合う必要性が高い地位にあります。そのためマインドフルネス研修を通して部下と良い関係性を築くことができれば、マネジメントスキルの向上にもつながるでしょう。

従業員エンゲージメントの向上

マインドフルネスには従業員エンゲージメントを高め、定着率の向上というメリットもあります。マインドフルネスを取り入れることで、社員のストレスが緩和され、セルフアウェアネスの向上、集中力の向上、人間関係の改善といった良い効果が期待できます。そしてプラスの効果が現れることで、組織内の雰囲気や労働環境も改善され、従業員エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。社員にとって働きやすい環境とは、人間関係が良く、仕事に対するやりがいがあることです。マインドフルネス研修を導入すれば、社員が精神的な余裕を持ちながら仕事に取り組めるようになり、他者への配慮や思いやりを持った環境を醸成できます。社員のエンゲージメントが高まれば、会社の定着率が高まり、顧客満足度が向上し、組織の業績も改善するという好循環が生まれやすくなります。

セルフアウェアネスとセルフマネジメントの向上

セルフアウェアネスとは「自己認識能力」のことです。今の自分の感情はどのようなものか、自分の長所・短所、求めるものは何かなどの内面に向き合い、自分自身を深く理解することがセルフアウェアネスです。セルフアウェアネスが高まると、自分が本当に求めているものが把握でき、感情のコントロールやパフォーマンスが高まるとされています。またセルフマネジメントは日々の仕事や生活の中で、自分の能力を正確に把握し、仕事量や体調を管理することを指します。現代のビジネス環境においては、多忙な業務やストレスフルな環境により、心身の不調を来たす人も少なくありません。そのような環境を改善する施策として、マインドフルネスを導入することで、心身の健康の改善と創造性の高い仕事へとつなげていく効果が期待できます。

マインドフルネス研修のデメリット

マインドフルネスは社員のストレス対策、業務効率化の施策として有効な反面、デメリットもあることに注意が必要です。どのようなデメリットが起こりえるのか、2つのポイントを紹介します。

余計な葛藤が生まれる可能性がある

マインドフルネスは自分自身と向き合い、自分への理解を深めることで感情を制御し、対人関係の改善や集中力向上につなげるテクニックです。しかし自分と向き合うことで余計な葛藤が生まれ、不安感や悩みが深まってしまうケースもあります。特に自己肯定感の低い人の場合、自分を振り返ることで失敗や嫌な部分ばかりを思い出し、ストレスが増大してしまうことも考えられます。またマインドフルネス自体がスピリチュアルな側面を持っているため、社員によっては嫌悪感を抱く場合があることを理解しておくべきです。そのためマインドフルネスを企業で導入する場合には、研修受講も社員への強制はせず、自発的に希望する社員から限定的に開始するのがよいでしょう。

効果が出るまでに時間がかかる

マインドフルネスの効果は科学的にも証明されたものですが、導入してすぐに効果が出るものではありません。瞑想や座禅も同様ですが、深く集中するには経験と慣れが必要です。実際に一般社団法人日本産業カウンセラー協会の報告では、マインドフルネスの効果を半数以上の人が実感するまでに1か月以上を要したとの結果が出ています。そのためマインドフルネスは即効性を期待して導入するのではなく、長期的な効果を狙って実施するのがよいでしょう。付け加えると、効果が実感できないからすぐに止めるのではなく、一定期間毎に調査を行い、定量的な評価を行ったうえで判断することが大切です。自分の内面と向き合うというマインドフルネスの特性上、すぐに自分を変えるのではなく、少しずつでも変わっていくことに意味があるという認識を持ちましょう。
参考:一般社団法人日本産業カウンセラー協会 「組織におけるマインドフルネス推進において有効な方法および注意点の構造化の試み」P8

マインドフルネスの実践方法

マインドフルネスを実践する方法は、一般的にイメージされる瞑想以外にもいくつかあります。どのような実践方法があるかを紹介します。

マインドフルネス呼吸法

マインドフルネス瞑想とは、最も基本的な瞑想方法です。やり方は一般的な瞑想と同様に、床や椅子などの座ってリラックスできる場所で行います。また場所の設定も重要で、できるだけ周囲に雑音の少ない場所で行うのがよいでしょう。雑音の少ない場所が難しい場合は、人の出入りが少ない場所を選んでも問題ありません。実施方法は次の通りです。
・姿勢を正して楽な姿勢で座る。
・目は軽くつむった状態(半眼)にする。
・腹式呼吸で3~4秒かけてゆっくりと鼻から息を吸い、吸った時の倍の時間をかけて口から息を吐く。
・呼吸の途中で思考やイメージが湧いた場合、そのまま受け入れる。
・再び呼吸を繰り返す作業に集中する。
・5~15分程度、心が落ち着くまで呼吸を繰り返す。
マインドフルネス瞑想は基本的な瞑想方法ですが、最初のうちは呼吸に集中するのが難しいため、慣れるまでは短時間から練習していくのがおすすめです。呼吸法が円滑に行えるようになったら、10~15分程度の瞑想を行うとより効果的です。

ボディスキャン瞑想

ボディスキャン瞑想とは、体全体に意識を向ける瞑想法です。ボディスキャン瞑想は床や椅子などの座れる場所か、仰向けに寝られる場所で行います。実践方法は次の通りです。
・仰向けまたは座った姿勢で目を閉じる。
・腹式呼吸で3~4秒かけてゆっくりと鼻から息を吸い、吸った時の倍の時間をかけて口から息を吐く。
・つま先に意識を向け、そこから徐々に頭の頂点に向かうように意識を移動させる。
・意識を移動させる際は、ふくらはぎ、太もも、骨盤、腹部、胸、背中、首、頭といった順番で下から上がってくるように行う。
・意識を向けるときは、体の感覚や温度、緊張感、呼吸の状態なども認識する。
ボディスキャン瞑想は1回10~15分ほど行うことで、体をリラックスさせ、ストレス緩和や感情を制御する効果があります。実施中は時間の感覚が曖昧になったり、疲れていると眠ったりすることがあるため、タイマーやガイダンスなどを利用すると時間を区切りやすいでしょう。

歩く瞑想

歩く瞑想は、一般的な瞑想法よりも日常生活の中で手軽に行える瞑想法です。通勤や業務中、家事の最中などさまざまな場面で実践できます。実践方法は次の通りです。
・リラックスした状態で立つ。
・地面に触れている足の裏の感覚に意識を向ける。
・歩く際の足を上げる動作、足を着く瞬間、体重を移動する流れに意識を集中する。
・ゆっくりと歩きながら、上記の一連の動作を意識する。
「歩く」という普段意識せずに行っている動作に意識を集中することで、気付かずに行っていた体の動きや筋肉の使い方、足の裏の感覚などを細かく認識できます。また瞑想中は音や匂い、温度・湿度などの周囲の環境にも意識を向けてみましょう。歩く瞬間に意識を集中することで、集中力や感覚が研ぎ澄まされていきます。

マインドフルネスの企業の導入例

マインドフルネスを実際に導入し、企業の業績アップやストレスの軽減につながった企業の例を2社紹介します。

Google

世界的なIT企業であるGoogleは、マインドフルネスを導入して成功した代表例の1つです。Googleでは2007年からSearch Inside Yourself(SIY)というマインドフルネス研修をエンジニア向けに導入しました。
・目的:ストレス軽減、集中力向上、創造性の向上
・実施内容:社員の自主性に任せつつ、7週間のうち1日数分の瞑想の実施を推奨
オフィス内に専用の瞑想ルームも設置したうえで、1回あたり30分~1時間を目安としてマインドフルネスをスタートしました。結果として、参加した社員の生産性向上につながったうえ、業務効率化や人間関係の改善などさまざまなプラスの効果が発揮されました。

Yahoo!

検索サイトの1つとして有名なYahoo!も、マインドフルネスを導入した企業の1つです。Yahoo!はGoogleのSIYをモデルとして、2016年からマインドフルネス研修を開始しました。Yahoo!のマインドフルネス研修は、次の目的で実施されました。
・目的:自己認識・自己管理・モチベーション・共感・リーダーシップの向上
・実施内容:希望者は週1回計7回の芝生スペースでの瞑想に参加
また、自分のことを客観視するためのメタ認知トレーニングとして説明会を行いました。マインドフルネスを通して自分自身と周囲の状況、心理状態に対する客観視できる社員が増え、ストレス軽減や集中力アップなど、良い影響を及ぼしているようです。

マインドフルネス研修の流れとは?

マインドフルネス研修は、大まかにインプットとアウトプットの2部構成となっています。まず、インプットではマインドフルネスの概要や目的、なぜ必要とされているのか、効果などを学びます。マインドフルネスによる瞑想法にもさまざまな方法があり、目的や状況に応じた瞑想法の選択が重要です。インプットではマインドフルネスの基礎知識と合わせて、初心者向けに実践しやすいマインドフルネスの実践方法やテーマに沿ったトレーニング方法などを指導します。
・ライフスタイルと心の健康
・ストレスへの対応力を高める
・性格傾向と感情のコントロール
・人間関係とコミュニケーション
・ポジティブな考え方をつくる
上記のようなテーマに合わせ、なりたい自分をデザインする方法を学べます。次にアウトプットとして、マインドフルネスの実践的な方法をコーチングや動画で学びます。基本となるマインドフルネス瞑想のほか、呼吸法、ジャーナリング、マインドフルイーティングなどさまざまな実践方法を学べるのが研修のポイントです。瞑想というと多くの方が座って目を閉じ、呼吸に意識を集中する方法をイメージするでしょう。しかし思いついたことを書き出していくジャーナリング、ゆっくりと食事に時間をかけて意識を集中させるマインドフルイーティングなど、実践方法はさまざまです。マインドフルネス研修では瞑想を応用したさまざまなアウトプットを体験しながら学び、自分に合ったやり方を発見できます。マインドフルネスは短期間で効果が実感できるものではなく、継続することが何よりも重要です。自分が続けやすい方法を見つけるという観点でも、マインドフルネス研修を活用してみましょう。

組織強化とストレス軽減対策を進めるならユーキャンへ

ユーキャンの研修では、ビジネスシーンで必要なスキルや知識を基礎から応用まで幅広く提供しています。集合研修やオンライン、eラーニングまで企業のニーズに合わせた実施形式を用意しており、受講後のサポート体制まで完備しています。またユーキャンではマインドフルネス研修・講座として、セルフケア・ラインケアなどの各種メンタルヘルス講座を提供している点も特徴です。さらにユーキャンの研修では知識のインプットだけでなく、演習やテストを通した知識・スキルのアウトプットと経験の蓄積にも重点を置いています。ヒアリングを通して企業課題を明確化し、担当者との綿密な相談のうえで最適な研修カリキュラムを提案させていただきます。

まとめ

マインドフルネスには社員が自分自身と向き合い、集中力やパフォーマンスを高め、ストレス軽減と人間関係改善につながるなど、多くのメリットがあります。近年はビジネス環境や社会情勢の変化が激しく、企業は激動の時代を生きていくためにさまざまな施策が求められています。マインドフルネスはすぐに効果が現れる施策ではありませんが、組織力を強化し、社員が最高のパフォーマンスを発揮するための重要な施策です。マインドフルネス研修を通して、ストレスと感情をコントロールしながら働く力を身につけ、成長を続けられる企業を作りましょう。

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