1on1研修とは？目的・必要なスキル・内容について解説

傾聴スキル

傾聴スキルとは、相手の話に耳と目、心を傾け、真摯な態度で向き合うためのスキルです。相手に対して敬意を払いながら会話をするスキルとして、コミュニケーションでは重要な要素とされます。1on1ミーティングでは、上司が部下と1対1で面談を行うという性質上、上司が部下に意見を押し付けてしまいがちです。しかし傾聴スキルを高めることで、部下を1人の人間として認める姿勢を見せることになり、お互いに心を開いた会話ができるようになるでしょう。

質問スキル

質問スキルは、コーチングでも必要とされるスキルです。コーチングでは、相手が自ら課題に対する答えを見つけられるように、答えにつながるためのヒントを与えて成長を促します。人間を成長させるには多くの時間がかかりますが、 質問スキルが高いと1on1ミーティングで部下の自主性やモチベーションアップ、成長支援につながります。 部下が自らの意思で仕事へと向かい、自律した人材となるためには質問スキルを高めることが重要です。

指導力

指導力はティーチングで必要とされるスキルです。ティーチングは部下に対して業務上必要なスキルや手順を説明・指導することです。コーチングとは違い、定型的な業務や技術、知識を教えるのに適しています。指導力はティーチングにおける指導の上手さを指しており、指導力のある上司の下で働く部下は、多くの知識・スキルを素早く習得できます。状況に応じた質問スキルと指導力を使い分けることで、部下の成長を効果的に支援し、即戦力となる人材を育成できます。

フィードバックスキル

フィードバックとは、物事の結果に対して要点や課題を捉え、言葉として相手に伝えるスキルです。フィードバックスキルの高い人物は、部下の成長に必要なポイントを押さえながら、仕事への意欲を引き出すことができます。またフィードバックスキルの高い人は、「どう伝えれば相手にわかりやすいか」という相手を主軸に置いた考え方ができます。相手の心情を理解し、配慮する分別もあることから、ハラスメント行為を未然に防ぐこともできるでしょう。

承認・共感スキル

承認スキルや共感スキルとは、相手の考えや行動を受容したり、共感したりするスキルです。1on1ミーティングは、部下にとって上司と1対1で話すことになるため、少なからず緊張感を持つことになります。 上司が承認・共感スキルの高い人であれば、部下の緊張感を和らげ、話しやすい場の雰囲気を生み出すことができます。また相手の話に共感することで、部下は自分の発言に自信を持つことができ、上司との活発なコミュニケーションへとつながるでしょう。

目的の理解が浸透していない

1on1ミーティングは、上司と部下が心を開いてコミュニケーションを行い、部下の成長支援とモチベーションアップ、課題解決へとつなげるための手段です。しかし、上司の中には1on1ミーティングを評価や進捗確認のための場と思い込み、本来の目的を理解していないことがあります。 本来1on1ミーティングは建設的な話し合いで部下の悩みや課題を理解し、解決への糸口を提案したり、信頼関係を構築するコミュニケーションにつなげたりすることが目的です。 正しい目的を上司が理解していないうちに導入してしまうと、部下の成長を阻害する要因になるだけでなく、部署内の人間関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。そのため1on1研修では1on1ミーティングの目的や趣旨は何かを学んでもらい、主役は部下であることを理解してもらうことが重要です。

上司のスキルによって質が変わる

1on1ミーティングの必要性は理解できても、上司のスキルには違いがあります。上司の面談スキルによっては1on1ミーティングの質が下がり、予想通りの結果を得られないこともあります。1on1ミーティングを導入する際は、1on1研修で面談スキルを高められるように会社も支援しなければなりません。また部下のモチベーションや能力、個性の把握も必要です。上司の持つスキルが不十分な場合、部下の特性による臨機応変な対応が困難で、成長を阻害したり、モチベーションを下げたりするリスクがあります。1on1ミーティングで部下との信頼関係を構築し、生産性向上や業務効率化へと結びつけるには、上司自身にもスキルを高める努力が求められます。

上司が面談に不安感を抱いている

1on1ミーティングで不安を抱いているのは、部下だけでなく上司も同じです。特に上司が1on1ミーティングへの不安を抱いている場合、面談を行っても失敗する可能性が高くなります。なぜなら、不安を抱く背景にはスキル・知識不足、経験不足が隠れていることがあるからです。1対1での面談で上司が不安な様子を見せてしまうと、部下も不安を感じ取って信頼関係構築を阻害する要因となります。上司の命令が自信なさげで不安感が伝わってきたとき、部下は指示に従ってよいのかわからなくなるのと同じです。そのため、 1on1研修では上司に1on1ミーティングで必要な知識とスキルを習得させ、自信を持って面談を行えるようサポートすることが大切といえます。

部下が必要性を理解していない

部下の側に問題がある場合も、1on1ミーティングが失敗する可能性は高まります。特に部下が1on1ミーティングの必要性を理解しておらず「時間の無駄」「話す必要がない」と感じているときです。このケースでは、部下との信頼関係の構築が難しく、1on1ミーティングでも本心を語らないまま終わり、関係性が余計に悪化するリスクがあります。そのため1on1研修は上司だけに学んでもらうのではなく、部下にも必要性や意義を理解してもらうことが重要です。1on1ミーティングの主役は部下であり、自分自身の成長につながること、自分の課題を客観的な視点で知る機会になることを周知しましょう。1on1ミーティングは上司だけでなく、部下の理解と協力があってこそ成り立つものです。

1on1ミーティングへの意識の統一

1on1研修を行う目的の1つ目は、上司の1on1ミーティングに対する意識や認識を統一することです。1on1ミーティングで勘違いされがちなのが、上司が部下に対してアドバイスを行い、実りのある面談にしなければならないという意識です。しかし1on1ミーティングの主役は部下であり、上司には部下の話を聴き、必要に応じてアドバイスや課題解決のポイントを提案する役割があります。この意識を1on1研修で上司全員が共通認識として持っておくことで、1on1ミーティングの質を均一化できるでしょう。

スキルの標準化

1on1研修では上司の面談スキルを高め、すべての上司が必要なスキルを標準化することも目的の1つです。1on1ミーティングでよくある失敗パターンとして、上司のスキルが不足しており、部下のモチベーション低下や離職率の増加につながるというものがあります。このような失敗パターンは、1on1研修で面談に対する認識やスキルの質を高めることで防止できます。1on1研修を通して1on1ミーティングでのポイントを押さえた質問スキルや相手に寄り添う傾聴力、的確な提案ができる課題解決力などを標準化することで、組織全体の1on1ミーティングの質を向上できるでしょう。

部下との信頼関係構築

1on1ミーティングには部下との信頼関係を構築し、部署内での報連相やコミュニケーションを活性化する効果もあります。 そのため1on1研修においても、部下との信頼関係を構築するためのスキルを学ぶことが目的となります。従来の上司と部下の関係では、上司は組織または部署全体を俯瞰し、部下に対して指示を下すことから親近感を抱きにくい面がありました。しかし1on1ミーティングに必要なスキルを高めることで、面談を通して上司と部下が1対1で心を開いた対話ができるようになり、親近感や信頼関係の醸成が期待できます。部下の心理的安全性を確保することにもつながり、高いモチベーションを維持し、組織の生産性向上に貢献してくれるでしょう。

組織の生産性向上

1on1研修によって1on1ミーティングの質を高めると、部下のモチベーションアップと業務効率化につながり、組織全体の生産性も向上します。上司が1on1ミーティングを通して部下に新たな視点やスキル習得を促すことにより、部下の自律性やパフォーマンスを最大化できます。

集合研修

集合研修とは、特定の場所・時間を指定し、その場所に参加者が集まることで行う研修形式です。数人～数百人まで一度に受講することができ、講師による講義やグループワーク、ロールプレイングなどさまざまな研修内容に対応しています。集合研修のメリットは、管理職同士が同じ場で学ぶことで、1on1ミーティングの進め方や課題について意見交換を行い、組織全体での理解を統一しやすい点です。また専門講師による体系的な指導を受けられるため、スキル向上が効率的に図れます。デメリットとしては、参加者数が多くなることから、個別の課題に応じた具体的な指導が難しく、学んだ内容を実践で活かせるかは人によって差が出やすい点が挙げられます。集合研修はスケジュール調整が難しい点もデメリットであり、参加者全員が出席できるように組織全体への周知徹底が必要です。

オンライン研修

オンライン研修とは、インターネットを通じて遠隔地から講師の講義や講演を視聴する研修形式です。支店が複数ある企業の参加者が、現地に直接赴いて受講するのが難しいケースやリモートワークから参加するケースなどに活用されます。オンライン研修のメリットは、場所を問わず受講できるため参加者のスケジュール調整がしやすく、コストや移動時間の削減につながる点です。また研修内容を録画すればいつでも復習ができ、個人のペースで学習を進められます。デメリットは、対面の研修に比べて参加者間の意見交換や交流が制限され、臨場感が欠ける場合があります。また通信環境や技術的な問題が発生するリスクもあり、緊張感を維持しにくいと感じる参加者が出る場合もあります。

eラーニング

eラーニングは外部の研修会社に依頼し、学習管理システムを活用して専門知識を学んでもらう方法です。パソコンやスマホ、タブレットと通信環境さえあれば、いつでもどこでも学習を始められます。また専門講師による講義となるため、最新の体系的な知識が身につけられる点が特徴です。eラーニングのメリットは、受講者が自分のペースで学習を進められる点です。利用環境があれば繰り返しの学習が可能で、復習やインプット学習に適しています。デメリットには、受講者の意思によって学習速度に差が出やすく、講師や他の受講者との意見交換やフィードバックが得にくい点があります。自主的な学習が求められるため、モチベーションを維持しにくい場合もあるでしょう。

外部研修

外部研修とは、社外の企業や団体が主催する研修に参加し、グループワークやディスカッションのような交流を通じて学ぶ形式です。誰でも参加できる一方で、汎用的なスキルや知識を習得することに重点が置かれており、専門的な知識は別の研修や学習が必要になるでしょう。外部研修のメリットは、最新の知識や実践的なスキルを学べる点です。外部の視点を取り入れることで、新たな発見や組織にない知識を獲得できます。デメリットは、参加費用が高い場合があることや、研修内容が自分の状況や課題に一致しない可能性がある点です。

実施形式

1on1研修を選ぶ際は、どのような実施形式を選択できるか確認しましょう。1on1研修の実施形式には、集合研修、オンライン研修、eラーニング、外部研修などの選択肢があります。研修を内製化するなら、集合研修やオンライン研修にすると費用を抑えながら、学習内容の選択肢も増やせます。より高度なスキルを身につけてもらいたいなら、外部の研修会社に依頼してオンライン研修やeラーニングを利用し、学習内容の専門性を高め、時間・場所の制限をなくすのがおすすめです。ロールプレイングやグループワークなど、実践経験を積んでもらうなら集合研修や外部研修を利用し、さまざまな視点を取り入れるのがよいでしょう。自社の目的や独自のノウハウの有無といった条件に応じて、実施形式を選択することが大切です。

研修内容

研修内容の選択も1on1研修では重要なポイントです。 内製化する場合には、目的や研修のゴールを前提に、どのような内容を提供するか検討する必要があります。 また外部の研修会社に依頼する場合にも、会社によって強みとする分野が違うため、自社の目的に合わせた選択が求められます。例えば受講者の指導力を高めたい場合には、コーチングやティーチングを専門的に学べる研修を比較して選ぶことになるでしょう。それだけでなく、研修の期間やボリュームといったカリキュラムも選ぶうえでは重要です。1回で終わるのか、複数回で段階的に学ぶのかなど、学びやすいスケジュール感になっているかも検討してください。すべてが完璧な研修内容を探すことよりも、自社の課題や目的に合致した内容を選択することが大切です。

研修実績・成果

研修を外部会社に依頼するときは、会社ごとの研修実績や過去の成果などを参考にすることも重要です。過去にどれくらいの企業に研修を実施し、その結果どのような成果につながったかを調べることで、信頼できる研修会社かどうか判断できます。できて間もない研修会社や新しい学習コースの場合、詳しい実績が少ないこともあるため、他の会社とも必ず比較したうえで選択してください。研修会社の実績や成果については、会社のホームページに掲載されていることが多いため、その情報を参考にしましょう。また情報が少ない場合は、会社の評判をチェックしてみると、実際に研修を体験した受講者の意見が見つかることもあります。

費用

1on1研修を選ぶ際は、費用面も重要なポイントです。研修内容が充実していても、会社として出せる予算を超えていれば選択肢には入りません。また費用を安くしすぎても、研修内容やフォローアップが薄くなってしまうため、費用対効果を意識して選ぶ必要があります。受講者が多くなる場合には、eラーニングを活用するのもおすすめです。eラーニングでは社員1人につき数百円～数千円の費用はかかりますが、集合研修やオンライン研修に比べると費用が安くなる場合もあります。この点は研修会社によっても違いがあるため、担当者に相談したうえで見積もりを比較することが大事です。自社の予算と求める内容、受講者数などを総合的に比較して適した1on1研修を選択しましょう。