マッキンゼーの7Sとは?意味や要素、フレームワークを徹底解説

  • マッキンゼーの7Sとは?意味や要素、フレームワークを徹底解説

    公開日:2024.08.26

    更新日:

    マッキンゼーの7Sとは、コンサルティング企業、マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した組織課題の分析に役立つフレームワークです。ハードの3Sとソフトの4Sの7つの構成要素から成り、それぞれの要素に合わせて自社の課題と解決策を考えます。この記事では7Sの概要や活用方法、運用する際の注意点などを解説します。

マッキンゼーの7Sとは何か?

マッキンゼーの7Sとは、コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した組織構造の問題点を分析し、改善策を提案するためのフレームワークです。 マッキンゼーの7Sはハードの3Sと、ソフトの4Sから成り立っています。7Sのうち1つだけを改善しても組織改革や活性化につながらず、それぞれが相互に影響を及ぼすとされています。

7Sの考えが生まれた背景

7Sの考え方においては、企業の戦略や構造というハード面と、人材やそれぞれの持つスキルにフォーカスしたソフト面の両方が重要とされています。マッキンゼーの7Sが生まれた1980年代は、組織改革の推進にはハード面だけが重視されていました。ハード面を改善することで社員の意識やスキルが変わり、組織活性化につながると考えられていたためです。しかし7Sの発案者であるウォーターマンとピーターズは研究を進め、ソフト面も含めた相互関係が重要であることを発見します。7SにおいてはソフトのSの1つである「共通の価値観」を組織課題の中心に置き、ハード面・ソフト面の両方の関係こそ重要としています。7Sはフレームワークとして登場して以降、多くの企業経営者の経営戦略策定、組織改革で活用されてきました。企業内部の課題を明確化する高い効果があることから、ビジネスの世界で広く取り入れられています。

7Sが果たす役割

7Sの概要や生まれた背景について紹介しましたが、7Sの果たす役割とは具体的にどのようなものでしょうか。7Sのそれぞれの役割は表の通りです。7Sそれぞれの役割を理解することで、自社の経営課題や組織改革に必要なポイントが分析できます。ハード・ソフトの両面から細かく分析し、組織が解決すべき課題は何か、解決策の具体化を進めましょう。

ハード面 

Strategy(戦略) 

自社の掲げる経営理念と、それに基づいた経営戦略。競合他社との戦略性の違い、資源の分配。 

Structure(組織構造) 

組織の構造。 

組織としての在り方と経営課題。 

System(システム) 

人事評価制度や給与、経理などの社内システム全般。 

ソフト面 

Staff(スタッフ) 

組織内の人材および採用の仕組みや教育制度など。 

Style(組織風土) 

企業の経営スタイル。 

経営者の方針やリーダーシップ、指揮命令系統、コンプライアンス意識など。 

Skills(能力・スキル) 

経営者および社員の持つスキル。 

Shared value(共通の価値観) 

企業の掲げる理念や行動指針、社会的責任。 

企業としての倫理観や価値観が組織内でどの程度浸透しているか。 


7Sの要素・項目

7Sを構成するハードの3Sとソフトの4Sについて、それぞれの意味を解説します。

ハード面の要素

ハード面の要素である3Sとは次の3つです。

・Strategy(戦略):自社の掲げる経営理念と、それに基づいた経営戦略
・Structure(組織構造):組織の構造や組織内部の仕組み
・System(システム):人事評価制度や給与、経理などの社内システム全般




①戦略/Strategy

経営理念に基づいた目標達成のための経営戦略の立案、実行、優位性を維持するための方向性を指します。競合他社との競争を勝ち抜くには、自社の強み・弱み、他社との比較をしたうえで、有利な立場に立つか考えることが重要です。そのための資金や人材といったリソースの確保と分配、イノベーションを起こすための投資などが戦略になります。他社にはない独自性を出すうえでも、戦略は重要な要素といえるでしょう。

②組織構造/Structure

組織構造とはその名のとおり、企業構造や組織内部の仕組みを指します。一般的には、組織図によって経営者、各部門、管理者、社員に分けられます。
基本的な仕組みは同じで、指揮系統や権限などは企業によって異なり、部門同士のつながりもさまざまです。活性化した組織では部門をまたいでコミュニケーションが盛んに行われます。コミュニケーションが円滑になるとチーム内の業務分担がスムーズに進みます。一方、組織改革が必要な会社では、部門が縦割りになっており、お互いの情報共有がうまくいかないというケースもあります。組織構造には、仕事毎に分類して権限を与える機能別組織と、それぞれの部署が1つの組織と同様の権限を持つ事業部組織があります。また、複数のプロジェクトを同時進行する場合はチーム組織という分類を行うことがあります。いずれの組織構造においても、企業の属する業界や業種、部門の特性によって適した仕組みは異なる点に注意すべきです。

③システム/System

システムは組織の規則や人事評価制度、給与制度、経理業務の管理システムなどの制度やシステム全般を指します。社内のシステム全般が対象ですが、それを扱う人に注目している点がポイントです。システムを正しく運用するための透明性の確保、オフィス内のインフラ整備など、社内の人材がシステムをどう扱っているかを意識する必要があります。組織改革を進めるうえでシステムを変更した結果、社員のパフォーマンスを下げる可能性があります。社員のモチベーションを高め、生産性向上につながる社内システムが理想的です。

ソフト面の要素

ソフト面の4Sである4つの要素は次のとおりです。

・Shared value(共通の価値観):企業の掲げる理念や行動指針、社会的責任などの社内への浸透度合
・Skill(スキル):経営者および社員の持つスキル
・Staff(人材):組織内の人材および採用の仕組みや教育制度など
・Style(組織風土):社風、組織文化


④共通の価値観/Shared Value

共通の価値観は企業のビジョン(将来像、あるべき姿)、ミッション(使命・存在意義)、バリュー(価値観・行動指針)に対する理解のことです。7Sでは中心に位置しており、最も重要とされる要素です。社員が企業の経営理念や方針、企業として社会に果たすべき役割を理解しているかどうかは、組織改革を進めるうえで欠かせないポイントになるでしょう。

⑤スキル/Skill

スキルは経営者や社員の持つスキル、経験、ノウハウなどを指します。組織活性化を図るうえで、社員一人ひとりの持つ技術や個性は戦略上も重要です。組織が自社製品を販売促進するには、どんな技術者がおり、他社にはない強みは何かを把握する必要があります。社員のスキルを正しく把握することは、市場における優位性を確保する支えになるでしょう。

⑥人材(スタッフ)/Staff

人材とは組織の理念や価値観を共有する社員、チームメンバーのことを指します。この場合の人材とは、組織内にどんな社員がいるかだけでなく、社員の価値観や仕事への意識、スキル習熟度などを知ることです。社内の人材を詳しく精査、分析することで、組織の方向性や人材育成のテーマ、キャリアプランの提示などが可能になります。組織改革には単に社員のスキルや人材の配分だけでなく、エンゲージメントまで含めた会社への貢献意欲を確認することが重要です。

⑦組織風土/Style

組織風土とは組織内の文化や社風のことを意味します。自社だけで見られる行動やルール、マナー、慣習など明文化されていないものも含みます。組織風土は社員のモチベーションに関係し、組織内の風通しの良さにも影響する要素です。また、リーダーのカリスマ性が強く組織を牽引していくタイプか、経営者の権力が強いトップダウンタイプかといった部分も組織風土といえます。自社の組織風土と他社の組織風土を比較し、組織改革に必要なポイントを分析することが重要です。

7Sの活用メリット

企業が7Sを活用することで、どのようなメリットがあるのか解説します。

課題とその優先度の明確化

7Sは企業の経営戦略や課題を分析できるフレームワークであり、課題とそれぞれの優先度を明確化がしやすくなるメリットがあります。 組織構造の課題だけでなく、システムや人材、価値観など幅広い要素で分析できるため、現在だけでなく未来に起こりうる課題も予測できます。企業の抱える課題がはっきりせず、手をこまねいている場合に利用すると効果的です。

経営資源の配分の最適化

企業が安定的な経営を続けていくには、人・物・金・時間といった資源の配分が重要です。7Sで企業を分析すると、組織の全容が明らかになり、改善が必要な部分や資源分配の無駄も明確になります。経営資源で無駄になっている部分を必要な箇所にまわせば、企業の生産性は最適なレベルに改善するでしょう。また経営資源を余らせることなく、注力したい事業に充てることも可能になります。

従業員一人一人に合ったマネジメントの実現

企業に所属する従業員は一人ひとり個性があり、画一的なマネジメント方法では本来の能力を発揮しにくいです。7Sで人材の能力やノウハウ、経験を把握することで、自社の人材が抱える課題も見えてくるでしょう。また人材の課題が明確化することで、人材育成の方針やマネジメント方法も最適化できます。従業員個人のパフォーマンスを最大化でき、組織の生産性向上が見込めます。

従業員のモチベーションの向上

7Sで従業員の個別性に合わせたマネジメントを行えば、仕事に対するモチベーション向上にもつながります。 従業員が成長できている実感をもつことで、モチベーションだけでなくエンゲージメントの向上にもなるでしょう。結果として組織全体のパフォーマンス改善、業務効率化、生産性向上となり、管理職の業務負担軽減効果が期待できます。

7Sを活用する方法・手順

企業が7Sを活用するための手順を4つのステップで紹介します。

・要素に基づいた現状分析
・企業課題の明確化
・改善策の検討および実施
・効果検証と改善

要素に基づいた現状分析

7Sを導入したら、まず何から改善すべきか把握するために、各要素に基づいて企業の現状を分析します。それぞれの要素を分析することで、企業の課題が浮き彫りになり、解決すべき優先順位も明確化しやすくなります。まずは自社の現状を正しく認識することが何よりも重要です。

企業課題の明確化

現状分析で企業の課題が把握できたら、課題の根本的な原因を追究し、明確化していくことが必要です。

例えば部署間の連携がうまくいかない、情報共有がうまくいかないといった問題があるなら、人的要因・システム的要因・物理的要因などを考えましょう。一つひとつの原因を明らかにしていくことで、最終的に解決すべき課題が明らかになります。課題が明らかになれば優先順位も決定しやすくなるため、課題の早期解決が期待できます。

改善策の検討および実施

課題解決の優先順位を決定したら、本格的な改善策や改善計画の検討と実施に入ります。

企業課題の原因で重要なものから優先的に解決し、組織全体の改革を進めます。自社商品のマーケティングが他社よりも弱いという課題がある場合、販売促進につなげられるような広告・SNSの導入や営業職への支援などを強化しましょう。また資源配分も最適化し、課題解決への道筋をつけることが重要です。人的資源の拡充で解決する課題であれば、人事異動や採用なども改善計画に組み込む必要があります。そして計画だけで終わらないように、先頭に立って改善策を実行できるリーダーを置くことも大切です。改善策を部署任せにするのではなく、経営者も現場を知ることでリーダーシップを発揮できるでしょう。

効果検証と改善

改善策を実施したら、定期的に効果検証と新たな改善策を練り直すことも大切です。1度改善策を実施しても、ビジネスの世界は常に変化しています。また最初は効果的な改善策だったとしても、時間経過とともにミスマッチが生じる可能性があります。そのため一定の時期または効果が現れたら評価を行い、どのような効果があったのか、もっと改善できる部分はないかを検討しましょう。そして再度7Sに基づいた分析を行い、次の改善策につなげていくことが重要です。

7Sを活用する際のポイントや注意点

組織改革で7Sを活用する際のポイント、注意点について解説します。

・ハードの3Sに偏りすぎない
・ソフトの4Sは長期的な視点で計画する
・組織改革は負担を強いることを理解する

ハードの3Sに偏りすぎない

組織改革を進めるうえで、経営者や管理職にとって最も変更しやすいのがハード面です。組織構造やシステム、経営戦略などは経営陣の努力で早期に変えやすいからです。しかし7Sの考え方においてはハード面だけが充実しても、それと相互関係にあるソフトの4Sがなければ組織改革は成功しません。
例えば新たな経営戦略を打ち出しても、それを実行する能力を持ったスタッフ、経営者と同じ価値観を持つメンバーがいなければ失敗に終わるでしょう。組織改革を進めるうえで7Sを活用する以上、ハードだけでなくソフトも意識した変革が必要です。

ソフトの4Sは長期的な視点で計画する

ハードの3Sは比較的短期の変革であるのに対し、ソフトの4Sは長期的な計画が必要です。 人材やスキル、価値観といった要素は、社員がそれまで働いてきた時間や学習意欲が反映されます。人材の成長には数年かかることも珍しくないため、短期間で成果を出そうとすると社員へのプレッシャーになります。また社員の意思を無視して改革を推進すれば、社員の心は会社から離れ、離職者の増加につながる可能性も高いです。ソフトの4Sは小さな目標を複数設定し、一歩一歩進めていくことが大切です。

組織改革は負担を強いることを理解する

7Sによる組織改革を進める際は、変化に伴って組織と社員に大きな負担があることを理解して取り組むべきです。 組織にかかる負担の例として、組織構造が変わることで生産性の低下や費用の発生などが挙げられます。組織改革が成功すれば回復も見込めますが、うまくいかなければ会社の業績が落ち込む原因になるでしょう。また従業員にとっては企業風土だけでなく、人材育成や経営戦略といった変化により、現場での業務にプラスした負担もあります。場合によっては従業員のモチベーションが下がり、離職率増加につながるおそれもあります。組織と従業員にどれだけの負担がかかるかも想定し、会社全体で変革に取り組むことが重要です。

7Sの活用事例

7Sの活用事例の1つとして、アメリカ大手コーヒーチェーンでは7Sのうち、ソフトの4Sに重点を置き、企業文化の強化に成功しました。中でも共有の価値観と組織文化を重要視し、従業員が顧客との強い信頼関係を結べるように教育を行いました。特徴的なのが、コミュニケーションを重視するリーダーシップです。従業員が自社ブランドへの愛着をもち、率先して働けるような環境と教育制度を用意しました。またスターバックスを顧客にとってのサードプレイスにすることを重要方針とし、サービスの充実につなげた点も改革のポイントです。7Sを用いたデータ分析と企業課題の解決により、グローバル展開を実現した代表例といえます。

組織マネジメント・人材育成ならユーキャンへ

組織目標の達成や安定的な経営を目指すために、組織マネジメント・人材育成を進めるならユーキャンにご相談ください。組織改革を進めるためには、経営者だけの考えではなく、組織全体を俯瞰する視点と従業員のリアルな声が必要です。現状の組織課題を的確に分析し、従業員とともに時間をかけて改善策を進めていくことが重要になります。そのためには、組織課題を解決するためのマネジメントスキルを持ち、リーダーシップを発揮できる人材が必要不可欠です。ユーキャンの法人向け人材育成サービスなら、組織改革への理解を促し、企業を支えてくれる人材の育成に貢献します。

まとめ

今回はマッキンゼーの7Sについて、概要や構成要素、メリット、注意点などを解説しました。7Sは組織改革を効率化するフレームワークとして、国内外の多くの企業で取り入れられてきました。しかし、組織改革を進めるには7Sの正しい活用方法を知り、自社にどう適用すべきか知ることが重要です。うまく活用できれば企業課題と優先順位が明確化でき、効率的な改善計画の策定と実施につなげられます。社員にも丁寧なヒアリングを行い、自社の課題解決に向け真剣に話し合う時間を設けましょう。

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