自律とは?自立との違い、重要視されている背景、人材育成方法について解説

  • 自律とは?自立との違い、重要視されている背景、人材育成方法について解説

    公開日:2024.05.31

    更新日:2024.05.31

    自律とは気ままを抑え、自分で設けたルールに従って行動することを指します。ビジネスにおいては上司からの指示がなくても、自分で考えて行動することとされています。企業が絶えず成長していくには自律性の高い従業員が必要です。この記事では自律とは何か、自律型組織や自律型人材、キャリア自律などの観点から解説しています。

そもそも自律とは?

自律は個人の価値観や規範、道徳観などに基づき、他者からの干渉を受けずに自分で設けたルールに従って行動することです。 ビジネスにおいての自律とは、上司からの指示、周囲の支配、制約に従うだけではなく、自らの意思に基づき最適な行動を取ることを指します。

自律と自立との違い

自律に近い言葉に「自立」がありますが、こちらは身体的、精神的、経済的、社会的に他からの支配や援助を受けず、自分の力で生きることを意味します。ビジネスにおける「自立」とは、新入社員が仕事の進め方や業務を一通り理解し、指導者がいなくても仕事ができる状態になることです。自律は従業員の精神性や内面、自立は身体面や外面を指している点が違います。より良い仕事をするためには、自律と自立の両方が高まっている必要があります。

自律性と自主性の違い

自律性は、自らの考えや規範に基づき、自身で目標達成のために行動をすることです。一方、自主性は、やるべきことを指示される前に自分から率先して行うことを指します。
それぞれの違いは次の通りです。
・自主性:決まっているやるべきことを自ら進んで取り組む。
・自律性:他者からの支配、制約を受けず、自分で考え行動する。
細かな違いですが、特性を理解することが重要です。

自律型組織について

自律型組織とは社内の権力が一部に集中しておらず、それぞれの部署や社員が権力を持ち、自らの判断で行動できる組織です。

なぜ自律型組織重要とされるのか、3つの種類について解説します。

自律型組織が重要な理由

自律型組織が注目を浴びるようになった背景には、コロナ禍以降のリモートワークの増加があります。従来のオフィスとは違い、在宅で働くことで上司や同僚と身体的・心理的な距離感ができ、その結果、従業員同士のコミュニケーションが少なくなり、社内の連携がうまく取れないことで仕事の質の低下、遅延がおきるケースがあります。こうした課題を解決するためには、自律型組織として従業員に一定の権限を与え、組織の再構築が必要となっています。

自律型組織の3つの種類

自律型組織には3つのタイプがあるとされています。
・ティール組織
・ホラクラシー組織
・アジャイル型組織

・ティール組織

ティール組織はアメリカのコンサルティング企業において、フレデリック・ラルー氏が提唱した自律型組織です。 ティール組織は社員一人ひとりに意思決定権があり、上司がマネジメントしなくても、目標達成を図ることができる組織形態をいいます。ティール組織では組織の進化過程を5段階に分け、最終的にティール(進化型)組織を目指すことを目標とします。 ・レッド(衝動的)組織:支配者をトップとした組織 ・アンバー(順応型)組織:トップダウンの階層構造型の組織 ・オレンジ(達成型)組織:目標達成を優先する合理的組織 ・グリーン(多元的)組織:メンバーが主体性を持った組織 ・ティール(進化型)組織:誰もが自律して意思決定できる組織 ティール組織まで進化すると、組織を1つの生命体として捉え、企業と従業員が一体となって成長していくとされています。


・ホラクラシー組織

ホラクラシー組織はアメリカのソフトウェア企業で生まれた経営方法で、組織内に役職や階級が一切存在しない組織形態です。 ホラクラシー組織では企業内での意思決定権が個々の従業員に分散され、部署やチーム単位で意思決定を行うことになります。長期的な経営には不向きですが、短期集中型のプロジェクトや時代の変化に対応することを目的とした場合に適している組織型です。


・アジャイル型組織

アジャイル型組織は組織をフラットな関係の集合体と考え、各社員に権限を与えて意思決定のスピードや開発サイクルを早めようとする組織です。ティール組織の最終段階と近い考え方で、実現すると次のメリットがあります。 ・柔軟な発想をしやすい ・意思決定の速度が上がる ・従業員の自主性が高まる ・個々の従業員がリーダーシップを発揮しやすい アジャイル型組織では社員の自律性が高いことから、業務効率や主体性も高まる効果が期待できます。

キャリア自律とは何か?

キャリア自律とは、従業員が自らの能力や興味に基づいてキャリアデザインを考え、自発的に成長を目指すことをいいます。キャリア自律について以下の観点から解説します。

・キャリア自律が注目される理由
・キャリア自律の一般社員の認知度は低い
・キャリア自律が進まない原因
・キャリア自律のメリットとは
・キャリア自律のデメリットとは

キャリア自律が注目される理由

キャリア自律が注目される理由には、次の点が挙げられます。

・従業員の高齢化による生産性低下
・若手社員の早期離職対策
・年功序列制の衰退
・働き方や価値観の多様化
・リスキリングやアンラーニングの広がり

社会情勢の変化や時代の流れに伴い、こうした理由がキャリア自律の重要性を高めています。

キャリア自律の一般社員の認知度は低い

キャリア自律が人事担当者から注目される一方で、一般社員からの認知度は低いというのが現状です。2020年のHR総研の調査によると、キャリア自律の認知度は人事担当者で6割に達していますが、従業員では2割しか認知していませんでした。

キャリア自律はすべての従業員のキャリア設計に関わるため、認知度を高める必要があります。

参考:HRpro 「日経リサーチ×HR総研:キャリア自律に関するアンケート 速報」

キャリア自律が進まない原因

キャリア自律が従業員に浸透せず、うまく進まない原因には次の点が挙げられます。

・従業員のキャリアに対する意識が違う
・キャリア形成の研修や機会と現実の施策が乖離している
・組織でキャリア形成が難しい
・キャリア形成しても活用するビジョンがみえない

キャリア自律のメリットとは

キャリア自律を進めるメリットには、次の点があります。

・やりがいにつながる
・離職率が低下する
・キャリア開発への積極性が増す
・優秀な人材が増えやすい

企業と従業員の双方にとって、キャリア自律は大きなメリットとなるでしょう。

キャリア自律のデメリットとは

キャリア自律を進めることで生じるデメリットとして、次の点が考えられます。

・強制するとモチベーション低下を招きやすい
・キャリア開発で離職するリスクがある
・キャリア形成と昇給・昇進を結びつけてしまう
キャリア開発は従業員の認知度が低いため、どのような意図があり、従業員にどんなメリットがあるのか理解してもらえるよう説明しましょう。

キャリア自律のための支援

キャリア自律を促すためには、組織からの支援も必要です。 以下の4点を意識した支援を進めましょう。

・年代別のキャリア研修
・キャリア自律を望まない人への支援
・キャリア相談窓口の設置
・キャリア開発の支援制度

年代別のキャリア研修

キャリア自律を支援するには、従業員の年代別に受けられるキャリア研修を用意するのが効果的です。例えば、新入社員にはキャリアデザインの方法や自己分析、若手や中堅社員には具体的なキャリアプランやスキル・経験の棚卸しなどがよいでしょう。

また、ベテラン社員や管理職にはさらなるキャリアアップの方法や、マネジメント担当としてのキャリアを提案するのもおすすめです。従業員は一人ひとり価値観も経験も異なるため、一律のキャリア研修は非効率です。各年代に合わせたキャリア研修を用意し、自由にキャリア開発できる環境や学びの場を提供しましょう。

キャリア自律を望まない人への支援

キャリア自律には支援が重要ですが、同じくらいキャリア自律を望まない人へのフォローも大切です。

日本ではキャリア自律を知らない人も多く、キャリア開発に積極的でない人も一定数います。そのような従業員からすれば、一方的にキャリア自律を勧められても抵抗感のほうが強くなります。最悪の場合は離職率の増加につながり、本来の目的を達成できない可能性が高いです。そのため、キャリア自律を望まない人のことも考え、希望があれば支援を行える環境を整備しましょう。

キャリア相談窓口の設置

キャリア自律は認知度が低く、人によってはキャリア開発を苦手とすることもあります。

従業員のキャリアアップを支援するには、専門の相談窓口を設置し、キャリアカウンセリングや面談を行えるようにすることもポイントです。相談窓口は従業員個人での相談だけでなく、組織全体の相談やキャリアアップ指針、方向性を示す役割も担当してもらいましょう。相談窓口があるだけで従業員の心理的な負担は軽くなり、人材の定着とキャリア形成の助けになります。

キャリア開発の支援制度

キャリア自律を支援するには、組織がキャリア開発に積極的であると示す必要があります。具体的には次のような支援制度や施策があると、従業員もキャリアについて考えるきっかけになるでしょう。
・副業を認める
・子育てや介護の支援
・階級別のキャリア研修
・定年後の再雇用制度
従業員が100人いたら100通りのキャリアがあります。上記の例を参考に、組織に所属する従業員の特性や傾向を把握し、積極的な支援制度を打ち出すことが大切です。

自律型人材について

自律型人材とは具体的にどのような人材なのか、3つのポイントから解説します。

・自律型人材とは?
・自律型人材が注目される理由
・自律型人材のメリット

自律型人材とは?

自律型人材とは上司の指示がなくても、自らの判断で行動を選択し、仕事に取り組める人材のことです。上司の指示でしか動けない人材に比べ、自発的にさまざまなことを考え行動できます。また、自律型人材は自分のアイディアを具体化することにも長け、最後までやり遂げる意欲を持っているという特長もあります。そのため、業務効率を高めて独自のアイディアを生み出し、組織全体に良い影響を与えられる人材となるでしょう。

自律型人材が注目される理由

自律型人材が注目される理由には、次の点が挙げられます。
・リモートワークでの生産性向上
・AI技術の進歩による代替可能な業務の増加
・キャリアデザインの多様化
・能力開発ツールの増加
・少子高齢化による人材の有効活用

自律型人材のメリット

自発的に課題を発見し動けるのが自律型人材です。自律型人材にはどのようなメリットがあるのか解説します。
・業務管理の負担軽減
・業務の効率化
・テレワークの生産性向上

・業務管理の負担軽減

自律型人材を育てると、管理職が部下に指示することが少なくなり、業務管理の負担を軽減できます。 自律型人材は自ら考えて最適な行動を実行し、トライアンドエラーで改善を目指していきます。指示がないと動けない人材やマニュアル通りの動きしかできない人材に比べ、手間がかからず、空いた時間を育成のサポートなど他の業務に回せます。

・業務の効率化

自律型人材は時代や技術の進歩に適応し、目標達成に必要な行動を取捨選択できる判断力を備えています。時代に合わない非効率な作業を削減し、より効率的な方法を選択できる点が強みです。効率的な行動を選択できることから、組織やチームの業務効率向上の効果が期待できます。

・テレワークの生産性向上

自律型人材を育てるメリットには、テレワークの生産性向上という点もあります。コロナ禍以降、テレワークが多くの企業で普及しました。一方で、テレワークを導入した結果、生産性が低下した企業があることも事実です。その背景にはテレワークでは従業員間の報連相が滞りやすく、連携がうまくいかないことがありました。自律型人材に自ら判断して行動してもらうことで、テレワーク下でも生産性を高める効果があるとされています。

自律型人材の育成方法

自律型人材を育成するには、ポイントを押さえて育成することが大切です。
・目的の明確化
・育成環境の整備
・目標設定
・能力に合わせた役割を与える
・評価とフィードバック
・キャリア制度の整備

目的の明確化

自律型人材を育成するには、まず企業の理念や経営戦略に基づいた目的の明確化から始めます。社内すべての従業員を自律型人材にするのではなく、まずはどの部署から始め、どのような人材に成長してほしいかという目的を設定しましょう。目的が不明確なままでは従業員の成長につながりにくく、かけた時間に対して結果が伴わない可能性があります。

そのため、自律型人材にどのような目標を設けるのか、組織内で統一した目的を持つことが重要です。

育成環境の整備

自律型人材の育成には、成長しやすい環境の整備も欠かせません。特に新入社員や若手社員の場合、先輩に遠慮したり、周囲の反応を気にして思うように能力を発揮できないことがあります。 自律型人材が成長しやすいように失敗を許容する社内風土、経験から学べる機会、新しいことを試せる環境を用意しましょう。「失敗しても次がある」と思えることで、自律型人材としての成長が見込めます。

目標設定

自律型人材を育成するうえで、それぞれの従業員に合わせた目標設定も重要なポイントです。企業が自律型人材に求める能力や役割は何か、どのようなスキルを身に付けてもらうのかを決定しましょう。チームや部署によって求められる能力は異なるため、業務に合わせた目標を考えることも意識してください。そして、従業員がどのようなキャリアデザインを考えているか、将来のキャリアも含めて一緒に目標を考えることが大切です。

能力に合わせた役割を与える

従業員が責任を持って仕事に取り組むには、レベルに合わせた役割や仕事を任せることも必要です。特に自律型人材の育成においては、能力に対して過大または過小な業務を任せると、成長を阻害する要因になりかねません。従業員の現在の能力や状況を正確に把握し、それに見合った仕事を割り振りましょう。また役割を与える際は、ある程度の権限を与えることも大切です。決められた範囲内で自主的に取り組んでもらい、周囲の社員はサポートしていく体制を整備してください。

評価とフィードバック

従業員が業務を完遂したら、評価とフィードバックもしっかりと行います。良い点と悪い点を評価しつつ、的確なフィードバックで次の機会に生かしてもらいましょう。注意点としては、完遂したら早い段階で面談を行い、評価とフィードバックを行うことです。面談を1つの区切りとして、次の仕事へ向けて気持ちを切り替えてもらう効果があります。

キャリア制度の整備

自律型人材の成長を促進するため、組織内のキャリア制度の整備も同時に進めましょう。自律型人材は自ら判断して行動でき、仕事の成功や評価によってモチベーションを高められます。そこで必要になるのが、自律性の高い社員を適切に評価する人事評価制度やキャリア制度です。 成長へのモチベーションを高めるためには、企業側も努力に報いるシステムの構築を目指しましょう。

人材育成ならユーキャン

自律型人材の育成は、育成ノウハウのあるユーキャンにおまかせください。従業員が自分では気付いていない強みや特性に気付き、能力を最大限発揮できるような研修プログラムを提供します。また自律型人材に必要な自主性・自律性が身につけられるように、年代や階層別の研修も豊富に用意しています。研修は集合研修やeラーニングなど、企業のニーズに合わせて選択可能。効率的な人材育成プログラムを構築するなら、ユーキャンまでお問い合わせください。

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まとめ

年功序列・終身雇用制度が終わりを迎えつつある中、今後は企業内で自律性の高い人材を育成することが急務になっています。従業員の年齢層も高齢化する中で、若手もベテランもそれぞれの能力を最大限発揮することが求められています。企業の視点では、従業員の能力が発揮しやすい環境を用意しつつ、時代に合わせた人材育成と評価制度の導入が必須です。組織が持続的な成長をしていくためにも、自律型人材の育成に注力しましょう。

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