ISOとは?種類、仕組み、効果、JISとの違いを分かりやすく解説

  • ISOとは?種類、仕組み、効果、JISとの違いを分かりやすく解説

    公開日:2024.04.26

    更新日:2025.02.28

    ISOとは国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称であり、ISOの基準に適合する製品やサービスは「ISO認証」を受けられます。 ISO規格は世界共通の規格であり、認証を受ければ国際基準に適合していることの証明になります。この記事の内容は、ISOの概要とJISとの違い、規格の種類、認証の効果、ISOマネジメントシステム認証が及ぼす効果についてまとめたものです。

ISOとは何か

ISOとはInternational Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称です。ISOが定めた規格をISO規格と呼び、製品やサービス、システムなどの国際的な規格として認定されています。ISOに認定されると「ISO○○(数字)」を名乗ることができ、世界の標準レベルを満たした製品として信頼性が高まります。

JISとは何か

JISとはJapanese Industrial Standardsの略称です。ISOの規格を基に、日本国内の製品の企画や測定法をまとめた国家規格です。JISも文字コードやプログラムコード、サービスなどさまざまな規格があります。JISは経済活動の利便性や生産効率、公正性の確保、安全と健康の保持などが目的です。一例として、生活に身近なトイレットペーパーも中心の空洞部分が38㎜、直径は120㎜以下と定められています。規格を定めることでどこのメーカーでも同じように使用でき、商品による取り付け方法の差が生じないようにしています。

・ISOとJISの違い

ISOとJISには規格そのものの違いはありません。違いとしては、ISOの規格を日本語に訳したものがJISであり、国内向けにわかりやすくしたものである点です。日本ではJISですが、世界各国でISOを基にした規格名が使用されています。また、 ISOとしての国際規格が既に存在する製品やサービスについては、JISがISOとの整合性を取ることも協定で義務付けられています。

ISO規格とは何か

ISO規格とは、国際標準化機構(ISO)が制定する国際的に認められた基準や指針のことです。品質管理(ISO 9001)や環境管理(ISO 14001)など多岐にわたる分野で適用され、製品やサービス、システムの品質、安全性、効率性を確保するための共通の基準として普及しています。ISO規格に認定されることで、国際取引や業務効率、信頼性が向上します。
ISO規格には次の2種類があります。
・モノの規格
・マネジメントシステム規格
それぞれの違いについて紹介します。

ISO規格の必要性

ISO規格が必要とされる理由は、主に品質の向上、信頼性の確保、国際的な競争力の強化にあります。グローバル社会の現代では製品やサービスが国境を越えて流通するため、ISO規格は異なる国でも規格を標準化する統一的な役割を果たしています。つまり、企業が国際市場で共通の基準を満たしていることの証明です。またISO規格は品質や環境管理、安全性などの分野で明確な指針としても機能しているために、企業は業務の効率化やリスク管理の改善の標準的なルールとして、ISO規格を認識することができます。ISO規格に認定されることで取引先や顧客から信頼を得ると同時に、組織内部のプロセスの透明性や効率性を向上させることにもつながります。さらに規格への準拠のためにプロセスや品質を向上していくことで、他社との差別化や新たな市場開拓の機会にもなるでしょう。 このような理由から、ISO規格はグローバルビジネスの発展と持続可能な社会の実現に必要な存在となっています。

ISO規格の2つの種類

モノの規格

モノの規格とは、製品の品質や安全性に関する企画です。世の中にある製品の品質・安全性を保障しています。クレジットカードを例にするとわかりやすいでしょう。クレジットカードは国が違ってもカードサイズや機能性、安全性などはどこでも同じで、世界各国で利用できます。これは国の違いでクレジットカードの機能性が変わると、決済や取引で支障が出てしまうからです。そこでISOでもクレジットカードの国際規格を設定し、決済や取引の標準化を図っています。この他にもさまざまな製品がISOで標準規格として設定されており、広く世界中で利用されています。

マネジメントシステムの規格

マネジメントシステムの規格とは、組織マネジメントや団体の経営に関する国際規格です。モノの規格とは異なり、組織のマネジメントの規格であり、業務の効率化するための国際標準のルールとされています。国際的には、ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)、ISO27001(情報セキュリティ)などが有名です。また、 マネジメントシステム規格には、規格を適用するうえで組織が守るべき要求事項や基本要件も含まれており、認定されるにはこの基準を満たさなければなりません。

・組織への社会的信頼
・第三者視点からの課題発見
・基準に沿った継続的な改善

・マネジメントシステムの例

ISOのマネジメントシステムの例には以下のものがあります。 

規格名 

項目 

ISO9001 

品質マネジメントシステム 

ISO14001 

環境マネジメントシステム 

ISO39001 

道路交通安全 

ISO27001 

情報セキュリティ 

ISO22000 

食品安全 

ISO20000 

ITサービス 

ISO22301 

事業継続 

ISO17025 

試験・校正機関 

ISO50001 

エネルギー 

ISOのマネジメントシステムとは?

ISO規格のマネジメントシステムとは、組織が効率的かつ効果的に目標を達成するためのフレームワークです。マネジメントシステムには品質、環境、労働安全、情報セキュリティなど、あらゆる分野に特化した管理方法が含まれます。ISO規格で定められた具体的な基準としては、計画(Plan)、実行(Do)、チェック(Check)、改善(Act)のPDCAサイクルを活用し、プロセスの継続的な改善に取り組む仕組みです。マネジメントシステムに基づく運用により、組織はリスク管理や法令を遵守する意識を強化し、顧客満足度や効率性の向上を実現できます。

ISOにおけるマネジメントシステムの種類

ISO規格のマネジメントシステムの種類には、次のものが挙げられます。
・ISO9001(品質)
・ISO14001(環境)
・ISO27001(情報セキュリティ)
・ISO27002(情報セキュリティ管理策)
・ISO22000(食品安全)
・ISO20000(ITサービス)
・ISO22301(事業継続)
・ISO17025(試験・校正機関)
・ISO50001(エネルギー)
・ISO45001(労働安全)
・ISO27017(クラウドサービスセキュリティ)
・ISO39001(道路交通安全)
・ISO13485(医療機器・体外診断用医薬品)
・ISO9100(航空宇宙)
・ISO55001(AMS)
・ISO21001(教育組織)

ISO9001(品質)

ISO9001は、商品やサービスの品質向上を目的とした品質マネジメントシステムに関する国際規格です。顧客満足度を向上させるために、製品やサービスの品質を一貫して提供する仕組みを構築・運用するための指針を提供しています。

ISO14001(環境)

ISO14001は、組織の活動における環境負担を軽減することを目的とした、環境マネジメントシステムに関する国際規格です。環境保護や環境リスクの管理を目的とし、組織が持続可能な活動を行うための仕組みを構築・改善する指針を提供しています。

ISO27001(情報セキュリティ)

ISO27001は、組織内での情報保全や管理の確実性向上を目的とした、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格です。情報資産の機密性、完全性、可用性を保護するための管理手法を提供し、リスクを特定・対策する仕組みの構築・運用を目指しています。

ISO27002(情報セキュリティ管理策)

ISO27002は、情報資産の保護を目的とした、情報セキュリティ管理政策の実施を支援するための国際規格です。ISO27002の考え方として、具体的な管理政策や運用のベストプラクティスを詳細に解説しています。

ISO22000(食品安全)

ISO22000は、食品の安全性確保と安全なサプライチェーン展開を目的とした食品安全マネジメントシステムの国際規格です。食品の生産から消費までの安全性を確保するために、リスク管理やトレーサビリティを含め一貫した仕組みを提供しています。

ISO20000(ITサービス)

ISO20000は、ITサービスの品質と顧客満足度の向上を目的とした、ITサービスマネジメントの国際規格です。ITサービスの計画、提供、管理を効率的かつ高品質に行うためのフレームワークを提供し、顧客満足度や業務の最適化を支援しています。

ISO22301(事業継続)

ISO22301は、組織のレジリエンス改善や事業中断による悪影響を最小限にすることを目的とした、事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格です。災害や緊急における事業の中断リスクを最小限に抑え、迅速な復旧と継続を実現するための仕組みを示しています。

ISO17025(試験・校正機関)

ISO17025は、製品や測定機器の正確性向上を目的とした、試験・校正機関の能力を認定するための国際規格です。試験や校正結果の確実性を確保し、機関が適切な技術力と品質管理を持つことを証明するための基準を示しています。

ISO50001(エネルギー)

ISO50001は、企業のエネルギー活用の効率化とその改善へつなげることを目的とした、エネルギーマネジメントシステム(EnMS)の国際規格です。組織がエネルギー効率の改善、エネルギー利用の最適化、エネルギーコスト削減、法令遵守の姿勢を実現する仕組みを構築・運用するための指針を示しています。

ISO45001(労働安全)

ISO45001は、労働に関連した負傷や疾病の防止、健康的な職場環境の提供を目的とした、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格です。職場の安全性向上や従業員の健康を保護し、労働災害の防止やリスク軽減を体系的に管理するための指針を示しています。

ISO27017(クラウドサービスセキュリティ)

ISO27017は、クラウドサービスの情報セキュリティ管理に関する国際規格です。クラウドサービス特有のリスクに対応する指針を提供し、利用者と提供者の両方のセキュリティを強化することが目的です。

ISO39001(道路交通安全)

ISO39001は、道路交通事故による死傷者の減少を目的とした、道路交通安全マネジメントシステムの国際規格です。交通事故による負傷者や死亡者を減らすために、組織が効果的な安全管理を導入し、継続的に改善するための指針を示しています。

ISO13485(医療機器・体外診断用医薬品)

ISO13485は、医療機器のリスク低減と製品の安定供給した供給網構築を目的とした、医療機器や身体外診断用医薬品の品質管理の国際規格です。製品の安全性と有効性を確保するための品質管理システムの要件が定められています。

ISO9100(航空宇宙)

ISO9100は、航空旧製品の安全性・信頼性向上を目的とし、航空宇宙産業向けに特化した品質マネジメントシステムの国際規格です。航空機や宇宙機器の設計、製造、保守における品質と安全性を確保するための要件を定めています。

ISO55001(AMS)

ISO55001は、組織の資産管理体制構築や計画作成、実施のサイクルを効果的に行うことを目的とした、資産マネジメントシステム(AMS)に関する国際規格です。資産の最適な管理価値によって資産(アセット)を最大化し、組織の持続可能な成長と効率性向上を支援するための要件を定めています。

ISO21001(教育組織)

ISO21001は、教育組織のマネジメントシステムに関する国際規格です。教育サービスの質を向上させ、学習者のニーズや満足度を満たすためのフレームワークを提供します。

ISO認証を取得するメリット

ISOマネジメントシステム認証を取得すると、次の効果が得られます。
・組織への社会的信頼
・第三者視点からの課題発見
・基準に沿った継続的な改善

組織への社会的信頼

ISOマネジメントシステム認証を取得すると、組織への社会的信頼が高まりやすくなります。ISOは国際的な認証機関であり、国際標準を満たしているか審査するものです。
認証取得によって国際標準を満たしたことが証明され、組織・企業に対する社会的信頼につながります。

第三者視点からの課題発見

ISOマネジメントシステム認証の取得は、国際的な認証機関からの審査を通過した証明であり、第三者視点から高品質のマネジメントという太鼓判を押してもらうことです。したがって、第三者視点からマネジメントシステムが評価され、課題発見と改善がなされている証明でもあります。本来、組織の管理はどの企業や団体でも行われているものであり、特別な審査や認証は必要としません。しかし、 ISOマネジメントシステム認証を取得したということは、閉鎖的になりやすい企業内部のシステムに対し、外部機関によるチェックを経たことになります。内部の視点だけでは発見できない課題も、第三者機関なら発見しやすく、適切な改善策の実施につなげることが可能になります。組織のマネジメントに課題を感じている企業ほど、ISOマネジメントシステム認証を取得する意義は大きいといえるでしょう。

基準に沿った継続的な改善

ISOマネジメントシステム認証は一度取得すれば終わりではなく、毎年認証の審査を受けなければなりません。マネジメントシステムは次々にスタンダードが生まれており、基準も頻繁に変更されているからです。組織としてしっかりとしたマネジメントシステムを構築し、質の高いサービス・製品を提供し続けるには、継続的な改善も必要です。そのため、ISOマネジメントシステム認証を取得するには、常に組織の改善が必要となり、社員にも緊張感を持って働いてもらう効果が期待できます。

ISO認証を取得するデメリット

ISO認証を取得することで生じるデメリットについて、3点を紹介します。

費用が発生する

ISO認証を取得するには、審査料や登録料、必要なコンサルティング費用など、初期投資としての費用が発生します。さらに、維持するための年次審査や更新審査にもコストがかかります。また内部監査や従業員への教育・研修など、運用に伴う間接的な費用も発生する点に注意しなければなりません。特に中小企業にとっては、思わぬ費用の発生によって大きな負担となる場合があります。初期費用と運用コストのバランスを慎重に検討する必要があります。

マニュアル作成や体制構築が必要になる

ISO認証を取得する際には、それぞれの規格の認証要件に基づいたマニュアルや体制構築が必要です。またISOに適合したプロセスをするために、全従業員がルールを理解し、実践できるよう教育や訓練も必要とします。こうした取り組みは通常業務とは別に必要となるため、社員にとっては大きな負担となるでしょう。特に人材不足や人手不足が課題となっている企業では、業務遂行自体が制限されることにもなりかねません。そのためISO認証を満たすための体制整備やマニュアル作成が必要な企業にとっては、認証を受けるだけでも大きな課題となります。

文書管理や保管の手間が発生する

ISO認証を取得できても、取得後は規格要件に従い文書記録やデータ作成・管理・保管を行う必要があります。文書には、業務手順や結果を詳細に記録する作業も含まれており、従業員の負担になるでしょう。また管理・保管すべき文書が増えるため、適切な管理システムを導入しなければ、文書の紛失や更新漏れなどのリスクが生じることも考えられます。文書の保管やデータ管理には多くの時間とリソースが必要であり、小規模な企業では対応が負担になることがあります。

ISO認証取得の流れ

ISO認証取得の具体的な流れについて紹介します。

取得範囲の決定とプロジェクト発足

最初にすべきことは、ISO認証の取得範囲の決定です。ISO認証は取得範囲によって期間やマニュアルなどが異なります。まずはISO認証でどこまで取得するのか範囲を決定し、体制構築が始まってからも軸を変えないことが重要です。加えてISOに向けてプロジェクトを発足し、担当者の選定を行うことも欠かせません。ISOに必要なシステムや体制構築、マニュアル作成などを中心となって進めてもらうことになります。またISO認証は定期的に更新されることから、ISOに関する研修や勉強会を開催し、常に最新の知識を得てもらうよう支援を行いましょう。

現状把握と具体策の決定

プロジェクトチームが稼働を始めたら、次は現在の業務手順や社内文書・マニュアルなどの現状把握のための調査を行います。調査では社内の各部署の業務手順を確認し、社員にもヒアリングを行います。また社内の文書やマニュアルもISO認証に必要な内容へと修正し、適切に保存・保管しなければなりません。ISO認証では業務のどの部分を管理すべきかが重要になるため、プロセスや評価方法などを取得範囲に応じて明確にしましょう。そして管理すべき項目から目標を設定し、業務手順やマニュアルの案を作成します。

行動計画策定と運用

業務手順やマニュアルに応じてマネジメントシステムを構築し、具体的な運用計画を策定します。審査を行う前に作成したマニュアルで2~3か月間運用してみて、マニュアルが問題ないか、業務遂行にも支障がないかなどを確認しましょう。また運用する際は社員への教育も実施し、マニュアルの内容を遵守できるようにすることが大切です。そして運用後に評価を行い、マニュアルの中で必要な箇所は修正し、内部監査と運用状況のデータ分析も行います。必要に応じてマネジメントシステムをアップデートし、社内に新しいマニュアルが定着したら審査を行いましょう。

ISO認証取得にかかる費用

ISO認証取得に必要な費用は、審査費用とコンサルタント料です。審査費用はISO認証の取得範囲や審査会社によっても異なるため、複数の審査会社から見積もりを受け取るのがよいでしょう。費用の目安には幅があり、相場は30~100万円とされています。またISOを取得するにはコンサルタント会社に依頼することになるため、コンサルタント料も必要です。こちらもサービス内容や取得範囲、社員数によって費用の目安は異なります。一般的に人気の高いISO9001やISO14001、ISO27001などは50~150万円が相場とされています。両方を合わせると100~250万円は必要になるでしょう。

まとめ

今回はISOとマネジメントシステム認証、認証取得による効果やメリットなどを解説しました。 ISO認証取得は企業にとって大きなメリットであり、社会的な信頼と知名度を高める点でも効果が期待できます。 一方で、マネジメントシステムの整備には時間とコストもかかるため、デメリットも理解したうえで認証を目指すべきです。企業の規模や業界、人員によっても最適な第三者認証の基準は異なるため、個別の状況を判断して取得を目指しましょう。

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