ロジカルシンキングとは
ロジカルシンキングとは、「論理的思考」を意味します。物事を論理的に捉えることで、問題の本質を見抜き、根拠から結論までを矛盾のないように筋道を立てて考える方法です。 ロジカルシンキングは新人や若手だけでなく、管理職にも必要なスキルであり、身につけば問題を解決する際に役立ちます。
よく似た言葉として、以下の2点についても解説します。
- ・クリティカルシンキングは批判的思考である
- ・ラテラルシンキングは水平思考である
クリティカルシンキング
クリティカルシンキングとは、さまざまな物事や情報に対して「本当に正しいのか」疑って考える方法です。全てを攻撃的に批判や否定をする思考ではありません。クリティカルシンキングを身につければ、常識や枠組みにとらわれない思考ができます。
筋道を立て矛盾なく考えるロジカルシンキングに対して、クリティカルシンキングは物事の妥当性を含めて考えます。
ラテラルシンキング
ラテラルシンキングとは、多角的な視点で事象を捉えて、水平的に発想を広げる思考です。さまざまな視点と発想で問題を解決するため、結論は1つとは限りません。ロジカルシンキングは「垂直思考」といわれ筋道を立てて考えるため、正しい結論は1つです。
ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、ラテラルシンキングは「トリプルシンキング」と呼ばれ、ビジネスパーソンから支持されています。
ロジカルシンキングで押さえるべき基本とは
ロジカルシンキングをうまく活用するためには、以下の基本を押さえましょう。
- ・演繹法は一般論やルールから論理的な結論を得る
- ・帰納法は実例から課題の本質を探り出す
- ・MECEは物事の網羅性を追求する
- ・「So What? / Why So?」は課題を深掘りして効果を発揮する
演繹法
演繹法(えんえきほう)とは、正しい一般論やルールに、物事をあてはめ、論理的な結論や主張を導く方法です。演繹法には論理展開の基準があるため、ロジカルシンキングが実行しやすいといえます。ただし、誤った一般論や自分の経験を一般化して用いると、論理が破綻・飛躍する恐れがあります。
帰納法
帰納法とは、一般論やルールではなく、複数の経験や観察事項から結論を導く方法です。納得感のある結論を導くためには、正しいデータを用いることや、十分な数の観察事項をあげることがポイントです。帰納法は、実例から課題の本質を探り出すため、分析力が求められます。
MECE
MECE(ミーシー)とは、「Mutually Exclusive,Collectively Exhaustive」の頭文字からできている言葉で、日本語の意味は「漏れも重複もなく、網羅されている」です。MECEを意識できるようになると、多くの情報を効率的に整理でき、生産性の向上も期待できます。
So What? / Why So?
「So What? / Why So?」とは、「だから何?/それはなぜ?」を意味しており、ロジカルシンキングを身につける基本的な技術です。考えた結論に対して、「So What? / Why So?」の問いかけを繰り返すと、正しい論理にたどり着けます。
ロジカルシンキングを鍛えて得られる5つのメリット
ロジカルシンキングを鍛えると、以下のメリットが得られます。
- ・問題解決力や分析力が向上すると、自社や取引先の課題解決に役立つ
- ・合理的思考が身につくと、問題を誰がどのように対応すべきか、効率的に考えられる
- ・提案力が身につくと、商談や交渉で採用されやすくなる
- ・情報が整理されるため、コミュニケーションが円滑になる
- ・無駄を省けることで、生産性や効率性が向上する
問題解決力や分析力が向上する
ロジカルシンキングが鍛えられると、情報を構造的に整理できるようになり、真の課題がどこにあるかを把握できるようになります。 また、潜在的なニーズや隠れている課題などに対する分析力の向上が見込めます。それにより、自社や取引先の課題についても視覚的に表現でき、筋道の立った議論を展開できるでしょう。
合理的思考が身につく
ロジカルシンキングは、物事を論理的に捉えるだけでなく、筋道を立てて考えるため、合理的思考が身につきます。合理的思考が身につくと、問題が発生しても誰がどのように対応すべきか、効率的に考えられます。コストパフォーマンスを考える際にも必要な考え方です。
提案力が身につく
ロジカルシンキングが鍛えられることで、自分の意見や事実などを順序立てて話せるため、主張が分かりやすく、相手に提案しやすくなります。提案力が強くなれば、相手に説得力のある提案や簡潔な報告ができ、提案が採用されやすくなるでしょう。ロジカルシンキングの活用は、商談や交渉などに向いています。
コミュニケーションが円滑になる
ロジカルシンキングが身につけば、相手が考えていることを理解し、自分の考えをわかりやすく伝えることができます。「聴く力」と「伝える力」が鍛えられるため、コミュニケーションの円滑につながります。コミュニケーションの円滑さは口頭だけでなく、メールでの報告や議事録の作成などでも活用できるでしょう。
生産性や効率性が向上する
ロジカルシンキングでは、物事を順序立てて矛盾がないように考えるため、無駄な手順や作業を削減することができます。作業を考えながら合理的に仕事を進められるため、生産性の向上につながります。また、相手を納得させる提案や簡潔な報告ができると、コミュニケーションに無駄がなくなり、結果として仕事の効率性も向上するといえます。
ロジカルシンキングの鍛え方10選
ロジカルシンキングを鍛える方法には、以下のような効果も期待できます。
- ・基本のスキルや考え方を学ぶと、正しい結論を導きだせる
- ・フレームワークを学んで、効率的に戦略を練る
- ・インプット・アウトプットを意識すれば、目的に応じて情報を反映できる
- ・仮説を立てて考える癖をつければ、効率的な課題解決につながる
- ・筋道を立ててシンプルに話すと、正しい議論ができる
- ・研修やグループワークへの参加は、短期間でレベルアップが期待できる
- ・ディベートやセルフディベートは、情報分析の練習になる
- ・フェルミ推定では、正しい根拠に沿った仮説を立てられる
- ・本やインターネットは考え方を身につけられる
- ・日常生活で実践と改善を繰り返せる
基本スキルを学ぶ
ロジカルシンキングを鍛えるためには、まず基本スキルを学ぶことが大切です。基本スキルには、フレームワークの種類や使い方、考え方などがあります。基本となる考え方では、MECEやファクトベース、ゼロベースについて理解しましょう。
ファクトベースとは、事実に基づいた考え方です。ロジカルシンキングでは、事実に基づかなければ、誤った結論に達する可能性があります。憶測と事実を明確にすることで、正しい結論を導きだせます。
ゼロベースとは、先入観をもたずに、ゼロから物事を進める考え方です。過去の経験や知識にとらわれると、思考が偏り柔軟な発想ができず、事実とは異なった議論を進める恐れがあるため、注意しましょう。基本のスキルや考え方を学ぶには、多くの知識を体系的・実践的に学べる研修がおすすめです。
フレームワークを学ぶ
情報を整理するには、フレームワークを活用します。フレームワークとは、考え方や分析などに対して、効率的に戦略を練る枠組みです。フレームワークにはさまざまな種類があるため、情報整理にあうものを選びましょう。フレームワークについて、後ほど詳しく解説します。
インプット・アウトプットを意識する
ロジカルシンキングを鍛える方法では、インプットとアウトプットを意識することも大切です。インプットとは、新しい情報や知識を吸収することです。アウトプットとは、得た情報や知識を目的に応じて発信する、行動に反映することを意味します。
ロジカルシンキングを鍛えるには、日常生活を通じてインプットしたさまざまな情報を、種類ごとに整理しましょう。情報が整理できていないと、意味のない情報が多くなり、アウトプットがうまくいかなくなる可能性もあります。アウトプットする際には、結論を先にもってくると、全体がまとまり、わかりやすくなります。
ロジカルシンキングが身につけば、インプット・アウトプットのスキルも改善されます。
仮説を立てながら考える癖をつける
常に仮説を立てる癖をつけると、効率的な課題解決につながるため、ロジカルシンキングを鍛えられます。 仮説を立てる際には、やみくもに情報を集めるのではなく、信憑性の高いものをベースに考えましょう。
ロジカルシンキングでは、根拠や前提条件に必要な情報を集めてから、仮説の証明を図ります。根拠や前提条件が誤っていると、論理も誤ってしまいます。また、目的を忘れないことも大切です。ロジカルシンキングの目的は、根拠から結論までの筋道を立てて考えることです。不要な情報はなるべく省き、必要な情報が不足していないかを確認しましょう。
筋道を立ててシンプルに話す
ロジカルシンキングでは、筋道を立ててシンプルに話すことが欠かせません。プレゼンや商談・交渉では、始めに結論や主張から話すことを意識して、結論に必要な情報のみを簡潔に伝えるようにしましょう。
また、必要のない情報はできるだけ削り、わかりやすい言葉を選びます。一方が認識していない言葉を使うと、正しい議論になりません。また、議論では、会話のやり取りが発生します。一方的に話してしまうと、会話が成立しないため、双方が話すようにしましょう。
「何がいいたいのか分からない」といわれる人は、ビジネス以外の日常会話でも、意識しながら練習することをおすすめします。
研修やグループワークに参加する
ロジカルシンキングを鍛えるには、研修やグループワークへの参加がおすすめです。研修やグループワークに参加すると、基本的な考え方や具体的な使用場面、フレームワークなどを学べます。また、短期間でのレベルアップが期待できます。
ディベートやセルフディベートをする
ディベートとは、課題に対して賛成と反対の2つの立場に分かれて、議論を交わすトレーニングです。ディベートはその場で意見を出し合うため、情報分析や客観的に思考する練習になり、ロジカルシンキングを身につけるうえで適しています。ディベートに参加する機会がない場合は、賛成と反対の主張を1人で考える、セルフディベートもおすすめです。
フェルミ推定の問題を解く
フェルミ推定とは、数量が膨大で簡単には予測できない場合に論理的思考を頼りに概算する手法です。正しい根拠に沿って仮説を立てるため、ロジカルシンキングを鍛えるのにおすすめの手法といえます。
本やインターネットで学ぶ
本やインターネットから、ロジカルシンキングの知識をインプットすることも大切です。本やインターネットの演習問題を繰り返し解くことで、ロジカルシンキングを鍛えられるでしょう。
日常生活で実践する
ロジカルシンキングを鍛えるには、日常的な会話や会議などで、物事を順序立てて説明することもおすすめです。議事録を作成する際に、フレームワークを使って議論を整理してみてもいいでしょう。実践と改善を繰り返すことで、次第にロジカルシンキングを使えるようになります。
ロジカルシンキングのためのフレームワーク
情報を整理するために活用するフレームワークは、以下の5つが代表的です。
- ・ロジックツリーは情報整理と最もいい選択肢を探せる
- ・ピラミッドストラクチャーは問題や課題の解決に役立つ
- ・PDCAは継続的に業務改善ができる
- ・SWOT分析は効果的な企業戦略を打ち出せる
- ・SMARTの法則は的確な目標が作れる
ロジックツリー
ロジックツリーとは、情報整理ができて、最もいい選択肢を探せるフレームワークです。ツリーの上部に大元の課題やテーマを設置して、その要素となる事柄を枝葉のように広げていきます。ロジックツリーを使う際には、「MECE(ミーシー)」の観点で、ツリーに漏れがないか、同じツリーを書いていないかに注意しましょう。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーとは、問題や課題の解決に役立つフレームワークです。ピラミッドの上部に最も伝えたい主張を置き、根拠をピラミッドの下部に積み重ねていきます。ピラミッドストラクチャーを活用すれば、要約力が身につき、相手にわかりやすく伝えられるでしょう。また、帰納法を用いる際にも役立ちます。
PDCA
PDCAとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字から成り立ちます。 PDCAサイクルを繰り返すことで、継続的に業務改善ができるフレームワークです。 ただし、PDCAサイクル自体を回すことが目的化してしまうと、ゴールを見失う恐れがあるため注意しましょう。
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SWOT分析
SWOT分析とは、Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)の頭文字から成り立ちます。目標を達成するために外部環境・内部環境を4つの枠で分析整理し、効果的な企業戦略を打ち出せるフレームワークです。PDCAサイクルよりも、前提条件の整理がしやすいことが特徴です。
SMARTの法則
SMARTの法則は、Specific(具体的)・Measurable(計測可能)・Achievable(達成可能)・Realistic(成果に基づく)・Time-related(期限つき)の頭文字から成り立ちます。5つの要素に沿って目標をチェックすると、的確な目標が作れるフレームワークです。SMARTの法則に落とし込めば、いつまでに何をするべきか明確になります。
従業員のロジカルシンキングを鍛えるために企業ができること
従業員のロジカルシンキングを鍛えるためには、企業は若手から管理職まで全ての従業員に、学ぶ場を提供することが大切です。例えば、eラーニングや実践形式の研修を開催したり、従業員がディベートできる場の提供、外部の講習へ参加させたりしましょう。
企業が人材育成の一環として、従業員のロジカルシンキングを鍛えれば、商談や交渉、課題の整理、業務改善の実施などの場面で活用でき、長期にわたって企業の発展が期待できます。
まとめ
ロジカルシンキングは、問題の本質を見抜き、根拠から結論まで筋道を立てて考える方法です。ロジカルシンキングを鍛えることで、問題解決力や分析力が向上したり、提案力が身につきます。しかし、自社のみで従業員にロジカルシンキングの重要性を理解させ、鍛えるのは、なかなか難しいようです。
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