人材育成で大切なこと7選
人材育成は企業の成長に欠かせない要素ですが、闇雲に教育を進めても効果は高まりません。自社にとって重要な人材を育成するためには、以下のポイントを押さえることが大切です。
- ・人材育成の目標とゴールを明確にする
- ・従業員と育成担当者のコミュニケーションを大切にする
- ・人材育成に関する制度を整えて従業員をバックアップする
1.目標を明確に設定する
人材育成で大切なことは、自社の理想とする従業員になるための目標を設定させることです。 目標は従業員自身が設定します。企業の成長につながる客観性が高い目標を設定させましょう。
企業や上司ではなく自身が決めた目標なら、前向きに達成に向け取り組めると考えられます。将来的になりたいキャリアイメージや、現時点での自分の長所・短所を振り返ると、現実的な目標を設定できます。従業員が目標達成に向けて適切に努力できるように、育成担当者は管理とフォローを徹底しましょう。
2.従業員のモチベーションを管理する
従業員のモチベーション管理も、育成の効率を高めるポイントです。従業員のモチベーションが低いと、成長するための前向きな行動が見られません。褒めたり叱ったりして「やる気」を起こさせても、長期的なモチベーションの維持は困難です。「行動するための目的や理由」を考えさせてこそ、従業員は長期的にモチベーションを維持でき、自主的に育成に向き合えます。モチベーションを高める要素は従業員ごとに異なるため、育成担当者は、コミュニケーションを取りながらフォローしましょう。
3.育成担当者のスキルを向上させる
ターゲットとなる従業員を育成する前に、育成担当者のスキルを向上させましょう。担当者のスキルレベルによって、育成の効率は大きく左右されます。たとえば、担当者の言動と行動が伴っていなければ、従業員は不満を抱えてしまいます。育成の効率を高めるために、一定のレベルの担当者を慎重に選定しましょう。
4.従業員の自発性を養う
従業員の自発性の醸成も、育成の際のポイントです。自発性とは、やるべきことを自ら考えて行動することです。
従業員自身に成長したい気持ちがなければ、自発性が芽生えず育成の効率が低下してしまいます。育成担当者は従業員が自発性を発揮できるようにフォローして、目標達成を促しましょう。たとえば、個別面談を実施して現在の課題に対する解決策を挙げてもらうと、考えて行動するきっかけが生まれ、自発性が養われます。
5.人材育成に関連する制度を用意する
人材育成を円滑に進めるには、制度を整備してください。制度が整っていなければ、「自社は人材育成に対して消極的だ」「育成に協力しても評価してもらえない」などと、育成担当者や従業員をネガティブにさせる恐れがあります。
制度を整備したうえで人材育成を進めると、従業員が成長しやすくなり、結果的に自社の発展につながります。具体的には、以下の制度を整備しましょう。
- ・メンター制度
- ・人事評価制度
- ・研修制度
- ・ジョブローテーション制度
6.ゴールを明確にする
人材育成のゴールを明確にしましょう。「いつまでに」「どのような状態になっているか」が不明確なままでは、人材育成の取り組みが形骸化しやすく、モチベーションが低下する恐れもあります。また、どのようにも捉えられるゴール(目標)では、共通認識を持てません。
明確な人材育成のゴールを設定するためには、具体的な数字を使いましょう。 たとえば「今期中にビジネスマナー研修を50人以上に受講させる」といった目標を設定してください。数字で表現すると、具体性が増すうえに育成の達成度を判断しやすくなります。
7.達成できない目標は避ける
人材育成において目標設定は大切ですが、明らかに高すぎる目標は、従業員の成長の妨げとなるため避けてください。
従業員がモチベーションを保って育成に向き合うには、努力すればクリア可能な範囲で目標設定することがポイントです。1つずつ着実に目標を達成していけば、モチベーションを維持しつつ成長していけます。
人材育成の目的
人材育成の最も大きな目的は、自社の業績を向上させて経営目標を達成することです。そのためには、以下に挙げる目的を1つずつ達成し、積み重ねる必要があります。
- ・自社の牽引役となる幹部候補を育てる
- ・従業員個々のスキルや生産性を高める
- ・帰属意識を高めて優秀な人材の流出を防ぐ
幹部候補を育成する
人材育成の目的の1つが、幹部候補の育成です。近年、経営環境の変化は著しく、トップだけで経営戦略を練り、意思決定することは困難です。企業が成長を続けるには、現場を指揮して牽引する幹部候補(マネジメント層)の存在が不可欠です。
幹部候補の育成は長い年月が必要となり、なかには途中で離職する従業員もいます。そのため、一般的な幹部候補の育成では、早期に複数の候補者を選抜して同時に教育を始めます。
仕事への姿勢や考え方を向上させる
仕事で成果を出させるためには、ビジネスマインド(仕事への姿勢や考え方)を醸成させる必要があります。 企業理念を理解させ、ビジネスマナーや社会人としての心得などを身につけさせましょう。
ビジネスマインドは、日常業務への取り組み方に影響します。階層で区別せず、すべての従業員のビジネスマインドを高めましょう。
生産性を向上させる
人材育成は、組織としての生産性向上も目的としています。企業活動は、個人の行動により支えられているためです。個々の生産性が向上すると、日常業務を少人数で回せるようになります。新商品の開発や新事業の立ち上げなどに投入する人材を増やせば、自社の成長につながるでしょう。
優秀な人材の流出防止
人材育成に力を入れると、優秀な人材の流出を食い止められることが期待できます。経営理念やビジョンの浸透によって愛社精神が高まると、帰属意識が芽生えるためです。少子高齢化や雇用の流動化を背景に、多くの企業は優秀な人材の獲得に課題を抱えています。人材育成によって帰属意識を高め、人材流出を防止しましょう。
人材育成の手法
人材育成の手法は主に4つあり、得られる効果はそれぞれで異なります。自社の状況に合わせて適した手法の導入により、効果の最大化が可能です。
- ・即戦力になる人材へと育成するにはOJT
- ・業務に関する知識を増やすにはeラーニングやOff-JT
- ・自発性を養うにはSD
- ・手法ごとにメリット・デメリットがある
eラーニング
eラーニングは、インターネットやデジタル機器を利用する人材育成手法です。受講者は空き時間を活用して自分のタイミングで知識を身につけられます。ただし、以下のケースがあるため、比較検討してからサービスを選びましょう。
- ・システムが使いにくい
- ・自社の人材育成に必要なカリキュラムが含まれていない
eラーニングについては、こちらの記事も参考にしてください。
※参考:eラーニングとは?導入するメリット・デメリットや成功させるコツを解説
OJT(On the Job Training)
OJTは、配属された職場で実務経験を積みながら知識やスキルを身につける、新入社員向けの育成手法です。OJTのメリットは以下の通りです。
- ・実践しながら知識を身につけるため、教育を受ける側は不安や疑問を即座に解消できる
- ・実践に重きをおくため即戦力を育成できる
一方、育成担当者は通常業務を抱えながらOJTに臨むため、負担が大きくなりがちです。OJTについては、こちらの記事も参考にしてください。
※参考:OJTとは?導入する目的やメリット・デメリット、成功に導く3つのポイントも解説
Off-JT(Off the Job Training)
Off-JTは、現場から離れた環境下で実施される研修です。体系的に業務に必要な知識やスキルを身につけられる点は、Off-JTの強みです。また、Off-JTは外部の講師を招いて開催されるケースが多く、研修内容はカスタマイズ可能です。Off-JTについては、こちらの記事も参考にしてください。
※参考:off-jtとは?OJTとの違いやメリット、デメリットを解説
SD(Self Development)
SDは、従業員が自分の意志でスキルアップを図る育成手法です。たとえば、専門書で知識を深める、セミナーに参加する、などの行動はSDに該当します。 従業員が自発的に取り組むSDが活発化すると、育成担当者の負担を減らせます。企業は、SDに取り組む従業員を積極的にフォローしましょう。
人材育成計画の進め方
人材育成は計画に沿って進めることが大切です。具体的な計画の策定により、効率性の高い人材育成が可能となります。
- ・従業員へのヒアリングにより、本人にマッチした人材育成が可能
- ・理想の従業員像の設定により、人材育成計画のブレがなくなる
- ・適切な育成手法を選ぶことで自社と従業員間のギャップを埋められる
1.従業員の現状を把握する
従業員にヒアリングを行い、理想とする将来像や、目標とする人物像を明らかにしてください。そのうえで、従業員自身の働く理由も聞いておくと、本人の考えに合わせた人材育成を進めやすくなります。
2.理想とする従業員像を定める
自社が求める理想の従業員像を設定しておくと、必要な知識やスキルが明確になり、従業員は目標を定めやすくなります。なお、各部署における理想の従業員像も決めておくと、ブレのない人材育成計画を立てられます。
3.取り組む内容を具体化する
従業員の現状と自社が求める理想像を照らし合わせ、ギャップを埋めるための計画を策定しましょう。eラーニングやOJTといった育成手法のうち、適切なものを選択して準備を進めます。
人材育成に活用できる5つのフレームワーク
フレームワークを活用すると、短期間で人材育成の成果をあげることが可能です。期間がかからない理由としては、以下の要素があげられます。
- ・やるべきことが具体的に把握でき、迷いがなくなる
- ・従業員にマッチした計画を提示でき、モチベーションを維持しやすい
1.ベーシック法
ベーシック法は目標達成に向けた行動基準を明確にするフレームワークで、以下の4つのステップで構成されます。
- ・目標項目:目標を設定する
- ・達成基準:目標達成と見なすレベルを決める
- ・期限設定:目標達成の具体的な期限を決める
- ・達成計画:必要な行動や順序を検討する
2.思考の6段階モデル
教育学者のベンジャミン・ブルーム博士が提唱した思考の6段階モデルでは、以下の内容が説かれています。
- ・思考の段階は「知識・理解・応用・分析・統合・評価」の6段階に分類できる
- ・育成効果を高めるには、それぞれの段階の能力を向上させる必要がある
思考の6段階モデルは、育成担当者の選定基準や、従業員の育成達成度を図る指標として使われます。
3.SMARTの法則
SMARTの法則とは目標設定に向けた手法の1つで、活用すると目標のクオリティを評価できます。SMARTの法則の5つの要素は、以下の通りです。
- ・Specific(具体的で分かりやすいか)
- ・Measurable(数値的に達成度を確認できるか)
- ・Achievable(現実的に達成可能か)
- ・Realistic(企業が掲げる上位目標と相関が取れているか)
- ・Time-bound(期限が明確か)
4.カークパトリックモデル
カークパトリックモデルは、人材育成の達成度を「反応・学習・行動・結果」の4段階に分類し、総合的に評価するためのフレームワークです。人材育成の達成度を数値化できるため、投資効果の確認にも活用されています。なお、達成度を評価するためには、研修後のアンケートや事後テストなどが役立ちます。
5.カッツモデル
カッツモデルとは、階層別の人材育成で求められるスキルの割合を示すモデル図です。カッツモデルは3つの階層と3つのスキルで構成され、階層によって必要なスキルの比率が分かります。理想とする従業員像を定める際は、カッツモデルを参考にしましょう。
人材育成に必要なスキル
上述したように、担当者のスキルレベルによって育成の効率は大きく左右されます。特に重要視されるスキルは以下の4つです。
- ・従業員との連携を深めるコミュニケーションスキル
- ・従業員の目標を管理するスキル
- ・障害を取り除き目標の達成まで導くスキル
- ・事実に基づいて論理的・多角的に考えられるスキル
コミュニケーションスキル
人材育成はコミュニケーションを取りながら進めていくため、担当者にはコミュニケーションスキルが不可欠です。特に、ティーチングスキルやコーチングスキルを重視しましょう。ティーチングスキルは、知識やノウハウを分かりやすく伝えるスキルです。コーチングスキルは、相手の自主性・自発性を引き出すスキルです。
目標管理能力
目標管理能力は、従業員が設定した目標を達成できるように管理しフォローするスキルです。育成担当者は、目標達成を阻害する問題が起きたときに、対応策を提示して計画を修正するよう働きかけます。
論理的思考
ロジカルシンキングとも呼ばれる論理的思考は、物事を体系的に整理し、矛盾や飛躍のない筋道を立てる思考法です。論理的思考が身につくと、問題解決能力や、プレゼン力や提案力を向上させられます。
批判的思考
批判的思考とは、物事の本質を見極めるときに使われる思考法のことです。あえて前提条件をも含むすべてに疑問をもつと、理性的に行動できるため満足度の高い育成が可能です。
階層別の人材育成で大切なこと
人材育成では、管理職、中堅社員、新入社員という階層別に大切なことが異なります。それぞれに役割があり、以下のスキルを身につけさせることに重点を置いて人材育成を進めましょう。
- ・管理職向け:高いレベルでの経営に関するスキル
- ・中堅社員向け:自社を牽引するスキル
- ・新入社員向け:社会人としての基礎的なスキル
管理職
管理職向けの人材育成では、以下が重視されます。
- ・組織論や経営戦略への理解
- ・ハラスメントへの理解
- ・コミュニケーションスキルの再確認
育成手法としては、経営層による研修または、外部研修を受講する方法が一般的です。また、近年ハラスメント問題の報告が増えています。トラブルを防ぐために、ハラスメント研修やコミュニケーションスキルの再確認も、カリキュラムに盛り込みましょう。
中堅社員
中堅社員向けの人材育成では、以下が重視されます。
- ・モチベーション向上
- ・マネジメントスキルの向上
業務に慣れてきた中堅社員には、マンネリによりモチベーションが低下してしまった人もいます。 自社の業績に大きく関わる存在であると自覚してもらうために、啓発目的の研修や、人材育成の担当者になるための教育を実施しましょう。 また、管理職候補として、マネジメントスキルを身につけさせるための教育も必要です。
新入社員
新入社員向けの人材育成では、以下が重視されます。
- ・企業の全体像への理解
- ・ビジネスマナーやビジネスマインドへの理解
自社への理解を深めてもらうために、経営理念やビジョン、自社のビジネスモデル、成り立ちなどの知識を身につけさせましょう。慣れない環境下での業務にストレスを感じている新入社員もいるため、育成担当者は密にコミュニケーションを取ってフォローしてください。
まとめ
人材育成の効果を高めるには、目標の明確化や従業員のモチベーション管理などが重要です。 紹介したフレームワークを使って人材育成計画を策定してください。なお、育成担当者のスキルレベルによって、育成の効率は大きく左右されます。特にコーチングスキルは、育成対象となる従業員の自主性・自発性を引き出す大切なスキルです。
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