キャリアとは
キャリアとは個人の経歴のことです。キャリアは仕事やビジネスにおける経歴だけでなく、人の生涯の意味も含まれます。一般的に、キャリアは仕事の経歴や就職、出世などを指して使われる言葉ですが、「キャリアを積む」のように使われる場合には、生涯やプライベートの意味も含まれます。
キャリアの定義
キャリアとは人の生き方そのものを指しています。厚生労働省が定めるキャリアの定義は、以下の通りです。
- ・キャリアとは、一般に「経歴」「経験」「発展」さらには「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念として捉えられる。
文部科学省は、キャリアを以下のように定義しています。
- ・人が、生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なりや積み重ねが、「キャリア」の意味するところである。
キャリアの定義はそれぞれ異なりますが、どちらも仕事の継続や過程などの意味が含まれています。
※参考:「キャリア形成の現状と支援政策の展開」-個人の能力・個性がいきいきと発揮される社会を目指して-|厚生労働省
※参考:中央教育審議会答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」|文部科学省
キャリア開発とは?
キャリア開発とはスキルや能力、職務などの開発を計画することです。キャリア開発は中長期的に行われ、個人が業務から得た能力や知識などを発展・向上させます。キャリア開発は、継続的に行われることが重要です。従業員が必要な能力や知識を身につけるために、適切なプロセスを設計する必要があります。
企業は従業員のために、キャリアプランやキャリアデザインを提供します。キャリア開発は従業員のキャリアを考慮して、1人ひとりに対して支援を行いましょう。キャリア開発には、社内の教育研修や社内異動の自己申告制度などの施策があります。
キャリア開発が必要な理由
キャリア開発が必要な理由は、以下のとおりです。
- ・終身雇用制度が変化している
- ・多様な働き方が広がっている
- ・転職者が増加している
- ・テクノロジーが進化している
ここでは、それぞれの理由について解説します。
終身雇用制度が変化している
昨今、企業の終身雇用制度は崩壊に向かっているともいわれます。1950年代から始まったとされる終身雇用制度は、1つの企業で定年まで働き続けるものでした。経済成長を前提とする終身雇用制度は、景気の低迷や企業の業績不振などから、現在では、制度の維持が困難なことが少なくありません。今後のキャリア形成は、企業ではなく従業員が自分で行う必要があります。
多様な働き方が広がっている
現在は、多様性のある働き方が広がっています。たとえば、就業時間を自由に決められるフレックス制度や、勤務地を自由に決められるテレワークのような、さまざまなワークスタイルが挙げられます。また、仕事の目的ややりがいも多様化しています。企業は従業員の価値観を尊重し、多様な働き方や雇用の変化などに対応することが必要です。
転職者が増加している
現在は、よりよい職場を求めて、転職希望者が増える傾向です。雇用や働き方などの変化により、業種や職場環境、雇用条件などを改善したい人が増加したためです。現在は多様なスキルが求められているため、自身の強みを活かすキャリア形成が可能です。従来の総合職のような働き方ではなく、専門スキルに特化した働き方を選ぶこともできます。
テクノロジーが進化している
AIやITなどのテクノロジーの進歩は、キャリア形成にも影響を与えます。ほとんどの仕事は、IT技術により代替可能であるといわれるためです。今後は、テクノロジーにより産業の構造改革が行われ、従来の働き方に変化が起きることが予想されています。 人間の働く役割が変化するため、人間にしかできない仕事により価値が置かれるでしょう。そのためテクノロジーに代替されない仕事は、重要性が高まります。
キャリア開発を行うメリット
キャリア開発を行うと、以下のメリットが得られます。
- ・優秀な人材を見つけやすくなる
- ・生産性が向上しやすくなる
- ・組織の活性化につながる
キャリア開発は、組織全体に良い影響を与えることが可能です。ここでは、キャリア開発のメリットを解説します。
優秀な人材を見つけやすくなる
キャリア開発を行うと、企業の取り組みが評価されます。社内外にキャリア開発をアピールでき、優秀な人材を採用しやすくなるでしょう。優秀な人にとって、自由裁量権が大きい職場は魅力を感じやすいためです。企業はキャリアごとにポストを用意すると、優秀な人材を獲得しやすくなります。人材の定着率を高めることも期待できます。
生産性が向上しやすくなる
キャリア開発を行うと、組織から受け身の従業員が減り、職場全体の生産性が向上します。従業員が自ら学べる環境を選ぶことで、働くモチベーションが上がりやすくなるためです。人間は自分で選んだものに対して、意欲を持ちやすくなる傾向があります。従業員が自身のキャリアをイメージできると、自発的に仕事に取り組みやすくなります。
組織の活性化につながる
キャリア開発を行うと、従業員が自ら考えるようになります。従業員1人ひとりがキャリアと向き合い、身につけたスキルや知識を企業に還元します。企業に新たな発想が入りやすくなると、組織の活性化を促すでしょう。企業はキャリア開発によって、従業員を適材適所に配置できるため、組織のイノベーションにつなげられます。
キャリア開発の具体的な方法
キャリア開発には、以下の方法があります。
- ・キャリア研修の実施
- ・キャリア面談の実施
- ・キャリアパスの提示
- ・人事異動や配置換え
- ・副業などの推奨
キャリア開発は、従業員の将来性を考慮して実施しましょう。ここでは、キャリア開発の具体的な方法を解説します。
キャリア研修の実施
従業員がキャリア研修を受けると、自身のキャリアと向き合うきっかけが得やすくなります。研修を通して、自身の課題や強みなどを見つけやすくなるためです。キャリア研修は、さまざまな知識やスキルの研修を実施する必要があります。企業側は、従業員に専門の知識やスキルなどの研修を提供します。
研修はキャリアに関するものだけでなく、テーマ別に用意すると良いでしょう。たとえば、マネージメント研修や階層別研修などがおすすめです。
自らのキャリアを切り開く
キャリア面談の実施
キャリア面談では、従業員のキャリアの方向性を決めます。面談のなかで、上司や人事担当者は従業員1人ひとりに向けて、キャリアに関するヒアリングを行います。ヒアリングで明らかになった従業員の課題や希望を、キャリアの方向性の検討に活かしましょう。
キャリア面談は、外部のキャリアコンサルタントに依頼する方法もあります。外部の人間による面談のメリットは、従業員が話しやすくなる点です。企業はキャリア面談を通して、体制の見直しや改善につなげましょう。
キャリアパスの提示
キャリアパスは、仕事の目標を指す言葉です。企業がキャリアパスを提示することで、従業員は新しいキャリアの可能性を見つけやすくなります。従業員は、所属している組織や周辺のみでキャリアを考える傾向があるため、企業は従業員本人が気づいていないキャリアの方向性を示すことも必要です。
従業員に具体的なキャリアパスを提示できると、仕事に対して前向きに取り組みやすくなります。キャリアに可能性を感じることで、積極的に知識や必要なスキルを習得するようになるでしょう。
人事異動や配置換え
人事異動や配置換えは、キャリア開発の一環にもなります。キャリア開発を行うには、多様な知識やスキルを身につける必要があります。従業員のキャリアパスを実現するために、さまざまな部署や仕事の経験を積ませることが大切です。
人事の制度には、従業員から希望を聞く「自己申告制」や、部署を公開した上で募集する「社内公募制」などがあります。「社内FA制度」では、従業員が自らスキルや経験をアピールしやすくなります。定期的に人事異動や配置換えを行う「ジョブローテーション」も、キャリアパスを実現する上では有効です。
副業などの推奨
副業はキャリア開発に有効です。企業はキャリア開発の一環として、多様な働き方を認める必要があります。従業員が副業を行うことで、本業では得られない知識やスキルが身につき、本業にも良い影響を与えやすくなるためです。
従業員の中には、社内のキャリア形成に限界を感じている人もいます。社外の業務を経験することで、従業員のキャリア形成に対する新しい発想が得られる効果も期待できるでしょう。副業を始めることで、本業に対するモチベーションが高めやすくなります。
キャリア開発を行う際のポイント
キャリア開発を行う際は、以下のポイントを意識しましょう。
- ・フレームワークを使う
- ・目標となる人物を見つける
- ・適性に合わないものを避ける
上記は従業員のキャリア開発に有効な方法です。ここでは、キャリア開発のポイントを解説します。
フレームワークを使う
キャリア開発のフレームワークは、Will・Can・Mustを使いましょう。それぞれの意味は、以下のとおりです。
- ・Will:やりたいこと
- ・Can:できること
- ・Must:やるべきこと
Will・Can・Mustの3つが重なる部分は、最も満足度の高い領域です。この3つを明確にすると、従業員が取り組む仕事やキャリア形成の方向性などを決めやすくなります。新入社員の場合は、まず、Willを明確にすると 良いでしょう。
目標となる人物を見つける
目標となる人物を見つけられると、キャリア開発につなげやすくなります。従業員は社内外から「この人のようになりたい」といったモデル像を得ることで、自身のキャリア開発の参考にできます。目標となる人物が社内にいる場合は、直接話す機会をつくると良いでしょう。歴史上の人物のような話を聞けない場合は、インターネットや書籍などで調べる必要があります。
適性に合わないものを避ける
やりたくないことをリストアップする行為は、キャリア開発に有効な方法です。 体力が必要な仕事や生活リズムが不規則になるものなど、やりたくないことは、やりたいことに比べて見つかりやすいでしょう。リストアップした適性に合わない仕事から自身が望む方向性が浮き彫りになり、適性に合う仕事が探しやすくなります。やりたい仕事が見つかる可能性があるため、仕事を探す際に試してみましょう。
【年代別】キャリア開発のポイント
キャリア開発は従業員の年齢に合わせて、調整や見直しを実施する必要があります。
- ・20代のキャリア開発
- ・30代のキャリア開発
- ・40代のキャリア開発
- ・50代のキャリア開発
ここでは、年代別にキャリア開発のポイントを解説します。
20代のキャリア開発
20代のキャリア開発は、数年〜10年程度先のキャリアを考えます。20代の従業員は、働くうえで土台となる実力を形成する時期です。仕事に必要な知識やスキルなどを身につけることを優先します。従業員の方向性を決めつつ、さまざまな仕事に挑戦させましょう。従業員がキャリアの可能性を広げられるよう計画を立てることが重要です。
30代のキャリア開発
30代はセカンドキャリアを考える時期です。今までの仕事で身につけた知識やスキルを活かして、今後のキャリアを検討する必要があります。従業員は経験した仕事を分析し、今後求められたり、貢献できる役割を考えます。職歴から強みや弱みを把握できると、資格の取得やスキルアップなどに取り組みやすくなるでしょう。
40代のキャリア開発
40代はキャリアアップを図る時期です。従業員の指揮を執ったり、人材育成に取り組んだりする機会が増加するため、マネジメントスキルのような全体を管理するスキルが欠かせません。自分とは異なる年代の人の価値観を受け入れて、状況に応じた判断が求められるため、自身のキャリアを活かしながら、新しい知見を広げることが重要です。
40代からのキャリアデザイン研修
50代のキャリア開発
50代は定年後を見据えてキャリアを形成する時期です。子育てが終了する時期と重なる場合、責任が軽減され、セカンドキャリアを探しやすくなります。今までの人脈を活かして転職できる可能性もあります。ただし、50代以降は転職が成功しにくい傾向があります。50代から転職をする際は、慎重に判断することが重要です。
50代からのキャリアデザイン研修
まとめ
キャリアとは、個人の人生の経歴です。キャリアは本来、仕事の経歴や人の生涯などの意味があります。 キャリア開発を行う際は、多様な働き方や従業員の価値観を尊重しましょう。 従業員のキャリア開発に成功すると、優秀な人材の獲得や組織の活性化などにつなげられます。キャリア開発は、従業員の年代に合わせて適切な方法で実施しましょう。
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