司法書士になるには研修の受講が必須
司法書士になるには、日本司法書士会連合会が実施している研修の受講が必須です。各種研修の受講を通して、司法書士として必要なスキルを学べます。研修の対象者は、司法書士試験に合格して、司法書士会への入会や司法書士の登録を1年以内に予定している人です。司法書士法には、司法書士に研修の受講を義務付ける内容が記されています。
OJTとの相違点
OJTとは「On The Job Training」を略した言葉で、off-jtと同様に人材育成の現場で使われる言葉です。上司や先輩から、実際の仕事を進めながら業務内容について教わります。今後日常的に行う業務について、実際に対応しながらアドバイスをもらい、その後に活かしていきます。
off-jtでは座学によって一般的に業務全般に求められる汎用性の高い知識を得られ、OJTではとある業務についてのノウハウを実践的に学べます。また、off-jtでは職場外で実施するのに対し、OJTは職場内で個別指導として実施することも異なります。
期間はoff-jtは1日~数日間と短期間に実施されるケースが多く、OJTは将来的な成長に向けて数日間~数か月と中長期的かつ継続的に実施されるケースが多くなっています。OJTでは、受講者の理解度によって期間が変更されることも少なくありません。OJTについては、以下の記事を参考にしてください。
※参考:OJTとは?(https://www.u-can.co.jp/houjin/column/cl001.html)
受講が必要な研修の種類
受講が必要な研修は、司法書士新人研修と司法書士特別研修の2種類に大きく分類されます。研修の種類は、以下の通りです。
- ・中央新人研修
- ・司法書士会新人研修
- ・ブロック新人研修
- ・司法書士特別研修・認定考査
中央新人研修
中央新人研修は、司法書士のメインとなる業務や司法制度の歴史を学べる研修です。受講者に対して司法書士に必要な考え方や心構えなどを教育する目的があります。中央新人研修は、eラーニング研修による受講が可能です。eラーニング研修は、受講者が動画や静止画を見ながら学べる研修スタイルです。時間や場所にかかわらず、研修に参加できます。
ブロック新人研修
ブロック新人研修は、より司法書士の現場業務に近い研修内容になっており、開業に必要な知識や心構えなども学べます。北海道や九州などの全国8ブロックに分かれて実施され、オンライン受講が可能なブロックもあります。受講するブロックは、受講者の希望で選択可能です。将来開業を考えている方は、開業予定地のブロックでの受講を推奨されています。
司法書士会新人研修
司法書士会新人研修は、司法書士の実務を学べる研修です。各都道府県にある司法書士会で実施されています。司法書士会新人研修は、配属研修とも呼ばれており、受講者は司法書士事務所に配属され、現場業務を実践的に学びます。司法書士会新人研修の受講は、強制ではありません。受講しない選択も可能ですが、研修で学んだ内容は、就職・独立後の勤務に活用できます。
司法書士特別研修・認定考査
司法書士特別研修は、認定司法書士になる上で受講が必須とされている研修です。認定司法書士は、司法書士よりも多くの業務を取り扱える専門家であるため、より広い範囲で活躍できます。
認定考査も、認定司法書士になる上で必要になるものの1つです。司法書士特別研修を修了した人を対象に実施されており、認定司法書士として必要な実力を持っているかどうかが試されます。司法書士事務所のなかには、司法書士特別研修と認定考査の受講を採用条件にしている場合もあります。志望する司法書士事務所がある場合は、事前の確認が重要です。
研修の日程と受講にかかる費用
研修の日程と受講料はそれぞれ異なります。事前に把握して、受講に備えて準備しておきましょう。
中央新人研修
中央新人研修は、毎年12月から翌年1月の間に実施される研修です。研修の日程は、地域によって異なるため、自分が受講する地域の日程は、事前に確認しておきましょう。詳細な日程は、各都道府県にある司法書士会のホームページで確認できます。中央新人研修の受講料は、44,000円です。振込みの際は、ブロック新人研修の受講料と一緒に振込む必要があります。
※参考:令和4年度司法書士新人研修のご案内(https://www.kensyu.nisshiren.jp/Training/newface/data/r04_info.pdf)
司法書士会新人研修
司法書士会新人研修の日程は、司法書士会によって異なります。詳細な日程は、司法書士会のホームページで確認もしくは、司法書士会に直接問い合わせをしましょう。研修の受講料は、無償の場合が多いです。
ブロック新人研修
ブロック新人研修は、毎年12月から翌年1月の間に実施されます。研修の日程は、地域によって異なるため、自分が受講する地域の日程は、各都道府県の司法書士会のホームページで事前に確認しておきましょう。
ブロック新人研修の受講料は、33,000円です。研修会場によっては、追加で費用が必要な場合があるため、受講するブロックの事務局に前もって費用を確認しておくといいでしょう。なお、振込みの際は、中央新人研修の受講料と一緒に振込む必要があります。
※参考:令和4年度司法書士新人研修のご案内(https://www.kensyu.nisshiren.jp/Training/newface/data/r04_info.pdf)
司法書士特別研修・認定考査
司法書士特別研修と認定考査は、毎年1月から3月の間に実施されます。司法書士特別研修は、各都道府県にある司法書士会で実施されますが、実施期間はすべての会場とも同様です。司法書士特別研修と認定考査の受講料は、以下の通りです。
- ・司法書士特別研修:145,000円
- ・認定考査:10,900円
※参考:第22回司法書士特別研修受講者募集について│特別研修│日司連研修総合ポータル(https://www.kensyu.nisshiren.jp/Training/special/detail.jsp)
研修費用はローンで支払いが可能
司法書士になるためには、高額な研修費用が必要です。研修費用の支払いが難しい人は、司法書士研修費用専用ローンを利用できます。研修期間中に必要な受講料や生活費などの研修費用に使用できるため、金銭的に余裕がない人は、検討をおすすめします。
司法書士研修費用専用ローンは、日本全国の信用組合で利用可能です。融資期間は、人によって異なりますが、司法書士になって給料もしくは報酬が得られるようになれば、計画的にローンの返済ができるでしょう。
研修の申込み方法
研修の種類によって、申込み方法は異なります。それぞれの研修の申込み方法は、以下の通りです。
- ・中央新人研修:郵送またはインターネット
- ・司法書士会新人研修:FAX
- ・ブロック新人研修:郵送またはインターネット
- ・司法書士特別研修・認定考査:インターネット
就職活動を始めるおすすめのタイミング
司法書士を目指す多くの人は、筆記試験を合格した後、もしくは研修を受講している間に就職活動を始めています。研修の受講をすべて終えてから就職活動を始める人もいますが、人気もしくは大手の事務所は、早期に求人募集を締めきる場合もあるため、できる限り早めに動くといいでしょう。
時間や気持ちに余裕がない人も、就職に役立つ情報収集を早めにしておけば、希望する事務所への対策をより万全にできます。司法書士の求人募集は、転職サイトもしくは転職エージェントに登録して確認することが可能です。
研修を受講しなくていいケース
司法書士になるための研修は、司法書士会への登録を直近1年以内にする予定がない人は、受講しなくても問題ありません。自分で司法書士として登録したいタイミングで、各種研修を受講できます。一部の司法書士会では、研修の受講前に登録できる場合もありますが、将来的に新人研修を受講する旨が記載された誓約書の提出が必要です。
司法書士試験に合格した後の一般的な流れ
司法書士試験合格者の進路は、司法書士として企業に勤務するだけではありません。司法書士試験に合格した後は、大きく4つのケースに分かれます。試験合格後の4つのケースは、以下の通りです。
- ・法務部門で企業勤務するケース
- ・開業するケース
- ・司法書士または補助者として勤務するケース
- ・ダブルライセンスを取得するケース
法務部門で企業勤務するケース
法務部門で企業勤務するケースの一般的な流れは、以下の通りです。
- 1.企業の法務部門への転職活動
- 2.新人研修の受講
- 3.司法書士特別研修・認定考査の勉強
- 4.司法書士特別研修・認定考査の受講
開業するケース
司法書士として独立して開業するケースの一般的な流れを以下に記載します。
- 1.独立の準備・独立する場所の調査
- 2.新人研修・ブロック新人研修の受講
- 3.司法書士特別研修・認定考査の勉強
- 4.司法書士特別研修・認定考査の受講
司法書士または補助者として勤務するケース
司法書士または補助者として勤務するケースの一般的な流れは、以下の通りです。
- 1.司法書士・補助者への転職活動
- 2.新人研修の受講
- 3.司法書士特別研修・認定考査の勉強
- 4.司法書士特別研修・認定考査の受講
ダブルライセンスを取得するケース
宅建士や行政書士の資格は、業務の幅が広がり、司法書士試験合格者が取得しやすい資格です。司法書士とのダブルライセンスを目指す場合の一般的な流れでは、資格試験の勉強と新人研修の受講を並行して進めます。難易度の高い資格を取得する場合は、試験勉強への集中が必要です。
司法書士の試験概要
司法書士の試験概要を、以下の4つのポイントで解説します。
- ・受験資格
- ・受験料、必要書類
- ・申込み手順
- ・合格率
受験資格
司法書士試験には、受験資格がありません。受験に制限はありませんが、司法書士になれない人の条件は設けられています。司法書士になれない人の条件は、以下の通りです。
- ・未成年者
- ・破産手続開始の決定を受けてから復権を得ていない者
- ・禁錮以上の刑に処されて、執行の終了もしくは執行を受けなくなってから3年が経過していない者
- ・司法書士法第47条の規定に基づき業務禁止の処分を受けてから3年が経過していない者
- ・公務員として懲戒免職の処分を受けてから3年が経過していない者
- ・懲戒処分によって公認会計士の登録を消されるもしくは、弁理士、土地家屋調査士、行政書士、税理士の業務を禁止されてから3年が経過していない者
受験料・必要書類
司法書士試験の受験料は、8,000円です。8,000円分の収入印紙をコンビニエンスストアもしくは郵便局で用意して、受験申請書に貼り付けた後に申請しましょう。司法書士試験の受験に必要な書類は、以下の通りです。
- ・受験申請書
- ・受験票
※参考:令和5年度司法書士試験受験案内書 法務省(https://www.moj.go.jp/content/001393003.pdf)
申込み手順
司法書士試験の申込み手順は、以下の通りです。
- 1.法務局または地方法務局の窓口で受験申請書と受験票を入手する
- 2.受験申請書に必要事項を記入する
- 3.受験申請書に8,000円分の収入印紙と顔写真を貼る
- 4.法務局または地方法務局の窓口で申請する
合格率
司法書士試験の合格率は、以下の通りです。
- ・令和4年度:約5.2%
- ・令和3年度:約5.1%
- ・令和2年度:約5.2%
- ・平成31年度:約4.4%
- ・平成30年度:約4.3%
※参考:令和4年度司法書士試験の最終結果について|法務省(https://www.moj.go.jp/content/001383469.pdf)
※参考:令和3年度司法書士試験の最終結果について|法務省(https://www.moj.go.jp/content/001358622.pdf)
※参考:令和2年度司法書士試験の最終結果について|法務省(https://www.moj.go.jp/content/001339811.pdf)
※参考:平成31年度(2019年度)司法書士試験の最終結果について|法務省(https://www.moj.go.jp/content/001308489.pdf)
※参考:平成30年度司法書士試験の最終結果について|法務省(https://www.moj.go.jp/content/001272183.pdf)
司法書士試験の合格に向けた効率的な勉強方法
司法書士試験の効率的な勉強方法を、以下に記載します。
- ・インプットとアウトプットをする
- ・隙間時間を活用して計画的に勉強する
- ・通信講座や予備校を利用する
- ・模試に挑戦する
インプットとアウトプットをする
司法書士試験を効率的に勉強するには、インプットとアウトプットが大切です。テキストから知識をインプットした後に、アウトプットとして問題集を解き、不正解だった問題に関わる知識をテキストでインプットし直して、再び問題集を解きます。
テキストと問題集を活用したインプットとアウトプットのサイクルを何度も行えば、試験の合格に必要な知識が効率的に身につきます。
隙間時間を活用して計画的に勉強する
隙間時間を有効活用すれば、効率的な試験勉強が可能です。特に働きながら試験勉強をする場合は、休憩時間や通勤時間などの隙間時間を活用する姿勢が大切になります。休憩時間に問題集を解いたり、通勤時間に音声で勉強したりして、試験勉強の効率を上げましょう。司法書士試験の勉強は長期間になるため、隙間時間の積み重ねが大切です。
通信講座や予備校を利用する
通信講座や予備校では、試験合格に向けた効率のいい学習計画や学習内容が研究されているため、効率的に試験勉強ができます。多くの司法書士試験合格者が、通信講座や予備校を利用しています。教室に通い学びたい人は予備校が向いており、費用を抑え、場所や時間の制限なく勉強したい人は、通信講座がおすすめです。
模試に挑戦する
模試は、試験勉強が進んできた段階で取り組むといいでしょう。模試を通して、記述式試験の解答に慣れたり、自身のレベルを客観的に把握したりできます。模試を有効活用すれば、本番に向けたより実践的な勉強が可能です。テキスト、問題集、過去問題を繰り返し勉強して知識が身についた後は、模試に挑戦しましょう。
司法書士試験の合格に必要な勉強時間の目安
司法書士試験の合格に必要な勉強時間の目安は、3,000時間です。勉強時間には個人差があるため、あくまで自分で勉強する際の参考にしてください。司法書士試験は試験範囲が広く、科目数も多いため、まとまった勉強時間が必要です。
まとめ
司法書士になるには、司法書士新人研修と司法書士特別研修の受講が必要です。各種研修には、試験合格者に対して司法書士として必要なスキルを教える目的があります。司法書士としての考え方や心構え、実務スキルなどが学べます。
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