AIとは
AIとは「Artificial Intelligence」の略で、人工知能を意味します。AIによって、人間の知能による活動の一部をコンピューター上で再現できます。万能なロボットのようなAIを「汎用型AI」と呼びますが、まだ実用化には至っていません。AIの多くは、顔認証や数値予測といった特定の処理のみ可能な「特化型AI」を指します。
AIの定義
AIは明確に定義付けられておらず、組織や団体によって捉え方が異なっています。例えば総務省の場合、AIとは、人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術としています。一般社団法人 人工知能学会は、人工知能は大量の知識データに対して、高度な推論を的確に行うことを目指したものと説明しています。
AIの機能
AIはさまざまな機能を持ちますが、代表的な機能として「識別」「予測」「実行」が挙げられます。ここでは、それぞれについて解説します。
識別
識別とは、情報の判別や仕分け機能を意味します。AIは、音声や画像、動画、言語の解析を行い、何らかの判断や分類を実行します。例えば、スマートフォンの顔認証や音声認識などが識別機能として挙げられます。
予測
予測とは、ビッグデータにより未来の値や事象を予測する機能です。数値予測、ニーズ予測、マッチングなどに活用されています。具体例として、過去の情報に基づいた売上予測や、ECサイトでのレコメンド機能などが挙げられます。
実行
実行は、人間の行動や作業を代行する機能を指します。表現の生成、デザイン、作業の自動化などが代表的な活用シーンです。年々進歩している自動運転車が一例として挙げられます。最近ではAIによるデザインの自動生成なども注目されています。
AIブームの歴史
AIはブームと停滞を繰り返してきました。現在は第3次AIブームの最中です。ここでは、各ブームについて解説します。
第1次AIブーム
1950年代後半から1960年代にかけて第1次AIブームが発生しました。1956年のダートマス会議にて「人工知能」という言葉が登場し、AIに注目が集まりました。当時は主に、推論や探索の技術の研究開発が行われていましたが、実用化や社会問題の解決は困難とみなされ、ブームが終わりました。
第2次AIブーム
1980年代から1990年代にかけて第2次AIブームが起こりました。専門領域の推論を行う「エキスパートシステム」の研究が進み、特定分野での実用化が期待されたことでブームに発展しました。しかし、当時のパソコンはデータ収集や蓄積、計算速度などの能力が不十分でした。また、手作業でのデータ登録にも限界があったため、ブームが終了しました。
第3次AIブーム
第3次AIブームは2000年代から始まり、現在も続いています。深層学習という技術が登場し、AIが飛躍的に進化したことがブーム発生のトリガーとなりました。大量のデータを用いてAIが学習する機械学習の実用化も進みました。現在では、AIを活用した商品やサービスは一般的になっています。機械学習と深層学習の詳細は後述します。
AIの仕組み|学習方法
ここでは、AIの仕組みとしてメインの技術である機械学習と、機械学習の代表的な手法である深層学習について解説します。
機械学習
機械学習とはデータ分析を行う仕組みです。機械学習を活用すると、コンピューターに膨大なデータを与えて学習させ、特徴やルールなどを発見させることが可能です。得られた特徴やルールに基づいて、予測や分類などのタスクを遂行できるようになります。機械学習には以下の3つの学習手法があります。
1.教師あり学習
教師あり学習は、大量のデータとその正解をセットで与える学習方法です。コンピューターはデータに対する正解を学習します。教師あり学習により、コンピューターは未知のデータに対しても、答えの判別が可能となります。
2.教師なし学習
教師なし学習は、大量のデータのインプットのみで、その正解は与えないという学習方法です。大量のデータから特徴やルールの抽出を行います。教師なし学習により、未知のデータに対して、特徴やルールに基づいて分類できるようになります。
3.強化学習
強化学習は、ランダムに行動させ、その行動に対する報酬をスコアとして与える学習方法です。コンピューターは、スコアが最大化するように行動を調整します。強化学習によって、コンピューターは特定の目的に対する最適な行動が可能となります。
深層学習(ディープラーニング)
深層学習は機械学習技術の1つで、従来の機械学習よりも格段に精度が高い学習手法です。人間の神経細胞の仕組みをモデルとし、多層構造による複雑な分析によって、入力データの特徴量や重要度を自動抽出できます。学習のたびに、特徴量や重要度を定義する必要がないため、学習効率が高く、出力データの精度も高まります。
AIの仕組み|アルゴリズム
アルゴリズム(algorithm)の本来の意味は「問題解決の手順や方法」とされています。AIの仕組みとして活用されるアルゴリズムは、問題を解決するためにコンピューターのプログラムに組み込む手順や計算方法を指します。現在、数多くのアルゴリズムが利用されていますが、ここでは、代表的なアルゴリズムについて解説します。
ロジスティック回帰
ロジスティック回帰は、教師あり学習で用いられるアルゴリズムの1つです。複数の要因から、特定の事象が起きる確率を予測します。事象は一般的に「合格・不合格」「成功・失敗」といった2つの値で、それぞれの確率を算出します。
線形回帰
線形回帰も、教師あり学習で用いられるアルゴリズムの1つです。グラフ上にマッピングされた複数のデータに対して1本の直線を引き、データ分布の特徴を表現する手法です。売上予測などに使われます。
クラスタリング
クラスタリングは、教師なし学習で用いられるアルゴリズムの一種です。データを自動的に分析して、特徴や機能ごとにグループ分けする手法です。活用事例の1つとして、マーケティングにおける顧客の属性分類が挙げられます。
主成分分析
主成分分析は、一般的に教師なし学習のアルゴリズムとして活用されます。多種類の変数を持つデータに対して、情報の総量をできるだけ減らさずに合成変数を作成し、データの次元を削減する手法です。データの可視化や理解が容易になります。
ニューラルネットワーク
ニューラルネットワークは、深層学習で用いられるアルゴリズムです。人間の脳神経細胞(ニューロン)の働きを模しており、インプットデータの複雑な相互作用を経て、結果を出力する手法です。相互作用の構造は、入力層、中間層、出力層の三層に分けられます。
AIの活用事例
AIの技術は、現在さまざまな産業で活用されています。ここでは、主な活用事例について解説します。
医療
医療業界では、AIの画像認識技術により、ガンなどの病気の発見や診断に活用されています。過去の医療データと、生活習慣や年齢などの要因を学習させることによって、病気の発症リスクの分析も進められています。物体検知や生体信号検知の技術を利用して、介護施設における入居者の介護にも貢献しています。
製造業
製造業では、AIを用いた異常検知システムにより、不良品や不純物などを排除する仕組みが導入されています。在庫管理では、製品や部品別の過去の受注データから最適な在庫数を予測することも可能です。AIを搭載したデータ分析システムにより、製造現場でのデータ蓄積の負荷が下がり、分析にかかる計算時間も短縮された事例もあります。
金融業
金融業では、クレジットカードの詐欺被害を不正検知システムで防止しています。不動産投資では、物件データの分析で顧客の資産形成をサポートし、ローン返済リスクを回避しています。基準の厳しい金融関連の広告制作物の検閲・校正作業も、AIによる文字認識技術によって自動化が進んでいます。
小売業
小売業では、過去の売上データを分析し、需要を予測することで在庫を最適化しています。分析結果は、食品廃棄量の削減やマーケティング、商品開発にも役立ちます。AIの画像認識技術によって、レジ業務の自動化や無人化も一部で導入されており、人員コスト削減や人手不足の解消につながっています。
AIの進化と将来
AIの技術が今後も発展していくことで、世の中のあり方も変化していくでしょう。ここでは、AIの進化と将来について解説します。
2045年問題とは?
2045年問題とは、AIが人間の知能を2045年頃に超えると予測されており、さまざまな弊害や未知の問題が発生すると考えられていることです。AIが人間を超える転換点は「シンギュラリティ=技術的特異点」とも呼ばれます。しかし、日常会話ですらAIは、いまだ人間と同等レベルに至っておらず、2045年問題には根拠がないという意見も存在します。
AIの進化が社会にもたらす影響
AIの進化が社会にもたらす影響として、仕事がなくなることや、仕事の一部がAIに置き換わるなどの雇用の変化が挙げられます。例えば、運転手や警備員、レジ打ち、電話対応などの仕事はAIに置き換わる可能性があります。さらにAI技術が進歩することで、脳や臓器をコンピューターや人工物で代替できるようになると考えられています。
まとめ
AIは、データを学習することで識別や予測が可能です。人間の一部の作業も代替できます。現在も技術進化は継続しており、医療や製造業、金融業などの幅広い産業で有効活用されています。将来、単純な作業はAIに代替される可能性もあります。
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