• 更新日:2024/08/26

通関士の仕事とは、物品の輸出や輸入に必要な書類の作成や手続きを代行することです。通関士として働くには、専門的な知識や語学力を身につけるだけではなく、年に1回行われる通関士試験に合格して資格を取得しなければなりません。

この記事では、通関士の仕事内容や就職先、仕事の魅力や大変なところ、どのような人が向いているのかなどについて解説します。また、必要なスキルや語学力、試験の概要なども紹介します。通関士の仕事に興味がある人は、ぜひ役立ててください。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 通関士の仕事は、税関を通るために必要な業務の代行。具体的には通関書類の作成や通関手続き、申請が許可されなかった場合の不服申し立てなど。
  • 通関士に向いている人の特徴は「責任感と集中力が高い」「海外情勢や国際取引などに関心がある」「コミュニケーション能力がある」など。
  • 通関士試験の受験に受験資格はなし。試験は年に1回実施され、マークシート形式で出題される。


通関士の仕事とは?

通関士の仕事内容を、通関手続きの流れ(輸入の場合)をもって説明する図

通関士の仕事とは、簡単にいえば、税関を通るために必要な業務を代行することです。具体的には通関書類の作成や通関手続き、申請が許可されなかった場合の不服申し立てなどを行います。

通関書類には輸出申告書や輸入申告書、仕入書などさまざまな種類があり、必要に応じて適切な書類を提出しなければなりません。通関士はこれらの書類を依頼者に代わって作成します。

さらに、書類のチェックだけではなく、取引する品物が法令や規制に反するものではないか、関税や消費税が発生するかどうかといった審査を行うのも通関士の仕事です。貨物の積み込みや保管のための申請を代行する場合もあります。

通関士の就職先は?

通関士の主な就職先としては通関業者が多いものの、貿易や流通に携わる会社など、さまざまな選択肢があります。通関業務を行っている企業は、運送業や物流業、倉庫業を兼業している場合も多いです。また、航空会社や海運会社、輸出入を行っている商社やメーカーへ就職する人も少なくありません。

また、税務事務所やコンサルティング会社では、通関士の資格を持っている人が優先的に採用されるケースもあります。貿易のスペシャリストである通関士は、手続きを代行するだけではなく、アドバイザーとしての需要も高いのです。

通関士の仕事の1日の流れ・勤務時間は?

通関業者に勤務する通関士の勤務時間や1日のスケジュールの例を以下で紹介します。

・8:00 出勤
通関士の仕事は税関の開庁時間にあわせて進行する場合が多いです。開庁時間の30分前を目安に出勤し、開庁までにメールや申告書の確認を行います。

・8:30 税関開庁
税関が開庁したら、前日に審査した案件の申告を行います。

・9:00 打ち合わせ
営業や税関担当者が出社したら、提出書類の内容や検査の段取りを確認します。その後、緊急度の高い案件から順番に審査や申告を進めます。

・12:00 昼休み
税関では11:45~14:00は受付を休止しているため、同じタイミングで昼休みを取ります。

・13:00 書類作成・審査・申告
午後は書類の提出や検査の立会いのために、税関へ赴きます。同時に、翌日分の案件も処理しなければなりません。

・17:30 税関閉庁
税関が閉庁すると、その日の業務は終了です。案件の処理が終わっていない場合は、閉庁後も作業を続ける場合があります。

・18:00 退勤

通関士の仕事の魅力・大変なところは?

ここからは通関士を目指す人のために、通関士のメリットやデメリット、魅力、大変な点などを紹介します。

通関士の仕事の魅力・メリット

輸出入を行う会社にとって、通関士は欠かせない存在です。なぜなら、海外の企業と取引するにあたり、税関手続きは避けて通れない作業だからです。通関士の仕事を通してさまざまな商品に触れるうちに、貿易に関する専門知識やスキルはもちろん、商品知識も身につきます。

通関士の資格を持つ人に対して手当が支給されたり、管理職になる条件として通関士の資格取得が必要だったりする会社もあります。資格取得は、さらなる収入アップが狙えるという点でも魅力です。

通関士の仕事の大変なところ・デメリット

通関士のデメリットとして、万が一書類や手続きに間違いがあった場合、マイナス点がついてしまうことが挙げられます。マイナス点が一定まで達した会社は営業停止処分を受ける場合もあるため、慎重に仕事をしなければなりません。

また、申告する書類や審査が多いと、一人あたりの仕事量が多くなり、労働時間が長くなる可能性もあります。業務が忙しいときは、昼休みが減ったり、残業したりすることもあるでしょう。

通関士にはどんな人が向いている?

通関士の仕事が気になるものの、自分に合っているか気になる人もいるでしょう。そこで、通関士に向いている人の特徴を紹介します。

責任感と高い集中力で仕事に取り組める人

通関士の仕事は、たとえ小さなミスでも貨物の流通に影響を及ぼし、依頼主に迷惑をかけてしまうリスクを伴います。さらに、ミスが重なると税関から営業停止などのペナルティを科されてしまい、大きな損失を生むおそれがあります。そのため、責任感が強く、高い集中力を持って仕事に専念できる人が求められます。

海外情勢や国際取引などに関心がある人

通関士は輸出入に関する手続きや書類作成の代行をすることが多いため、海外情勢や国際取引に関する知識も求められます。貿易に関する規制や世界情勢は変化し続けているため、通関士は常に最新の情報を入手し、知識を広げていく努力が欠かせません。国際的な仕事に関心がある人なら、収集した情報や知識を生かして、通関士の業務にあたれるでしょう。

細かい事務作業が得意な人

通関士の業務は税率の計算や書類のチェックなど、緻密な作業が多いです。数字を一つ間違えただけでもトラブルにつながるおそれがあるため、極力入力ミスをしないよう気を配り、書類を隅々まで確認するなどの地道な作業も欠かせません。そのため、デスクワークや正確さが求められる仕事が得意な人は、通関士に向いています。

コミュニケーション能力・交渉能力のある人

通関士の仕事は依頼人や営業担当者、税関の職員など、さまざまな人と連携しながら進めていく必要があります。そのため、ある程度のコミュニケーション能力が欠かせません。人と関わることが好きな人や、営業や販売などコミュニケーション能力が求められる仕事を経験している人は、通関士として働く際も能力を生かせるでしょう。

通関士の仕事の需要や将来性は?

グローバル化が進む日本において、通関業者の数は増加傾向にあります。通関業者では1つの営業所ごとに、通関業務に係る貨物の数量・種類並びに、通関書類の数・種類・内容に応じて必要な員数の通関士を置かなければなりません。そのため、通関業者が増えるにつれ、通関士の需要が高まる傾向があるのです。

また、通関業者に限らず、輸出入を行うメーカーや商社など、さまざまな企業から通関士の求人が出されています。しかし、日本国内の通関士は需要に対して人数が少ないといわれている状況です。通関士の資格を取得していれば、就職や転職にも有利に働くでしょう。今後もグローバル化や関税の引き下げ、規制緩和により、通関士の需要は続くと予想されます。

通関士になるには「通関士」の資格取得が必須

通関士になるには、まず通関士試験を受けて、資格を取得しなければなりません。ここからは、通関士の資格取得に関する基礎知識を紹介します。

「通関士」の資格とは?

通関士になるためには、「通関士試験」の合格が必要となります。通関士とは日本で唯一の貿易に関する国家資格です。

ただし、資格を取得した直後から通関士として働けるわけではありません。試験に合格したうえで通関業者へ就職すると、通関業者から通関士として届出がされます。実務に携われるようになるのは財務大臣による確認が完了した後です。なお、通関業者や通関業務部門のある企業以外の商社やメーカーなどに勤務する場合は、通関士と名乗ることはできません。

通関士試験の概要・合格率は?

ここからは、通関士試験の概要や合格率について紹介します。


受験資格

通関士試験を受験するにあたり、受験資格は特に設けられていません。年齢や学歴、国籍などの制限はなく、誰でも受験できます。


試験の時期

試験は年に1回行われます。日程はその年により異なるものの、10月の第1日曜日が試験日に設定されることが多いです。


試験地

試験地は、北海道・新潟県・東京都・宮城県・神奈川県・静岡県・愛知県・大阪府・兵庫県・広島県・福岡県・熊本県・沖縄県の全国13カ所です。試験会場の詳しい所在地については、税関のホームページにて案内されています。


試験科目

試験科目は以下の3科目です。
1)通関業法
2)関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(同法第6章に係る部分に限る。)
3)通関書類の作成要領その他通関手続きの実務


出題形式

試験はマークシート形式で行われ、出題形式は「選択式」「択一式」「計算式」「選択式・計算式」に分かれています。上記の試験科目のうち、1)と2)は「選択式」と「択一式」のみ、3)は、上記4つの形式で出題されます。計算式の問題では電卓を使って、関税額や課税価格を計算します。


受験手数料

通関士試験を受験するには、受験手数料3,000円が必要です。受験手数料は収入印紙を願書に貼付する形式で納付するため、現金や郵便切手などで支払うことはできません。


合格率

令和5年(第57回)の受験者数は6,332人、合格者数は1,534人でした。合格率は24.2%です。

「通算5年以上」の通関業務経験で受験科目の免除がある

通算5年以上、通関業者での通関業務や官庁での特定業務の経験があれば、3科目のうち、「3)通関書類の作成要領その他通関手続の実務」が免除されます。さらに、業務経験が通算15年以上であれば、「2)関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(同法第6章に係る部分に限る。)」もあわせて免除となります。そのため、1)の通関業法に絞った試験対策が可能です。

受験者のなかには、通関業者に就職してから試験に臨む人も多くいます。

通関士は語学力が高い方がいい? どんな場面で語学力が必要になる?

通関士の仕事は貿易に関する手続きや書類作成が中心となるため、英語や中国語など語学力がある程度身についていたほうが業務はやりやすくなります。

たとえば、英語で書かれた仕入書や保険証券を確認したり、輸出入する商品の素材やサイズを調べるために英語で書かれたカタログを確認したりすることも多いです。その際、英語の知識が役立つこともあるでしょう。

ただし、語学力は実務経験を積むうちに自然と身についてきます。語学力を伸ばすことだけに気を取られていると、肝心の専門知識が一向に習得できなくいため注意しましょう。

まとめ

通関士の仕事は、通関業者のほか、さまざまな業界で高い需要が見込める仕事です。国際的な仕事に興味がある人や、転職や就職に有利な資格を取りたい人は、通関士試験を受験してみるのもいいでしょう。

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この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

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よくある質問

通関士は独学でも合格できる?

法律の知識がある人や物流・貿易関連の仕事で実務経験がある人なら、独学での合格も可能でしょう。しかし、未経験者には理解が難しい法律についての知識も必要なため、独学での合格難易度は高くなってしまいます。

通関士の合格に必要な勉強時間は?

通関士試験の合格には、400時間程度の勉強時間が必要です。300時間程度で合格する人もいますが、その場合は、すでに法律や貿易に関する知識があるケースが多いです。法律、貿易分野の勉強が初めての場合は、最低でも400時間は必要だと考えましょう。

通関士の年収は?

通関士の平均年収は540万円程度、月々の給料に換算すると約38万円です。これはあくまで平均であり、勤務先や年齢、スキルなどによって500万~1,200万円と差があります。

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国境を越えてモノのやりとりをするには、税関に申告して検査や審査を受けなければなりません。通関士は、通関手続きの代行や提出書類の作成を一手に引き受ける貿易のスペシャリストです。通関業者では原則として各営業所ごとに通関士を置く義務があるため、ニーズは安定しています。また、資格取得によって、輸出入に関連した企業、通関業を兼業している倉庫業や航空会社の貨物部門、運送・物流会社など、専門性の高い部署への就職・転職やキャリアアップにも役立ちます。通関士は貿易関係の唯一の国家資格であり、受験制限はありません。輸出入手続きを担う存在として日本経済の発展に貢献できる、将来性の高い注目の資格です。
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