• 更新日:2024/04/05

正式に手話通訳士と名乗るためには、資格を取得する必要があります。この記事では、手話通訳士に興味がある人に向けて、手話通訳士の概要や仕事内容、求められるスキルなどを解説します。手話通訳士の将来性についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 手話通訳士の仕事は、聴覚障がい者が社会参加するあらゆる場面でサポートすること。
  • 手話通訳士に求められるスキルとして、コミュニケーション力、思いやりの気持ち、傾聴力・表現力、教養・専門的な知識があげられる。
  • 手話通訳士になるには、手話通訳技能検定試験に合格する必要がある。
  • 手話通訳士は、手話通訳士は活躍の場が広がっておりニーズの高い一方で、人数が少ないため、将来性は高い。

手話通訳士とは

手話通訳士とは、聴覚障がい者のコミュニケーションを助けるための専門家です。耳の不自由な人とそうでない人の間を取り持つ役割を果たし、話している言葉を手話に訳したり、手話を言葉に訳したりします。

手話通訳をする人のことを手話通訳士と呼ぶケースもありますが、正式に手話通訳士と名乗るためには、「手話通訳技能検定試験」に合格する必要があります。そのうえで、手話通訳士として登録する必要があるため注意しましょう。

手話通訳者との違い

手話通訳士と似たような役割として、手話通訳者があります。両者の大きな違いは、試験の主催団体と難易度です。手話通訳士は、厚生労働大臣認定の社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施する、「手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)」に合格する必要があり、試験の難易度は高めです。

一方、手話通訳者は全国手話研修センターが実施する「手話通訳者全国統一試験」に合格した後、都道府県の独自審査である「手話通訳者認定試験」に受かることで、都道府県公認の手話通訳者になれます。

手話通訳士の仕事とは

手話通訳士の仕事はどのようなものなのでしょうか。ここでは、手話通訳士の仕事内容を解説します。

主な仕事内容

手話通訳士の仕事は、聴覚障がい者が社会参加するあらゆる場面でサポートすることです。たとえば、聴覚障がい者とそうでない人が1対1で話す際に手話と音声言語の通訳をする、講演会などで音声言語を手話に変えて聴覚障がい者に通訳するなどといった、さまざまなサポートを行い、コミュニケーションの手助けをします。

手話通訳士の仕事はビジネス現場だけではなく、日常生活や病院でのやり取り、銀行の契約など多岐にわたります。

活躍する場所

手話通訳士が活躍できる場所は多くあります。常勤の場合には、都道府県庁や市役所などの行政機関、社会福祉協議会や障がい者施設などの福祉関連施設などが挙げられるでしょう。また、常勤ではなく依頼があった際に非常勤として派遣されて働く人もいるようです。このように、幅広い働き方ができる職業です。

やりがい

手話通訳ができる人はあまり多くありません。そのため、手話での通訳ができる手話通訳士はニーズが高く、重宝されます。手話での通訳ができることで、聴覚に障がいがある人と手話ができない人との間をつなぐ架け橋になることができるため、心理的な満足度も高まります。人の役になっていると思えるため、大きなやりがいを感じられるでしょう。

手話通訳士に求められるスキル

手話通訳士になるためには、さまざまなスキルが求められます。ここでは、手話通訳士に必要な4つのスキルを解説します。

コミュニケーション力

手話通訳士は、さまざまな人とコミュニケーションを取る仕事です。聴覚障がい者だけでなく、年代や性別などを問わずに関わることになるため、コミュニケーション力が求められます。人が好きな人、人と接する仕事に興味がある人に向いています。

思いやりの気持ち

手話通訳士は、人と人の架け橋となる仕事のため、人を思いやる気持ちが重要です。手話通訳士はただ通訳をするのではなく、必要な情報や説明を加えながら、良好な関係を築けるようにサポートする必要があります。

傾聴力・表現力

手話通訳士は、聴覚障がい者の気持ちを読み取って、伝えたい意図をしっかりと汲み取る力が必要です。また、表現力も求められます。正確に気持ちを伝えるために、表現や言葉選び、伝え方などを工夫しなければいけません。

教養・専門的な知識

行政の窓口や医療現場、裁判所などでは専門用語が使われます。それらの言葉や情報を正確に伝えるためには、幅広い専門知識が必要です。一般常識から専門知識まで幅広い知識が求められるため、継続して学習する意欲がある人に向いています。

手話通訳士の平均年収

手話通訳士の平均年収は、雇用形態や働く地域、会社規模などによって異なるため、一概にはいえません。安定した収入を得たい場合には、地町村役場や福祉関連施設、企業などの正規職員や社員を目指すとよいでしょう。非正規職員として働く人も多い職業で、手話通訳士のみで生計を立てられるのはごくわずかだともいわれています。

手話通訳士になるには

手話通訳士になるには、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが主催している手話通訳技能検定試験に合格する必要があります。手話通訳自体は資格がなくてもスキルがあれば行えますが、裁判や政見放送などで活躍するためには資格が必須です。

受験資格はなく誰でも受験できますが、幅広い知識やスキルが求められるため、3年程度の手話通訳経験がないと合格は難しいとされています。以下では、手話通訳士になるための学習方法について解説します。

福祉系の学校に通う

手話単体で学習できる学校は少ないです。そのため、学校で学ぶ場合には福祉系の大学・短大・専門学校などに通うという方法が一般的です。介護や福祉などを専門的に学びながら、手話通訳についても学習できます。

自治体の講座で勉強する

自治体が主催している講座や勉強会で学ぶ人も多いようです。無料で受講できるため、気軽に手話を学ぶことができます。受講後は主にボランティアで活躍するケースが多いため、専門的に学びたい人だと物足りないかもしれません。

通信講座で勉強する

通信講座で手話について学ぶこともできます。通信講座は学校に通う必要がないため、時間の有効活用が可能です。映像教材を用いながら費用を抑えて学ぶことができるため、学校に通う費用がない、働きながら学びたいという場合にも安心です。

手話通訳技能認定試験の概要

「手話通訳技能認定試験」は手話通訳士試験と呼ばれることもあります。令和4年度の試験会場は、全国5か所となっており宮城・埼玉・東京・大阪・熊本で行われました。受験資格は20歳以上(令和5年3月31日までに20歳に達する)です。

試験のスケジュール

試験は年に1回行われます。令和4年度の第33回試験は、学科試験が令和4年7月24日(日)、実技試験が令和4年10月2日(日)に行われました。令和5年度のスケジュールについては令和5年1月時点では未定となっています。

試験科目

手話通訳技能認定試験は、学科試験と実技試験の2科目で実施されます。学科試験は障がい者福祉や聴覚障がい者の基礎的な知識などが出題され、四肢択一方式です。実技試験は聞取り通訳と読取り通訳が行われます。

手話通訳士の将来性

ここでは、手話通訳士のニーズや将来的な需要などについて解説します。

手話通訳士はニーズが高い

2016年に障害者差別解消法が施行されました。これにより、聴覚障がい者だけでなく障がいを抱える人が暮らしやすい社会環境を整備する動きが加速化しています。社会福祉法人聴力障害者情報文化センターによると、全国の手話通訳士の数は2022年11月現在で3,932人です。

都道府県によって手話通訳士の人数には偏りがあるため、地域によっては手話通訳士が不足しているケースもあります。このように、手話通訳士はニーズの高さに反して人数が少ないことが分かります。


新しいサービスや需要が生まれている

手話通訳士は、役場や病院だけではなく、銀行や百貨店、警察など日常生活のさまざまなシーンで求められる人材で、ニーズが高いです。また、テレビ電話や通話アプリを利用した手話通訳や、聴覚障がいを持つ医師や弁護士専属の手話通訳士なども求められており、活躍の場が広がっています。今後も新しいサービスが生まれる可能性もあり、将来性が高い資格です。

まとめ

手話通訳技能認定試験に合格し登録することで正式に手話通訳士と名乗ることができます。聴覚障がい者とそうでない人との架け橋となる仕事で、行政機関や病院、銀行などさまざまな場所で活躍でき、やりがいがある仕事です。手話通訳士のニーズは高いですが、人数はそう多くなく将来性がある職業といえるでしょう。

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生涯学習のユーキャン
この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

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よくある質問

手話技能検定の合格率は?

第51回手話技能検定(2019年)の各級の合格率は、筆記試験で6級92.4%、5級95.7%、4級86.8%、3級63.3%、準2級24.6%、準1級0.0%、実技試験で2級50.0%でした。

手話技能検定はどこで活かせる?

手話技能検定の取得はスキルの証明につながり、就職や転職でのアピールポイントとなります。病院や福祉施設、ホテルやデパートといったサービス業では手話が必要とされる場面もあるため、手話技能検定の資格が活かしやすいでしょう。

手話技能検定の効率的な勉強方法は?

手話技能検定の効果的な勉強方法として挙げられるのは、試験範囲集での学習です。また、YouTubeやDVDなどの動画なら動きの細かいニュアンスまで理解でき、手話の読み取りの練習として効果的です。

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