
不登校の子どもと親 │ 心構えやかかわり方、親自身のメンタルケアなどを紹介!
不登校になる原因・背景から、主に家庭での子どもとのかかわり方、親の心構え、また親自身の心のケアについても解説していきます。
近年、子どもの不登校についてメディアで注目されることも増えてきました。本記事では、不登校の原因について解説し、解決に向けた対応例についてもご紹介します。子どもの不登校で悩まれている親・保護者の方や、学校の教職員、教育関係者の方など、ぜひご参考になさってください。
文部科学省の定義によると、「年間30日以上出席しなかった者のうち、病気や経済的な理由を除く」子どもが不登校に当てはまります。少子化で子どもの数が減っているにもかかわらず、不登校の子どもの数は増加傾向にあり、社会的にも注目が集まっています。
文部科学省では、「年間30日以上出席しなかった児童・生徒」を「長期欠席者」とし、そのうち、「病気や経済的な理由を除き、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状況」を不登校の定義としています。
不登校はひきこもりと同じイメージを持たれることもありますが、ひきこもりは「社会参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的に6ヵ月以上にわたっておおむね家庭にとどまる」状態であるため、不登校であっても学習塾や習い事などに通っていれば、社会と交流していると考えられ、ひきこもりには該当しません。
不登校の子どもは年々、増加傾向にあります。令和5年度では、不登校の小学生が130,370人、中学生が216,112人、合計して346,482人を記録しました。
なお、高等学校における不登校生徒数は68,770人となり、調査結果上、小学生・中学生ほどの増加傾向は見られませんが、注視すべき数値です。
令和3年~令和5年までの小・中学生の不登校児童生徒数は以下の通りです。
小学校 | 中学校 | 合計 | |
---|---|---|---|
令和5年 | 130,370人 | 216,112人 | 346,482人 |
令和4年 | 105,112人 | 193,936人 | 299,048人 |
令和3年 | 81,498人 | 163,442人 | 244,940人 |
不登校の原因として、まず、学校での出来事や環境について挙げられます。具体的には、いじめ、先生との関係、学業不振、そして学級環境などが例としてあります。それぞれどういった対応ができるかも考えてみましょう。
いじめは、被害を受けた子どもが「いじめられた」と周囲の大人に訴えれば認知されます。令和5年度の文部科学省調査によると、小・中学生の不登校の背景として、「いじめの被害の情報や相談があった」割合は1.3%と低い傾向にありますが、決して軽視は出来ません。
子どもは、言葉の使い方や見た目など、些細なところでの「違い」から、話題を膨らませてふざけてしまうことがあります。そして、いつの間にか、いじり・じゃれあい➡からかい➡いじめと大きな問題へエスカレートし、不登校の原因にもなりえます。
いじめは大人の目の届かない、そして気づかないところで起きることを常に念頭に置き、子どもの表情や言動に普段と違うところがないかを日頃から見るようにし、早期にその変化に気づいて、予防することが非常に大切です。
令和5年度の小・中学生の不登校児童生徒について把握した事実(情報や相談があった件数)は次の通りです。
小学校 | 中学校 | 合計 | |
---|---|---|---|
いじめの被害 | 2,350 | 2,113 | 4,463 |
いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題 | 14,951 | 31,021 | 45,972 |
教職員との関係をめぐる問題 | 5,735 | 4,548 | 10,283 |
学業の不振や頻繁な宿題の未提出 | 19,124 | 33,423 | 52,547 |
学校のきまり等に関する相談 | 2,622 | 4,223 | 6,845 |
転編入学、進級時の不適応 | 4,288 | 9,693 | 13,981 |
家庭生活の変化 | 12,130 | 12,822 | 24,952 |
親子の関わり方に関する問題 | 22,116 | 20,854 | 42,970 |
生活リズムの不調 | 31,937 | 47,701 | 79,638 |
あそび、非行 | 2,992 | 8,630 | 11,622 |
学校生活に対してやる気が出ない等 | 42,014 | 69,617 | 111,631 |
不安・抑うつ | 29,549 | 50,643 | 80,192 |
障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援の求めや相談 | 11,454 | 12,676 | 24,130 |
個別の配慮(障害(疑い含む)以外)についての求めや相談 | 11,096 | 11,871 | 22,967 |
担任や部活動の顧問といった先生との関係から不登校に結びつくことがあります。学校教育法で体罰は禁止されていますが、子どもに指導する際の先生の言葉遣いや身振り手振り、そして他の子どもとの比較で、子どもの心が傷つき、先生への不安や恐怖が増大してしまうケースもあります。
進学や進級の時に保護者や教職員が確実に引継ぎし、性格(長所と短所)や関わる際に留意する言動について、申し送りすることが重要です。トラブルが起きた場合は、保護者と教職員で至急集まり、第三者の支援も含めて検討することが必要です。
学習に自信がない、学習成績が思わしくない、保護者等からの期待が重荷になっているなど、学習への不安を抱き、勉強に手がつかず、学校に行くのが怖くなる子どもは多数います。子どもは親の期待に何とか応えよう、先生に注意されないようにしようと思い、頑張り過ぎて、無気力になったり、心身の不調を訴えたりする場合があります。
まずは子どもの気持ちを確認しながら、子どもが出来るレベルの目標で無理なく勉強する環境づくりが求められます。
明確な教育方針による競争意識の強い雰囲気が合わず、授業等で他の子どもとスピード感が違ったり、細かい規則で窮屈な気持ちになったりして、集団不適応を起こすことがあります。様々な価値観や考え方を学び成長を促すことも大切ですが、学校は子どもの人格形成の土台づくりとなる場です。
大人は、子どもの特徴を理解し、子どもにとって安心して過ごせる場、成功体験を積み重ねていける場はどのようなところかという視点で、考えていくことも重要です。
不登校の原因として、次に、個人の性格や特性も挙げられます。中には障害や病気が隠れているケースもあるでしょう。子どもの心のケアを行いつつ、必要な支援や医療的なケアにつなげられるようにします。
些細なことでも不安を感じたりストレスを抱いたりする子がいます。気づきにくいですが、その不安やストレスは心の奥底で膨らんでいきます。対人不安だと、人からどう思われるか、どう見られるかを気にして人と会いたくなかったり、逆に嫌われないように過剰に気を遣って疲れ切ったりすることもあります。
また、“心のガス欠”を起こし、「やる気がない」無気力状態になると長期化が懸念されますので、早期から子どもに声掛けをして不安やストレスなどについて吐き出す場を作ることが大切となります。
引っ込み思案、神経質、消極的、心配性、劣等感を抱きやすいなどの内向的な性格によって集団に馴染めない子や、先生や友達と上手く話せないことが生じて、クラスで居心地が悪くなり、登校を渋る子もいます。性格には様々な背景があり、性格そのものを変える必要はありません。
まずは周囲が子ども自身の良い部分を褒める、認める、気づくことを通じて、どのようなことでも良いので、少しずつ自信を身に付けられるよう配慮すると良いでしょう。
自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、発達性協調運動症等の発達障害や読む・書く・話す・聞く・計算する・推論する等の限局性学習症で学校生活への適応が困難になることがあります。コミュニケーションの難しさ、こだわりの強さ、感覚過敏、落ち着きの無さ、不注意等で集団活動や対人関係で問題が起きたり、何らかの学習障害で学習の遅れや躓きが生じたりします。
保護者や教職員らで子どもの特徴を共通理解し、合理的配慮に基づいた支援を行うことが大切です。
様々な原因から気分が落ち込み、意欲減退、イライラ、悲観的な思考、希死念慮などの抑うつ症状が生じ、動きが鈍くなる・身体症状が出るなどの精神疾患が原因となって、登校が難しくなったり生活リズムが乱れたりします。
心身症は、起立性調節障害や過敏性腸症候群のように、心理社会的なストレスが身体や器官に大きく影響を与えている疾患です。
いずれも子どもの心身の不調のサインを見逃さず、早期に受診や心のケアを行うことが大切です。
不登校の原因として、さらに、社会的要因によるものも挙げられます。インターネットが普及し、SNSやゲームへの依存が問題となることも増えてきました。
また、多様性が受け入れられつつある時代の中で、これまでの教育の形におさまらない子どもも増えてきています。
インターネットの急速な普及と、スマホなど多様な情報端末が子どもの手に渡り、今やオンラインゲームやSNS、動画配信・視聴等がいつでもどこでも行える環境があります。子どもは多くの情報を収集する一方、現実の人間関係よりも気楽で思い通りにしやすい仮想空間の関係にはまり、睡眠や生活リズムの乱れや対人関係のトラブルに発展しやすくなり、不登校に繋がることも少なくありません。
スマホなどの情報端末やSNSの利用制限、ルール設定等の予防、そして現実の人間関係をより多くする工夫が求められます。
子ども一人でどこからでもスマホなどの情報端末を通じて情報収集出来る時代の中で、自身で学習したり多くの知識やスキルを身に付けたりしたい子もいれば、縛りのない自由な生活を求める感覚のある子もいるでしょう。彼らにとっては、従来の教育理念や学校規則の縛りに抵抗感を抱き、登校に結びつかない場合があります。
保護者は、その子に見合った柔軟な学びや活動、他者との交流について子どもの気持ちを聴き取りながら一緒に考えることが必要です。
不登校の原因として、他にも、家庭環境が挙げられます。例えば、以下のようなものが考えられます。原因によっては家庭だけでの解決が難しく、福祉的な機関の支援が必要になる場合もあります。
子どもは不登校になる兆候として、言語的にも非言語的にもSOSを出しています。実際に子どもが不登校になってしまったときの対応としては、学校側、そして社会的な支援体制からのサポートがあります。
不登校の兆候を見つける際、「予兆期」「発現期」「停滞期」「回復期」の4つの段階に分けて考えると分かりやすいです。それぞれの段階で、子どもは個々に言語的にも非言語的にもSOSを出しています。「学校に行きたくない」と言ったり、普段よりのんびりして行こうとしなかったり、頭痛や腹痛、表情が暗い、会話量が少ないなどの変化を見せます。
親・保護者は「とにかく行かせよう」と思いがちですが、まずは子どもの様子や言動の変化に注目しましょう。
学校での対策には、まず担任のかかわりや学校環境の工夫があります。次に、担任以外の教職員やスクールカウンセラーとの協力・連携が出来ます。そして、子ども一人ひとりに見合った登校プランを一緒に考えていき、子どもや保護者を支援していきます。
登校が難しかったり、クラスには入れなかったりする場合には、子どもの要望に合わせて、校内の居場所や個室(別室、保健室、相談室、学習教室等)を用いた教室外登校や、担任が対応可能な時間帯や放課後の登校、家庭訪問等を検討します。
そして、子どもや保護者とよく話をして、必要ならば外部の相談機関も含めて情報を提供していきます。
担任だけではなく、学年や養護教諭、特別支援コーディネーター、その他の教職員が、子どもが安心して登校出来る体制づくりに協力していきます。また、子どもと保護者は、校内にいるスクールカウンセラーに悩みや困り感を相談出来ます。
そして、子どもの心や発達の専門的な意見を得ながら、子どもへの支援を考えていきます。
子ども一人ひとり気持ちやペースは異なります。子どもが参加しやすい好きな授業や行事への参加、まずは1時間でも居場所や別室で過ごして校内に慣れることのほか、担任に会ったり校門にタッチして帰ったりする等、子どもがチャレンジしやすく、成功体験を得られやすい柔軟な登校プランや工夫を一緒に考えていけると良いでしょう。
学校のみでの対応が難しい、または何かしらの子どもの事情がある場合には、専門の機関へ相談するのも有効な方法です。学校外からの支援として、行政・公的機関によるものや、民間の団体・企業によるもの等があります。
行政や、公的機関などが無料で相談できる窓口を設置しているところもあります。教育支援センター(適応指導教室)では、子どもが在籍している学校と連携しながら、基本的には学校への復学支援を行っており、不登校の相談をすることもできます。学校や家庭に関する悩みを相談できる教育相談センター(教育センター)や、子どもと家庭に関する全般にわたって相談支援を行うこども家庭センター、心の健康や病気に関する相談ができる精神保健福祉センターなどもあります。
近年では、民間の団体・企業によるカウンセリングサービスも多く存在しています。また、不登校の子どもを持つ親が集まる「親の会」も各地にあります。同じような悩みを持つ親同士が集まるため、リアルな情報が交換できたり、知人には打ち明けにくい本音を話すことができたりもします。
学習面のサポートでは、不登校の子どもを対象にした塾や家庭教師のサービスを提供している企業もあります。近年では、「子ども食堂」を運営している団体でも学習支援を行っているところがあります。
地域によって差がありますが、こうした支援・サポートを利用する方法もあるでしょう。
ここまで、不登校の原因や、兆候、その対応などについて解説してきました。どういったサポートが求められるかは、子ども一人ひとりで異なりますが、さまざまな原因や対応方法を知ることで、視野や選択肢が広がるでしょう。
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公認心理師・臨床心理士・社会福祉士・精神保健福祉士
小・中・高校のスクールカウンセラー、自治体の適応指導教室相談員など、教育現場でも活躍
医療・福祉現場での経験も豊富
【専門分野】
・学校の問題(不登校・いじめ・非行・特別支援)
・不登校生徒の進路支援
・親子のコミュニケーション問題
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小学校・中学校では不登校者数が2013年から2022年までの10年間で倍以上になるなど、不登校の児童・生徒数は増加傾向にあります。一方で、不登校の子どもや親・保護者への十分な支援が足りていないケースも少なくありません。このため、ご家庭や教育関連の現場で活かせる知識やサポート方法を学ぶことが求められています。
「不登校・ひきこもり支援アドバイザー」は、子どもの不登校・ひきこもりに関する基本的な知識を習得できる資格です。子どもの対象年齢は小学生から高校生まで。解決のきっかけになるサポート方法への理解を深め、子どもの将来への展望を立てるのに役立てることができます。