離職率とは?計算方法や業界の平均、離職率が低い企業の特徴を徹底解説

  • 離職率とは?計算方法や業界の平均、離職率が低い企業の特徴を徹底解説

    公開日:2024.08.26

    更新日:2024.08.26

    離職率とは企業の社員数に対して、一定期間内にどれだけの社員が離職したかを示す割合のことです。離職率の計算方法はいくつかあり、目的に応じて計算方法も違うため、正しくデータを読み取ることが大切です。この記事では離職率についての概要と計算方法、正しい読み取り方、離職率が高い企業と低い企業の特徴と原因などを解説します。

離職率とは

離職率とは企業の在籍人数を母数として、一定の期間内に退職した人の割合を示したものです。期間は企業によってもさまざまですが、厚生労働省では入社から3年以内としていることが多いです。またハローワークの求人票に記載される離職率も、入社後3年以内のものを掲載しています。離職率は社員がどれだけ会社に定着できているかというエンゲージメントに関連するものであり、高くなるほどブラック企業の可能性も高くなります。

厚生労働省による離職率の定義

離職率について、厚生労働省は「常用労働者に対する離職者数の割合」と定義しています。常用労働者とは次の2点のうち、どちらかに該当する労働者のことです。

・期間を定めずに雇われている者
・1か月以上の期間を定めて雇われている者

つまり、雇用形態にかかわらず、雇用期間を定めず雇用されている労働者のことを指しています。期間を定めて働く臨時職員やパートタイム職員以外は、すべて常用労働者として扱われます。※次の理由でこちらの文章を書き替えました。→1「パートタイム」が含まれると誤解を生む、2.役員等は含まれないので「すべて」は誤解を生む、3.「職員」は官公庁ではたらく人にのみ使われることが一般的

離職率の計算方法

厚生労働省の定義では、離職率は次の計算式で割り出します。

・離職者数÷1月1日現在の常用労働者数(年齢階級別は6月末日現在の常用労働者)×100=離職率

ただし、集計期間内に入社した常用労働者は含まれない点に注意しましょう。
実際の離職率より低く出ることもあるため、いつ集計した結果なのか、現在はどうなっているかもチェックすることが重要です。

※実際の離職率を知るにはどうしたらよいのか提示しないで提言するのは難しいと感じるので、この文章はカットしたほうが良いかと思います。

離職率と定着率の違いと関係性

離職率は会社を去った人の割合で、定着率はどのくらいの人が会社で働き続けているかを示す割合です。一般的に「離職率が低い=定着率が高い」とも言い換えられ、離職率の対義語として用いられる言葉です。ただし、定着率については離職率のように明確な定義はありません。その代わり「入社〇年後の定着率〇%」「3か月以上の継続雇用の割合」など、会社独自の定義で表現することがあります。定着率については当該年度の入社人数から離職率を算出し、100%から離職率を引いたものを定着率とすることが多いです。そのため、離職率。がわかれば定着率も自然と把握でき、企業の動向を判断する際の指標にもなります新卒採用や中途採用において、定着率は重要な情報です。離職率と合わせて表示しておくことで、会社への理解を深めてもらうきっかけになるでしょう。

離職率における753現象の意味

離職率において「753現象」は重要な社会問題になっています753とは、それぞれ就職から3年以内の学歴別の離職率を表しています。中学卒業者は7割、高校卒業者は5割、大学卒業者は3割です。厚生労働省が発表した令和2年3月卒業者の離職状況でも、753現象に近い結果が出ています。 つまり企業の動向をチェックする際は、753現象を基準に定着しやすい企業かどうかを判断するのがよいでしょう。

参考:厚生労働省 「新規学卒者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」

新卒の3年以内の離職率が高い理由

日本では、新卒3年以内の若手の離職率が高いことがわかっています。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、初職を退職した理由は次のとおりです。

離職理由 

回答の割合 

労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった 

29.2 

人間関係がよくなかった 

22.7 

仕事が自分に合わない 

21.8 

賃金の条件がよくなかった 

18.4 

ノルマや責任が重すぎた 

15.8 


※「初職が正社員であった人の離職理由」複数回答方式
この結果からわかるとおり、新卒社員はワークライフバランスや会社の雰囲気を重視することが多く、責任感のある仕事は避ける傾向があります。 また仕事内容と賃金条件も上位に入っており、仕事に対してやりがいを感じていないことも離職の原因になっているといえるでしょう。

参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構  資料シリーズNo.171(2016年5月)若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状:『平成25年若年者雇用実態調査』より「第6章 早期離職とその後の就業状況」P148

職場の離職率・定着率を割り出す方法

職場の離職率・定着率を割り出すには、どの数字を正確に計算するかが重要になります。1年間の離職率を計算する方法は次の通りです。

・期末までの離職者数÷期初の社員総数×100

上記の方法では、1年間の社員数の減少から年間の離職率を計算できます。次に、新卒社員が3年間でどれだけ離職したかを計算する方法です。

・新卒社員のうち3年以内の離職者数÷入社日の新卒社員数×100

こちらの方法では新卒入社から3年以内の社員に限定し、離職率がどのくらいになるか把握できます。さらに新卒社員が1年以内にどのくらい離職したか計算する方法です。

・新卒社員の1年間の離職者数÷入社日の新卒社員数×100

この方法ではその年に入社した新卒社員のみに限定し、新卒社員の離職率を把握できます。一般的に用いられているのは上記3つの計算方法であり、離職率を計算すれば定着率も把握できます。企業のエンゲージメントを測定するうえでも重要な計算方法ですから、人事担当の方は数字の意味を正しく理解しましょう。

離職率の正しい読み取り方

離職率が高い、低いといった情報を正しく読み取るには、一定の基準を身につけておく必要があります。どのようなポイントを意識すべきなのか、2つのポイントを紹介します。

絶対的な基準はない

離職率をチェックする場合、業種によって10%や20%など全体の平均が示されています。その基準を基に、離職率が高い・低いといった判断をする方が多いです。しかし離職率はあくまで全体の平均であって、適正な割合とは限りません。離職率は、会社の規模によっても変わってくるからです。同じ業種であっても企業努力や人材育成に力を入れ、離職率が低い会社もあります。そのため離職率を読み取る際は、業界全体の平均に比べて高いか低いかだけでなく、企業規模や離職者の年齢層、性別、国籍なども確認する必要があります。離職率だけで判断するのではなく、その背景にある情報を知ることで会社の真実が見えてきます。

離職率の低さだけを意識しない

一般的に「離職率は低いほうが良い」と考える人が多いです。離職率が低い企業はホワイト企業、逆に離職率が高ければブラック企業という傾向があるとされています。注意すべきなのは、離職率が低くてもホワイト企業とは限らない点です。極端な話ですが、退職した人が優秀な人材ばかりだった場合、離職率がどれほど低くても会社の経営には大きな打撃になります。優秀な人材が去った後の企業では、会社の生産性が低下し、人材育成も滞るおそれがあります。そのため離職率の数字だけを信用するのではなく、どんな人材が離職し、会社に残っているのはどんな人材なのか把握することが重要です。企業の評判や内部情報などを調べ、なぜその離職率になっているかを把握しましょう。

離職率が高い企業の特徴と原因

企業の離職率は企業の持つ特徴や風土、慣習などさまざまな要因が影響します。一般的には社員にとって働きにくい環境ほど、離職率も上がります。離職率の高い企業の特徴や原因は次のとおりです。

・給与が少ない・ボーナスがない
・休日が少ない・有給を取得しづらい
・拘束時間が長く休日出勤がある
・評価が公平でない
・風通しがよくない
・パワーハラスメントなどがある
・働き方が柔軟でない
・業績が良くない・業界が衰退している

給与が少ない・ボーナスがない

充実した生活を送るためには仕事に見合った給与が欲しいものです。仕事と生活を続けるには、給与やボーナスがなければなりません。※書き換えました。→生活のため以外の理由で仕事をしている人はいるので「なければなりません」は強すぎる言い方に感じる。しかし離職率の高い企業は仕事の内容や労力に対し、給与やボーナスが少ないという特徴があります。どれほど働いても給料が安ければ、仕事へのやりがいもなくなり、離職へとつながります。またボーナスで好きなものを購入したり、旅行を楽しんだり、ローンを返済したりしたい人もいるでしょう。ボーナスが少ない、または支給されないなら、別の会社に転職しようかと迷う人も現れます。社員にとって給与やボーナスの少ない会社は、働き続けるメリットの少ない会社といえるでしょう。

休日が少ない・有休を取得しづらい

近年はワークライフバランスが意識されるようになり、休日や有給の日数が仕事へのモチベーションにも関係するようになっています。企業の中には法定労働時間を超える業務があるところもあり、働いても十分に休めない環境というケースも珍しくありません。
そうした環境では、社員は心身に不調をきたしやすく、会社への不満も高まっていきます。
労働時間と休暇をしっかり分けていない会社では、離職率も高くなる傾向があります。

拘束時間が長く休日出勤がある

業務の拘束時間が長い、残業が多い、休日出勤があるという会社も、離職率が高い傾向があります。社員の健康や生活を守るためには残業や拘束時間を減らす必要がありますが、36協定の労働時間を超えている会社も存在します。そういった会社の経営者の中には「割増賃金を払っているから問題ない」と考える人がいるかもしれません。しかし社員の中にはお金以上に健康や家族との時間、ワークライフバランスを重視する人もいます。そうした社員にとって、長い労働時間は離職の原因になりえます。

評価が公平でない

会社の人事評価制度は、給与や人事に関係する重要な仕組みであり、社員にとって公平公正である必要があります。しかし人事評価制度に客観性・公平性がなく、上司の主観や感情が評価に影響するケースも少なくありません。同じように働いていても平等な評価を受けられないなら、社員に不公平感を与えてしまいます。不平等だと感じれば、優秀な社員ほど早々に離職していくでしょう。

風通しがよくない

会社の人間関係や風土、環境の風通しが悪ければ、離職率も上昇します。風通しの悪い職場は社員のコミュニケーションが少なく、生産性も悪くなります。社員同士の連携がうまくいかず、ミスも多くなるため、社員のストレスや疲れも出やすくなるでしょう。
企業の経営方針と上司のマネジメントスキル次第で、風通しがよくなる可能性はあります。離職率を抑えるためにも、人間関係や雰囲気の悪さは改善すべきです。

パワーハラスメントなどがある


ハラスメントとは、嫌がらせやいじめのことです。パワーハラスメントを含め、ハラスメント行為の多い職場では離職率も高くなります。上司によるパワーハラスメントだけでなく、モラハラやセクハラ、マタハラなどハラスメント行為全体を是正しなければなりません。ハラスメント行為は受けた本人だけでなく、周囲の人間や人間関係にも悪影響を与えます。離職率を改善するには、ハラスメント行為の有無を正しく把握することが大切です。

働き方が柔軟でない


業種・業界にもよりますが、働き方の柔軟性も離職率に関係します。近年はリモートワークやフレックスタイムを導入した会社も増えており、さまざまな働き方が受け入れられています。自由な働き方をしたい社員にとって、固定化された働き方は不満の原因になるでしょう。リモートワークできる部分は積極的に推進することで、社員のエンゲージメントも高まります。

業績が良くない・業界が衰退している


時代の変化とともに業界全体が衰退し、業績が良くない企業も離職が多くなる傾向があります。現代の状況に照らし合わせると、AIの活用が進んでいることで、単純労働やデータ分析、ライターなどオートメーション化できる仕事も増えてきています。このような仕事は人に頼らなくても運営できるようになり、労働者にとって今後衰退化していく業種・業界の一例といえるでしょう。IT化やDX、AIの登場でオートメーション化できる仕事が増え、人に頼らなくても運営できる業種も増えています。生成AIの登場によって編集者やライターが減少しつつある出版業界は、その代表的な例といえるでしょう。

離職率が高い業界・低い業界

大学卒業後に就職した人を対象として、就職後3年以内の離職率が高い業界・低い業界をみていきましょう。

離職率が高い業界・企業

順位・業界 

離職率 

1位:宿泊業、飲食サービス業 

51.4 

2位:生活関連サービス業、娯楽業 

48.0 

3位:教育、学習支援業 

46.0 

4位:医療、福祉 

38.8 

5位:小売業 

38.5 


最も高いのが「宿泊業、飲食サービス業」の51.4%、次いで「生活関連サービス業、娯楽業」の48.0%、3位に「教育、学習支援業」の46.0%となっています。 


離職率が低い業界・企業

どの業界でも離職者は出ていますが、離職者が少ない業界・企業も世の中にはたくさんあります。
国内の業界・企業で離職率の低いものをみていきましょう。

順位・業界 

離職率 

1位:電気・ガス・熱供給・水道業 

10.5 

2位:鉱業、採石業、砂利採取業 

13.5 

3位:製造業 

19.0 

4位:金融業、保険業 

26.3 

5位:情報通信業 

27.9 


上位にはエネルギーに関連する業界や製造業などが入りました。

また5位には情報通信業が入っており、業界別の離職率では先ほどの企業別の離職率とは違った結果になっています。

離職率が低い要因としては、次の点が考えられます。

・裁量労働制の導入 

・教育、啓発支援への注力 

・在宅勤務制度の導入 

・事業所内保育所の設置 


社員の福利厚生や働きやすさを重視した仕組みづくりによって、離職率を大幅に抑制しています。


国内企業の離職率は今後どうなるのか

国内企業の離職率については、わずかに減少していくことが考えられます。その理由として、国内企業の離職率についての結果を遡ってみると次のようになります。

年度(3月卒業) 

高卒の3年以内離職率% 

大卒の3年以内離職率% 

令和2 

37.0 

32.3 

平成31 

35.9 

31.5 

平成30 

36.9 

31.2 

平成29 

39.5 

32.8 

平成28 

39.2 

32.0 


参考・引用:厚生労働省 「新規学卒就職者の離職状況」平成28年~令和2年
・平成28年 ・平成29年 ・平成30年 ・平成31年 ・令和2年


離職率の低下に成功した事例

国内企業で離職防止対策を進め、離職率低下に成功した事例を3社紹介します。

大手不動産会社A

アパートやリゾートで有名なA社では、長時間労働によるワークライフバランスの課題を抱えていました。2020年には離職率13%、2022年には16%まで離職率が上昇したため、離職防止対策を急務として推進しました。もともと、不動産業界の離職率は他の業界に比べて高いことがわかっています。A社もその点を理解したうえで、離職率の低下の取り組みとして、具体的には次のような改革に着手しました。
・労働時間の是正
・人事評価制度の見直し
・研修制度の充実

まず労働時間の是正として、労働による生産性の意識を社員に根付かせるために「労働時間≠評価」という情報発信を行いました。加えて計画年休やリフレッシュ休暇といった制度を作り、仕事と休みのバランスを組織全体に意識させるよう働きかけました。
次に、人事評価制度の見直しです。人事評価は人事異動にも関係することから、人事部が現場を含む各部門・全社員へのヒアリングを行う制度を作りました。
最後に研修制度です。一般社員から管理職まで、各階層や部門に合わせた研修を用意しました。複数の施策を推進した結果、レオパレス21の離職率は9%程度まで低下しました。

ソフトウェア開発会社B

グループウェアを含むソフトウェア開発を行うB社では、かつて28%という高い離職率に悩まされていました。B社はもともと長時間労働があたりまえになっており、社員にとって過酷な労働環境でした。 その結果、売上は伸び悩み、離職率も28%という高さまで悪化していました。そこで働き方改革の一環として、次の施策を打ち出します。
・6年間の育休取得制度
・選択型人事制度への移行
・ハイブリッドワークの導入

まず人材確保の観点から、妊娠・出産による退職を防ぐために育休制度の充実を図りました。次に選択型人事制度の導入により、100人100通りの働き方に組織全体で取り組みました。

2010年にはオフィスとテレワークで働き方を選択できるハイブリッドワークの前身として、テレワークもいち早く導入しています。テレワークは導入当初、成果の判断の難しさや情報漏洩のリスク、モラル低下などの理由で社員からの反発もありました。そこで目的や前提条件を細かく設定したうえで、テレワーク導入について社内での理解を促しました。現在では社員それぞれが働き方を宣言するハイブリッドワークに進化し、社内全体で受け入れられています。2020年には離職率は3%台まで低下しており、非常に効果的な施策となった事例といえるでしょう。

大手居酒屋チェーンC

居酒屋チェーン展開するC社では、入社半年以内の離職が経営課題でした。新卒で採用しても次々に退職する人が相次ぎ、社員へのフォローが重要と考えるようになりました。社員の離職を防止するために、鳥貴族が行った対策は次の通りです。

・無断残業と休日出勤の禁止
・面接官による店舗訪問
・見極め採用の導入

飲食店業界で離職が多い背景には、営業終了後の後片付けを含む長時間労働があります。鳥貴族では長時間労働を是正するために、無断残業と休日出勤を禁止し、発生した場合には理由の報告と対策の実行を行うことになっています。また新入社員の早期離職防止の対策として、採用担当者の店舗訪問も取り入れました。ただし店舗訪問では採用担当者の主観が入りやすいため、客観性とエビデンスを持たせるためにツールも導入しています。単に店舗を訪問するだけでなく、的確なフォローアップを行うことで、離職率低下につながりました。最後に採用する人を厳密に審査する「見極め採用」の導入です。誰でも採用するのではなく、入社後に活躍できる人材だけを採用する仕組みです。 こうした施策の結果、入社半年以内の離職率は15%から7%まで減少させることに成功しました。




まとめ

離職率について、計算方法や読み取り方、離職率の高い業界・低い業界などを解説しました。企業にも採用志望者にとっても、離職率が低いに越したことはありません。しかし離職率は目安の1つであり、企業のすべてがわかるデータではない点に注意すべきです。業界や業種によっても離職率は変動するため、実際に自分の目で会社を見て、情報を調べることが大切です。企業の人事担当者の方は企業イメージをアップする意味でも、離職防止対策を進めましょう。
社員が働きやすい環境と制度・雰囲気を作ることで、離職率を下げることは十分にできるのです。

お気軽にお問合わせください

ページトップに戻る