従業員のモチベーションを向上させるべき理由
従業員のモチベーションを向上させることは、なぜ企業にとって重要なのでしょうか。3つの理由を解説します。
生産性向上が期待できるから
従業員のモチベーションは仕事への積極性に結びついており、パフォーマンスにも大きな影響を与えます。従業員のモチベーションを高められれば、作業効率が高まり、生産性アップにつながります。
例えばPCで伝票を入力する事務作業も、集中して取り組んでいるか否かで作業効率は大きく変わるはずです。従業員のモチベーションは組織の生産性に関わるため、常に高い状態を維持してもらう必要があります。
信頼関係を築けるから
従業員のモチベーションの高さは、仕事の質にも影響します。 仕事に対する熱意が製品製造やサービスにも活かされ、企業イメージを高める結果になるでしょう。逆にモチベーションの低い社員がいれば、顧客の信頼を損ね、企業イメージを低下させるおそれがあります。企業のブランディングと顧客との信頼関係構築という観点からも、従業員のモチベーションは重要です。
離職率の低下に貢献するから
モチベーションが低下すると起こりやすい問題の1つが、離職率の悪化です。従業員が職場や仕事に不満を持つようになり、転職を考え始める可能性があります。離職率が高い職場の多くは、社員が会社に対して不安や悩みを抱えており、モチベーションの低下を招いています。従業員が高くモチベーションを維持できる状況とは、優秀な人材が定着したり、組織の生産性を高めたりするといった成果が期待できる重要ポイントです。
従業員のモチベーションが下がる原因
モチベーションの重要性がわかったところで、従業員のモチベーションを低下させる原因についてもみていきまょう。
待遇面での不満
従業員のモチベーションを下げる原因として多いものが、給与や福利厚生などの待遇面での不満です。従業員が働く目的や動機は、会社のためだけではなく、自分や家族の生活と幸せのためでもあります。待遇面での不満があると「会社から大切にされていない」と感じ、モチベーションを下げる原因になるでしょう。その結果、より条件の良い会社を探して転職したり、無理をして心身の不調につながったりするおそれがあります。会社側は従業員が「ここで働き続けたい」と思える待遇を用意し、意欲を持って働き続けられる環境を用意しなければなりません。
人間関係の不満
従業員のモチベーションを下げる原因は、人間関係にもあります。よくあるケースが、上司との関係性や同僚からの嫌がらせです。人間関係が悪化すると「ここで働きたくない」と感じるようになり、モチベーションが著しく低下します。職場での孤独感はメンタルヘルスにも悪影響を与え、最悪の場合は休職や離職につながります。悩みを打ち明けられる上司や同僚がいない場合、ますますモチベーション低下に拍車がかかるという悪循環に陥る点も問題です。従業員の人間関係に問題がないか、上司のマネジメントスキルも含めて、企業側からの支援が必要になります。
仕事内容への不満
従業員が仕事内容そのものに不満を抱えており、モチベーションが下がってしまうこともあります。典型的な例は次のようなものです。
・適性に合わない仕事をやらされている
・能力に見合わない仕事をさせられている
・過剰なノルマを課されている
・スキルとのミスマッチを起こしている
このようなケースに当てはまると、従業員のモチベーションは著しく低下します。また仕事に対しても正当な評価を受けにくくなり、さらにモチベーション低下を引き起こす可能性があります。従業員の能力や適性から、資格・スキルまで加味して仕事を任せるべきです。
将来への不安
従業員が自分の将来に不安を抱いていたり、会社の業績や経営に不信感を持ったりしている場合も、モチベーション低下を招くことがあります。具体的には次のようなケースに当てはまると、将来への不安がモチベーションに悪影響を及ぼすおそれがあります。
・自身のキャリアアップが期待できない
・組織のキャリアパスがわかりにくい
・何年も昇給していない
・会社の業績が伸び悩んでいる
・社員の意見が経営に反映されていない
上記のポイントに当てはまる場合は、社員が将来に対して不安を持つ可能性があるため、フォローアップしていくことが大切です。
従業員のモチベーションを向上させるポイント
従業員のモチベーションを向上させるために、企業側が意識すべきポイントを3点紹介します。
従業員の欲求を満たす
従業員のモチベーションを向上させるには、心理学の理論に基づいて欲求を満たすことがポイントになります。ここでの心理学の理論とは、主に次の2つです。
・マクレランドの欲求理論
・マズローの欲求5段階説
マクレランドの欲求理論では、4つの欲求がモチベーションに結びついているとしています。
・達成欲求:目標を達成することへの欲求
・権力欲求:他者に対して影響力を持ちたい欲求
・親和欲求:他者と友好関係を築きたい欲求
・回避欲求:困難や失敗を回避したいと考える欲求
次にマズローの欲求5段階説は、低次から高次へと欲求を5段階に分類しています。
・生理的欲求(第1階層):食事・睡眠などの人間の本能的な欲求
・安全欲求(第2階層):心身の安寧、社会的な安定を求める欲求
・社会的欲求(第3階層):社会から受け入れられたい欲求
・尊厳欲求(第4階層):尊敬されたい・承認されたい欲求
・自己実現欲求(第5階層):目標に向けて成長・努力する欲求
モチベーションが低下した従業員がいる場合、マクレランドの欲求理論またはマズローの欲求5段階説において、低次の欲求が満たされていない可能性があります。従業員がどの段階にあるのか、どのような欲求がモチベーション低下を招いているかを把握し、個別の対応を行っていくことが重要です。
外発的・内発的動機付けを促す
従業員のモチベーションには外発的動機付けと、内発的動機付けの2種類があるとされています。外発的動機付けは自身の外にある要因によって、モチベーションを高めることです。例えば「給料アップ」「昇格」「難しい仕事を任される」など、他者からの評価がモチベーションに影響することを指します。一方の内発的動機付けは、自身の内面の要因がモチベーションに関係することです。
例えば「仕事にやりがいがある」「もっと成長したい」「頼られる人間になりたい」など、自分の心理が大きく影響します。モチベーションに外発的・内発的要因があるということは、会社が待遇改善や報酬アップ、キャリアアップを支援するだけでは、不十分な可能性があるということです。従業員が仕事を楽しみ、やりがいをもって働けるように環境整備をしなければなりません。 外発的動機付けと内発的動機付けを車の両輪と捉え、どちらも充足できるようにサポートする体制整備が重要です。
キャリアパスを明示する
従業員のモチベーションを高めるには、会社で働くことで将来どんなキャリアが開けるかを理解してもらうことも重要です。従業員が働き続けるためには、将来のビジョンが明確になっていなければ、モチベーションを維持するのは難しいからです。会社がキャリアパスを明示することで、従業員は自由にキャリア開発を進め、自分の将来を選べるようになります。単なるキャリアアップだけでなく、結婚・出産・介護などのライフイベントも考慮したキャリアパスが必要です。従業員が自らキャリアを選べるようになれば、スキルアップへの積極性も高まるでしょう。従業員一人ひとりのライフプランに合わせて、さまざまなキャリアパスを明示することでモチベーションアップにつながります。
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従業員のモチベーション向上に効果的な施策7つ
従業員のモチベーション向上につなげるために、企業が打てる効果的な施策を7つ紹介します。
ワークライフバランスを意識した職場環境を作る
従業員のモチベーションを高めるには、働きやすい職場環境が欠かせません。働きやすい職場環境とは職場のレイアウトや業務内容、人間関係などの条件だけではありません。質の高い仕事をするには充実した休日も必要であり、ワークライフバランスが重要です。そのため従業員が常に高いモチベーションを維持するには、残業が少なく、休日はしっかり休める職場環境にしなければなりません。現在の会社の状況を詳細に把握し、残業時間や休日出勤が多くなっていないか、離職率が高まっていないかを分析しましょう。 各部署の管理者とも連携し、日々の業務記録を分析し、優先順位の低い業務に時間を使っていないかを確認すべきです。現場で働く従業員一人ひとりに目を配ることで、ワークライフバランスが改善し、従業員のモチベーションが高い職場へと生まれ変わります。
評価基準を明確化する
従業員のモチベーションが低い会社にありがちなのが、人事評価制度とその基準があいまいになっている点です。従業員にとって自分の働きを正当に評価してもらえることほど、仕事にやりがいを感じる瞬間はありません。逆にどれだけ一生懸命に働いても、仕事に対しての評価が低ければモチベーションは低下していきます。会社が大切にすべき点は、従業員の誰もがわかりやすい評価基準を作ることです。評価基準が曖昧なままだったり、上司の主観が評価に結びつく仕組みだったりすると、従業員は努力する意欲を失っていくでしょう。現場の従業員の意見もヒアリングし、重視すべきポイントや評価項目、評価基準などを設定するのが望ましいです。従業員全員がわかりやすく、納得できる人事評価制度が確立できれば、仕事に対するモチベーションアップにつながります。
金銭的・非金銭的インセンティブを導入する
即効性の高いモチベーションアップの施策として、インセンティブ制度を導入する方法もあります。インセンティブには「刺激」「動機」「励み」という意味があり、ビジネスの世界では成果に応じて報酬を与える制度として広く知られています。会社が従業員に高い目標を設定する場合、従業員の努力だけに任せるのは危険です。無事に目標を達成しても、達成したことで終わってしまえば、モチベーション低下につながるからです。そのため、一定の目標を達成した従業員やプロジェクトを成功させたチーム全員に対し、会社からインセンティブを与えるのがよいでしょう。そしてインセンティブを与える際のポイントは、金銭的な報酬と非金銭的な報酬の両方から選択できることです。一般的には臨時ボーナスや金銭を支給することが多いですが、長期休暇やフレックスタイム制などの非金銭的なインセンティブでも効果はあります。従業員のモチベーションを向上させるには、働きに対する見返りでやる気を引き出しましょう。
情報共有しやすい仕組みを作る
従業員がモチベーションを高め、生産的な仕事をするには情報共有しやすい仕組みづくりが大切です。 従業員が意欲的で自主性の高い会社では、社内で情報共有しやすい仕組みがあり、風通しの良い人間関係が構築されていることが多いです。 人間関係の悪い会社はギスギスした雰囲気が流れるだけでなく、従業員がお互いの情報を共有しない環境になるおそれがあります。この状態では従業員がお互いに助け合うことはできず、仕事の効率も大幅に悪化するでしょう。また情報共有がしやすい職場では、従業員がお互いの経験やノウハウを共有し、組織全体の生産性が高まりやすくなります。従業員が協力しやすい制度を作り、自然にモチベーションが上がる雰囲気づくりが大切です。
階層毎のキャリアデザイン研修を用意する
従業員はそれぞれに独自のキャリアプランを思い描いており、達成できるかどうかがモチベーションに関係します。キャリアプランとは仕事における目標とも置き換えられ、仕事への意欲につながっているからです。そのため従業員のモチベーションを向上させるには、個々の階層に合わせたキャリアデザイン研修を用意するのがおすすめです。階層別に新人・若手・中堅・ベテラン・係長・課長など、複数の研修で具体的なキャリアビジョンをもってもらいましょう。従業員が「自分にはどんなキャリアがあるのか」「どうすればキャリアアップできるか」を理解できれば、具体的なアクションプランも描けます。会社側からどんな選択肢があるのかを明示することで、仕事へのモチベーションを高められます。
挑戦しやすい環境・制度を作る
仕事へのモチベーションを高めるには、あえて挑戦的な仕事をしてみることも効果的です。しかし日々の業務がルーティン化してしまうと、新しいことに挑戦する意欲が低下し、失敗を恐れるようになります。逆に挑戦的な試みもできる環境であれば、従業員の創造性が最大限発揮され、モチベーションアップになるでしょう。従業員が挑戦しやすい環境・制度を作るには、次のような施策を打つのがおすすめです。・アイデアコンテスト
・副業の導入
・エキスパート資格の取得支援制度 ・系列会社や他社との交換留学
・職務選択制度
従業員が柔軟な働き方ができるようになれば、その分モチベーションも向上しやすいでしょう。
従業員のモチベーション向上事例
従業員のモチベーション向上につながった事例として、アパレル企業のTSIホールディングスについてみていきましょう。TSIホールディングスでは、グループを横断した教育研修の一環として、各階層でのコミュニケーションスキル強化、人間関係の活性化を図ることにしました。そこで重視したのが、コミュニケーション研修によるモチベーションアップです。ロールプレイング形式の研修は正しいコミュニケーションスキルを身につけ、階層に関係なく、部署を横断したコミュニケーションの場として機能しました。従業員はコミュニケーションを意識する機会になるとともに、同じ悩みや不安を抱える従業員と仲間意識を持つきっかけにもなりました。TSIホールディングスグループ内での仲間意識形成とコミュニケーション活性化により、組織全体のモチベーションアップにつながった事例です。
組織マネジメント・人材育成ならユーキャンへ
企業にとって人材育成はいつの時代も重要課題であり、組織マネジメントの観点からも効率的な人材育成が望ましいです。優秀な人材を企業に定着させるには、教育制度・キャリアプラン・待遇などを充実させ、働きやすい環境が必要になります。そのためには組織全体でマネジメントスキルを高めるとともに、人材育成研修を導入し、促進していくことが効果的です。
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まとめ
今回はモチベーション向上の必要性、モチベーションアップにつながるポイントや考え方、組織内での具体的な施策などを解説しました。モチベーションが高い従業員が多い企業は、組織の生産性の向上だけでなく、組織としての成長も期待できます。従業員が自主的に業務改善に取り組み、より効率的な仕組みや制度、組織構造が作られていくからです。 企業が大きく成長するためにも、従業員のモチベーションアップを促し、イノベーション創出と働きやすい環境を両立できるよう図りましょう。