組織活性化とは何か?
組織活性化とは、組織に属する従業員が組織や企業の理念やビジョンに共感し、
主体的に業務に取り組み、チームワークを発揮できている状態を指します。単に仕事で多忙な状態や従業員が仲良く働くことを意味するものではありません。組織としての目標、理念を従業員に共有し、日々の業務の意味を理解してもらうことで初めて成立します。
例えば、組織活性化を勘違いして部下にノルマを与え、積極的に働かせようとしても、それは組織活性化とはいえません。同じ部署内で従業員が共通したビジョンを持ち、目的をお互いに共有し、常にコミュニケーションを取ることで生産性の高い働きができます。
従業員が経営陣の掲げる組織・企業の方針や目指す姿を理解し、前向きに捉えられているかが重要です。
組織が活性化している企業の特徴
組織活性化は数値やデータで表すことが難しく、分かりにくいものです。
そこで組織が活性化している企業の特徴について、4つの特徴を紹介します。
経営理念・ビジョンが浸透している
組織活性化の基本として、組織の経営理念やビジョンが全体に浸透していることが重要です。
言葉で表すのは簡単ですが、経営層の思いや信念をすべての従業員が理解し、同じ方向を目指すのは容易ではありません。企業の理念やビジョンを共有するには、自社の業務が社会にどれだけ貢献し、責任を持っているのかを理解してもらうことが不可欠です。自社や自分の業務の存在価値を実感することは、仕事へのモチベーションの維持や向上にもつながります。また理念やビジョンの理解を促進するには、言葉だけでなく組織風土や制度を変えることも必要になります。現場で働く従業員まで理念やビジョンが伝わらず、組織活性化につながらないことはよくあります。組織活性化ができている会社は、従業員が企業のビジョンや事業目的を理解し、その達成に向けて主体的に仕事に取り組んでいる状態をいいます。
従業員が自発的に行動している
組織活性化が進むと、従業員は組織の理念・ビジョンに沿って主体的に行動するようになります。日々の業務でも組織の目標を意識しつつ、自分の目標を正しく捉え、自発的に行動できるようになるでしょう。逆に組織活性化が進んでいないと、指示待ちタイプの従業員が増加し、会社の生産性は大きく低下します。一人ひとりが自発的に行動できるようになることが、組織活性化が進む企業の特徴といえます。組織活性化には企業の理念・ビジョンを浸透させるだけでなく、従業員が働きやすく、成長につながる機会と制度を設けることも重要です。経営者がどれほど組織活性化を促しても、従業員が必要性を理解せず、キャリアアップを期待しなければ効果はないでしょう。従業員が自発的に行動できるように、組織構造や人事評価制度も改善できている企業は組織活性化が進んでいるといえます。
コミュニケーションが円滑で活発である
組織が活性化している企業では、社内でのコミュニケーションは円滑で、活発な状態になっています。コミュニケーションの活発さとは、同じ部署内に限ったことではなく、部署同士の連携も含みます。社内でお互いの領域への理解が進んでおり、相互の意見交換や情報共有ができている状態です。社内でコミュニケーションが活性化していれば、部署を横断した施策や制度も導入しやすくなり、トラブル発生時の対応もスムーズになります。
また属人的なスキルを組織全体で共有できれば、従業員のスキルの底上げにもなるでしょう。 組織活性化が進んでいる企業では、どの部署でも情報共有が進み、組織全体の動きが迅速になるという特徴があります。
生産性が高く効率的
組織活性化を進める目的の中で最も重要といえるのが、生産性や業務効率の向上です。組織が活性化していない企業の場合、従業員のモチベーションが低く、従業員同士の連携がうまくいかないという課題があります。その結果、同じ作業を別々の場所で進めてしまい、無駄な作業になってしまうという問題が起こりやすいです。一方で組織活性化が進んでいれば、従業員がそれぞれの役割を果たし、お互いの業務への理解が深まります。作業の無駄が省かれ、業務効率化と生産性向上へとつながるでしょう。組織活性化が進んだ企業では、組織構造の改革や業務改善、ツールの導入なども積極的に行い、業務を効率化できている点が特徴です。
組織活性化に活用できるフレームワーク
組織活性化を推進するには、正しい手順で組織全体に理念やビジョンを浸透させる必要があります。 組織活性化に活用できる4種類のフレームワークについて、特徴やポイントを紹介します。
①ミッション・ビジョン・バリュー
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)とは、会社が社会に対して果たすべき責任や価値観、目指している世界を指すものです。ミッション・ビジョン・バリューは、ドイツ人の経営学者であるピーター・ドラッカーが提唱したフレームワークです。
・ミッション:会社の使命、達成すべき目的
・ビジョン:将来ありたい姿、未来像
・バリュー:会社の価値基準、行動指針
3つのポイントを押さえることにより、企業の社会における正当性と果たすべき役割が明確化できます。ミッションは組織として果たすべき使命、目的を定義することで、組織全体の仕事の方向性や目標を設定して取り組めるようになります。将来ありたい姿を指し示すことで、従業員だけでなく顧客や入社を志望する人材に対しても組織の存在意義をアピールできます。バリューは企業としての行動やルールを決定すべき大切な指針です。バリューが明確になることで従業員の働き方や目標設定も具体化され、顧客の満足度にもつながっていくでしょう。ミッション・ビジョン・バリューは今や多くの企業で取り入れられており、企業イメージを形作る重要な要素にもなっています。従業員や顧客だけでなく、投資家を含むステークホルダーの投資の判断基準になるほど重要なポイントです。
ミッション・ビジョン・バリューを決める際の重要なポイントには、次の3点があります。
・言葉の定義を明確にする
・組織全体に共有する
・従業員にも意見を出してもらう
3つのポイントを意識して決定することで、自社だけのミッション・ビジョン・バリューが打ち出せます。
②パーパス
パーパスは「パーパス経営」とも呼び、自社の存在意義や実現したい社会、社会貢献などの目的を主軸に経営することを意味します。パーパスは2018年にラリー・フィンクによって提唱された比較的新しい概念です。先ほど紹介したミッション・ビジョン・バリュー(MVV)とパーパスには似た部分が多く、パーパスとMVVを一体に考えることもあります。ただしパーパスは社内に向けてのメッセージよりも、社会に対してメッセージを発信する点が特徴です。会社が社会にどのような価値を提供できるのか、社会のためにどんな責任を持っているのかなどを伝えるのがパーパスです。また、パーパスは社内においても従業員の働き方に影響を与えます。経営者が決定したパーパスが社内で浸透すれば、判断のブレが少なくなり、従業員が経営方針に振り回されることが少なくなります。パーパスは従業員の行動基準にもなるため、自発的に行動する人材も多くなるでしょう。ただし、パーパスはMVVと同様、策定しても広く浸透させなければ効果を発揮しません。そのため、次のポイントを意識して作成することが重要です。
・社会課題解決につながること
・自社のビジネスと利益につながること
・実現可能性のあるもの
・ステークホルダーと関係があること
・適切に言語化すること
以上のポイントを守ることで、パーパスが社内だけでなく社外にもアピールする材料となります。パーパスはただ打ち出すだけでなく、日ごろの業務レベルまで落とし込むことも心がけましょう。
※関連リンク:パーパス経営とは? 意味やメリット、企業事例まで解説!
③OKR
OKR(Objectives and Key Results)は、目標設定のフレームワークです。日本語では「目標と主要な結果」を意味します。OKRでは組織として目指すべき目標と、そこに至るまでの成果の指標を設定することにより、従業員の目標設定やモチベーションアップを図ります。OKRの特徴は企業としての目標と成果指標を設定したら、次は部署の目標と成果指標、次にチーム、最終的に個人レベルまで落とし込む点です。組織全体の目標・成果指標を基に、従業員個人の目標・成果指標を設定するため、従業員の判断基準がブレにくくなるというメリットがあります。また、OKRでは目標達成率を60~70%にすることが理想とされています。挑戦的な目標を設定することでモチベーションアップを図り、すべて達成できなくても評価される仕組みです。OKRにおける目標を設定する際は、次のポイントを意識しましょう。
・組織の目指すべき定性的な目標を設定する
・目標達成率が60~70%になる難易度を意識する
・従業員のモチベーションアップにつながる内容にする
次に成果指標の設定では、次のポイントを意識します。
・成果指標は3~5つまで
・評価は0~1.0の範囲で行う
・成果がわかりやすい指標を選ぶ
一般的な目標設定や成果指標では、100%達成を理想としています。しかしOKRは100%を目指さなくても、そこに一定程度近づけることが重要です。成果を出すことよりも、組織全体が同じ目標に向けて働くことに重点を置いたフレームワークといえるでしょう。
※関連リンク:OKRとは?意味やKPI・MBOとの違い、具体的な運用例を解説!
④7S
7Sとは、企業戦略を分析するための7つの要素を表すフレームワークです。企業戦略における、幾つかの要素の相互関係をあらわしたもので、コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱したことから、別名「マッキンゼーの7S」とも呼ばれます。7Sは経営戦略や構造など3つの「ハード面」と、組織風土や価値観といった4つの「ソフト面」、合わせて7つの構成要素で構成されています。企業の現状と理想との違いを明らかにし、改善する計画を立てる際、使用されます。
※関連リンク:組織マネジメントはなぜ必要? メリットや管理職の必要スキル、役立つフレームワークも解説
▼3S
3Sはハードの3Sと呼ばれ、組織の基盤を構成する3つの要素を指します。経営者が比較的短期間に変更可能でコントロールしやすいものとされています。・Strategy(戦略)
・Structure(組織構造)
・System(システム)
Strategy(戦略)は、企業経営の方向性や課題解決の方針などを決定することです。企業にとって最初に定めるべきもので、これを元に企業戦略や事業戦略などを計画します。
次にStructure(組織構造)は組織図や組織形態です。Strategy(戦略)で決定した内容に基づいて、組織構造を変化させたり、仕事の種類やプロジェクトでチームを作ったりする必要があります。
最後のSystem(システム)は、組織内での人事評価制度や給与、人事異動、採用の仕組みなどのことです。組織活性化につなげるため、従業員のモチベーションアップになる制度設計やインフラ整備などを行います。特に人事評価制度は透明性を確保することで、従業員のキャリアアップへの意欲を高めるのが重要です。
▼4S
4Sはソフトの4Sであり、従業員個人に関する要素が中心です。個人で決まるものであり、通常、簡単には変更できずコントロールしにくいものとされています。・Shared value(共通の価値観)
・Staff(人材)
・Style(スタイル)
・Skill(スキル・能力)
まずShared value(共通の価値観)とは、パーパスやMVVと同じような将来ありたい姿や未来像を指します。従業員が経営層と同じ価値観を持つことで、行動基準が明確になり、経営理念に基づいた働きができるようになります。Staff(人材)はShared valueで、価値観を共有する従業員のことです。部署やチームが同じ価値観を持ち、組織の求める人材育成を進めることを理想とします。Style(スタイル)は企業風土や社風です。会社独自の文化や風土、慣習などを包括してStyleとしています。Styleは従業員の働きに影響を与えるため、働き甲斐のある環境を用意することが重要です。
最後はSkill(スキル・能力)です。社内でこれまでに蓄積されてきた経験やノウハウ、技術などのすべてを指します。イノベーションを起こすには、既存のSkillと新しいSkillの組み合わせが不可欠です。従業員のモチベーションと創造性を高めるためには、新しいSkillの開発が必要になるでしょう。
組織活性化の取り組みアイデア・具体例
組織活性化に向けた取り組みやアイデアの具体例を5つ紹介します。
フィードバックしやすい雰囲気を作る
組織活性化では社内で風通しの良い環境を作り、良好な人間関係を構築することが重要です。そのため経営層や管理職が従業員の仕事に対する評価や改善点のフィードバックを適切に行うことで、部署やチーム内で受け入れやすい雰囲気を作る必要があります。上司からの適切なフィードバックは、従業員の成長になり、上下関係にとらわれないコミュニケーションもできるようになるでしょう。ただしフィードバックはやみくもに行うのではなく、具体的なケースから指導を行うことがポイントです。従業員にとって身近なケースからフィードバックすることで、改善方法をイメージしやすくなります。また従業員同士でのフィードバックを促すことで、お互いに改善点を話し合える環境が生まれます。
わかりやすいキャリアパスを作る
キャリアパスとは、キャリアアップのために必要となる基準や条件を明確化することです。自分の業務やこれまでの経験が、今後どう生かされていくのかわからないと、仕事へのモチベーション低下を招くおそれがあり、 組織全体が活発に動くようになるには、従業員が自分の将来を具体的にイメージできることも重要なポイントです。そのため企業として従業員の階層や年代、部署毎にキャリアパスを設けるとともに、評価基準も明確化しましょう。 従業員に成長の機会を与え、自らキャリアを選べるようになることで、仕事へのモチベーション向上が期待できます。またキャリアパスに応じて会社からの支援もあると、従業員としてもキャリア開発に取り組みやすいでしょう。
チームビルディングを実施する
チームビルディングとは、プロジェクトや部署内のチームにおいて、各メンバーのスキル・能力を最大限発揮し、目標に向けて相互に連携しあうチームを作るための取り組みです。チームビルディングでは創設されたばかりのチームを対象にすると思われがちですが、従業員の階層に合わせたチームビルディング研修もあります。階層や役割に合わせてチームビルディングを実施することで、従業員のコミュニケーションは活性化され、仕事へのモチベーションアップにつながります。
また従業員同士のかかわりを通して新しいアイデアが創造性を引き出し、イノベーションが生まれることもあるでしょう。チームビルディングには、社内イベントや他部署との連携などさまざまな方法があります。「従業員同士のコミュニケーションが少ない」「新規プロジェクトが多く、チームが複数できている」など、社内のコミュニケーションに課題がある場合に有効です。
アイデアボックスを設置する
従業員が自発的に行動するように働きかけるには、アイデアボックスの設置も効果的です。上意下達の指示系統・組織構造では、従業員の自由な発想や自主性が阻害されるおそれがあります。アイデアボックスは従業員の提案や業務効率化の提案を受け付け、社内の制度や構造改革を目的に設置します。匿名性を維持するために無記名を基本とし、インターネット上から投稿できるようにするとよいでしょう。社内にアイデアボックスを設置すると、人目や監視を受ける可能性があり、思うように意見を出せなくなるからです。経営層と従業員では、視座の違いから考え方や業務への捉え方も違います。経営層や管理職にとっては良い改善策も、現場の従業員にとって良いとは限りません。そのため従業員目線で組織活性化のアイデアを募集し、実際の声を反映していくことが改善策になるでしょう。
報奨・インセンティブ制度を設ける
従業員の働きを活性化するには、働きに応じた報奨やインセンティブ制度を設けることも有効な方法です。成果や会社への貢献度を評価することで、従業員のモチベーションを高められます。また、年間で最も活躍した従業員に対して、優秀賞として表彰や報奨を与えるのもよいでしょう。働きに応じた報酬やインセンティブは、従業員のやりがい・働きがいを高める要素になります。
組織活性化の実現に成功した事例
国内企業でも組織活性化に取り組んだ例は多くあります。その中の1つとして、国内大手お菓子メーカーA社を紹介します。A社では、業務効率化やイノベーションの創出、コミュニケーションの活性化を目的にさまざまな制度を導入してきました。2020年、新型コロナウイルス感染症拡大を機に全従業員にスマートフォンを貸与すると同時に、各端末から次のような情報を共有できるようにしました。
・社内インフォメーションへのアクセス
・社内SNSの閲覧
・コミュニケーションプラットフォームでの意見交換
・災害時の伝言板や緊急連絡
他にも、多様な価値観によるアイデアの創出や、優秀人財の確保・定着を目指し、全従業員に副業制度の導入、従業員向けの支援制度として「かぞくを守るプログラム」なども実施しています。業務効率だけではなく、働き方や従業員家族への支援も含め、多面的な制度で組織活性化に成功した事例といえるでしょう。
組織活性化のための研修ならユーキャンへ
ユーキャンでは組織活性化を支援するために、ウェルビーイング研修など複数のプログラムをご用意しております。組織活性化は従業員の働く意欲を高め、業務効率化・生産性の向上につながります。また従業員のやりがいになるだけでなく、組織活性化を図ることで、「従業員エンゲージメントの向上」「定着率の向上」「人材の成長」が望め、企業の業績向上、イノベーションを創出を高めることができます。
従業員に働き甲斐のある職場とは何か、より良い働き方について理解を促し、組織に貢献できる人材を育てます。
まとめ
組織活性化は所属する従業員が最大限の能力を発揮し、組織全体の生産性を高めるために重要な取り組みです。 正しい方法を実践できれば、従業員のモチベーションを引き出し、コミュニケーションを活性化できるでしょう。過去には日本の企業でも組織活性化の取り組みを進め、成功した例もあります。自社の抱える課題は何かを広い視野で捉え、必要な改善策を経営層と従業員が一丸となって考えましょう。社外の専門家にも相談し、自社の活性化へとつなげてください。