タイムマネジメントとは
ビジネスシーンで使われるタイムマネジメントとは、本来どのような意味があるのでしょうか。下記の観点で解説します。
- ・タイムマネジメントは時間を有効的に使用し、生産性の向上を目指す取り組み
- ・スケジュール管理と異なり、予定の把握だけでなく成果目標や優先順位など、時間を有効活用する計画性も含まれる
タイムマネジメントの意味
タイムマネジメントとは、決められた時間のなかで業務を計画的に進め、成果を出すことを指します。 時間を有効的に使用し、生産性の向上を目指す取り組みです。たとえば、1日8時間勤務のなかでできる仕事が5つあった場合、計画的に終わらせたうえで別の業務を追加できるように時間を管理します。
スケジュール管理との違い
タイムマネジメントは、単なるスケジュール管理とは異なります。スケジュール管理では、いつ、どんな予定が入っているのかを把握し、管理することが基本です。しかし、スケジュール管理だけでは生産性向上にはつながりません。
一方、タイムマネジメントでは、会議や業務などの予定を把握するのはもちろん、成果目標や優先順位の把握、業務ごとの時間の振り返りなど、時間を有効活用できるような計画も含まれます。タイムマネジメントは、スケジュール管理に加えて、さらに時間をどう使うかコントロールする能力が必要とされます。
タイムマネジメントは時間の管理ではない
タイムマネジメントを直訳すると「時間管理」ですが、単に時間を管理するだけではありません。 実際には、使える時間をどう使うのか、自分の行動を管理する能力が求められます。自分が業務をどのくらいで終わらせられるのか把握し、より効率的に業務を進められるように計画を立てて、実行する必要があります。
タイムマネジメントの必要性と目的
タイムマネジメントは、企業が徹底したい課題として注目されています。以下では、その必要性と目的について解説します。
- ・自分の時間をコントロールできる
- ・業務のための段取りが可能
- ・効率良く業務を進められる
- ・成果のために時間を使える
自分の時間をコントロールできる
自社の従業員がそれぞれタイムマネジメントできるようになれば、各自の使える時間をうまくコントロールできるようになります。タイムマネジメントを意識せず、うまく時間配分ができていないと、成果が出ないまま時間が過ぎてしまうケースもあるでしょう。
タイムマネジメントを意識すれば、時間を計画的に使うことが可能になります。業務をいつ始めて、いつ終わらせれば効率がいいのか、時間の使い方をコントロールしながら自己管理できるため、企業の生産性向上に効果的です。
業務のための段取りが可能
タイムマネジメントが可能になれば、業務を効率的に進めるための段取りができるようになります。行き当たりばったりの行動が減り、時間を有効に使うための意識が生まれるでしょう。業務によって期待される成果をできるだけ大きくするためにも、計画性のある段取りは大事です。成果が出るまでの時間をできるだけ短縮できれば、生産性向上につながります。
効率良く業務を進められる
効率良く業務を進めるためにもタイムマネジメントは効果的です。タイムマネジメントができていない場合、時間に追われて確認作業が不十分になる可能性もあります。確認漏れは、修正や再チェックによって新たな業務を生んでしまうため非効率的です。タイムマネジメントによって効率性の高い業務ができれば時間に余裕ができ、確認ミスや漏れも防げるでしょう。
成果のために時間を使える
タイムマネジメントがうまくいけば、成果のために時間を使えます。業務全体を把握し、各業務にかける時間を整理できるため、無駄な行動を減らせます。生産性のない業務に振り回されず、使った時間分の成果が出せるような働き方が可能です。
タイムマネジメントで生産性を高めるパターン
ビジネスシーンで重要視される生産性は、経過時間を成果で割ると算出できます。 生産性を増やすには、成果を増やすか、投入時間を減らす必要があるため、タイムマネジメントが重要です。 ここでは、タイムマネジメントで目指すべき生産性向上のパターンについて以下を中心に解説します。
- 1.同じ時間で成果を増やす
- 2.時間を減らして成果を増やす
- 3.時間よりも成果を大幅に増やす
- 4.成果よりも時間を大幅に減らす
1.同じ時間で成果を増やす
まず考えられるのは、業務にかける時間は変えず、成果を増やすパターンです。同じ時間のなかで成果を増やすためには、以下の対策が必要といえます。
- ・業務効率の向上
- ・自動化による時間短縮
- ・従業員の能力向上
2.時間を減らして成果を増やす
次に、成果の質や量を低下させず、かける時間を減らすパターンも考えられます。たとえば、従来では1日かかっていた業務を半日で完了できると、最終的な生産性は向上します。これまでに要していた時間を減らすには、やはり時間の使い方を考える必要があるため、タイムマネジメントの考え方が役立つでしょう。
3.時間よりも成果を大幅に増やす
生産性を高めるには、かける時間を増やし、成果を大幅に増やすパターンもあります。使える時間を増やすなら、業務の質を上げて成果も大幅に増加させなければなりません。ただし、すべての業務の時間を増やしても成果につながりにくいため注意が必要です。
タイムマネジメントによって、特に成果に結びつく業務に時間を割けるようコントロールし、効率的な業務進行をしていく必要があります。
4.成果よりも時間を大幅に減らす
成果が減ったとしても、時間を大幅に減らすパターンも考えられます。時間は短縮できるものの、成果も落ちるため良くない施策に思われますが、時間の減らし方が肝心です。
時間内で行っていた業務をただ減らすのではなく、特に成果に影響が少ない業務にかかっている時間を見直せば、時間を減らして重要な業務に集中できます。そのため、企業自体の生産性向上が期待でき、タイムマネジメントによる効果が発揮されるでしょう。
タイムマネジメントのメリット
ここからは、タイムマネジメントによって期待できる6つのメリットについて解説します。
- ・重要なタスクから完了できる
- ・残業時間を減らせる
- ・コストカットにつながる
- ・仕事の処理能力が向上する
- ・新たな挑戦に時間を割り振れる
- ・精神的な余裕が生まれる
重要なタスクから完了できる
タイムマネジメントによって、優先すべきタスクから終わらせることが可能です。 タイムマネジメントでは、成果につながりやすいタスクから優先的に行い、時間を有効に使えるようコントロールします。 そのため、目の前にあるタスクを1つずつ終わらせていくよりも業務効率が上がり、より生産性の高い時間の使い方ができます。
残業時間を減らせる
時間を管理できれば決められた時間内で業務を完了できます。時間を意識して働けるようになり、残業も発生しにくくなるでしょう。優先度の高い業務を把握できている状態のため、スケジュールや締め切りに追われにくくなるのもメリットです。
コストカットにつながる
タイムマネジメントは、さまざまなコストの軽減につながります。前述したように、残業時間の減少によって残業代が減るほか、効率的な業務進行により人的リソースも少なく済むなど、人件費の削減に効果的です。また、時間の有効活用によって従業員のやる気や満足度向上も期待できます。離職率の減少は、採用・教育のコストの削減にもつながります。
仕事の処理能力が向上する
従業員がタイムマネジメントの意識を持てるようになると、仕事の処理能力が向上します。日頃から時間の使い方がうまくなり、自然と効率的な手法が身につくでしょう。業務にかかる時間を減らすことができれば、余裕ができた時間をフィードバックや情報共有に活用できます。企業全体の活性化にも効果的です。
新たな挑戦に時間を割り振れる
タイムマネジメントによって時間を有効活用できれば、新しい挑戦もできるようになります。目の前のタスクに気を取られていては、新たなチャンスを逃してしまいます。新しい知識やスキルを身につけるための学習や、新たな企画のための会議などに時間を割けるようになるため、企業の成長にもつながるでしょう。
精神的な余裕が生まれる
タイムマネジメントは精神的な余裕にもつながります。時間に追われると、不安やストレスを感じる人は多いでしょう。時間通りに業務を終わらせられない場合は、自信を失い、やる気を削がれてしまう人もいるかもしれません。タイムマネジメントができれば計画通りに業務を進められ、達成感が生まれやすくモチベーション向上につながります。
タイムマネジメント実施の手順
ここからは、タイムマネジメントを実施する手順について以下の4ステップで解説します。
- ・1.業務・タスクの洗い出し
- ・2.優先順位の決定
- ・3.業務目標の設定
- ・4.振り返りの実施
1.業務・タスクの洗い出し
タイムマネジメントするには、まず業務やタスクの洗い出しが必要です。業務を整理し、可視化すれば、思いつきや行き当たりばったりで動くことを防げます。
具体的には、業務やタスクをリストアップして書き出すのがおすすめです。客観的に把握しやすく、業務ごとにかかる時間や予測も把握できます。たとえば、事務作業について整理する場合、書類の作成・整理・データ入力・メール作成など、細かいタスクまでしっかり洗い出しておきましょう。
大まかな認識では、業務やタスクを忘れてしまったり、作業にかかる時間が予測できずに時間を配分できなくなったりするなど、うまくタイムマネジメントできなくなってしまいます。自分がやるべき業務やタスクを細分化して、さらに時間の内訳も把握しておけば、より効果的にタイムマネジメントできるでしょう。
たとえば、表形式でわかりやすくすると一目で確認できます。フォーマットを作っておけば、洗い出しに時間を取られません。まずは1週間分の業務を洗い出し、次に同じ手順で1か月分を洗い出すといいでしょう。さらに、業務を洗い出して可視化した後も状況に合わせて、表を修正していくと、精度の高いタイムマネジメントを実現できます。
2.優先順位の決定
手順の初めにリストアップした業務やタスクについて、優先順位を決めていきます。優先度は、重要度と緊急度の2つの軸から判断し、以下の表のように大きく4つに分けて考えるといいでしょう。
緊急で重要(A) | 緊急だが重要ではない(B) |
緊急ではないが重要(C) | 緊急でも重要でもない(D) |
重要度は、成果につながるかどうか、緊急度は納期が近いかどうかで判断します。 上記でいえば、Aが最も優先度が高く、Dが優先度の低い業務・タスクです。
このように優先度順に業務やタスクを見つめなおせば、時間をかけるべき業務や短時間で終わらせるべき業務、今やるべきではない業務がわかります。優先度の低いDに当たる業務は、本当に必要なのか確認したり、外部に委託したりして対処するといいでしょう。業務やタスクに優先順位をつけるのは、タイムマネジメントのなかでも特に重要な作業です。
3.業務目標の設定
業務やタスクの優先度から取りかかる順番を見直したら、業務やタスクごとに目標を設定しましょう。目標の内容は複雑にせず、一目見て理解できる内容にすると実行しやすくなります。
また、簡潔でかつ具体的にやるべきことがわかる内容だと効果的です。たとえば「業務にかかる時間を短縮する」などの曖昧な目標にすると、指標がわかりにくいため取り組みがうまくいったのか判断できません。
業務やタスクに設定する目標には「業務時間を30分短縮する」「業務にかかる人員を減らす」など、具体的で成果がわかりやすいものにしましょう。タイムマネジメントするうえで、自社だけでは目標達成が難しい業務は、外部への委託を考えるのも1つの選択肢です。
4.振り返りの実施
タイムマネジメントを実施し、業務やタスクが予測通りにいかなかった場合や、目標を達成できなかった場合、できなかった原因や理由を検討しましょう。具体的には、業務・タスクごとに実際にかかった時間を記録しておき、リスト化した際の予測時間や目標時間と比較します。特に、優先度の高い業務に時間を割けているか確認しましょう。
実際に業務に取り掛かった時間を振り返れば、タイムマネジメントの重要性を再認識できるほか、やり方の改善にもつながります。タイムマネジメントは、最初からうまくいくわけではありません。トライ&エラーを繰り返しながら改善を図っていく必要があります。
タイムマネジメントに使える手法
タイムマネジメントは、さまざまな手法を取り入れると効果的に実施できます。ここからは、下記の5つの手法について解説します。
- ・ロジックツリー
- ・アイゼンハワーマトリクス
- ・フィジビリティスタディ
- ・SMARTの法則
- ・HIROEN
ロジックツリー
ロジックツリーは、タイムマネジメントにおける業務や、タスクの洗い出しや課題発見に役立つフレームワークです。1つの物事を分解していき、構成する要素を細かく可視化します。ロジックツリーは、改善点や優先順位を見極めやすく、行動に移しやすくなるのがメリットです。ロジックツリーを活用する際には、まずは対象を決め、思いつく限りの要素を書き出します。ここでは、同じような要素や漏れている要素がないかチェックすることが重要です。
最後に、要素をさらに分解していき、分解できなくなるまで書き出していきます。書き出した内容は、タイムマネジメントするうえでの指針となります。
アイゼンハワーマトリクス
アイゼンハワーマトリクスは、業務やタスクの優先度を測る際に役立つ、タイムマネジメントに欠かせない手法です。アイゼンハワーマトリクスによって、業務の重要性、緊急性を整理できます。
アイゼンハワーマトリクスでは、タスクマネジメントの手順「2.優先順位の決定」で紹介した重要性と緊急性の2軸から分けた4つの領域をについて、以下のように順位づけをします。
- ・A:優先的にやるべきこと
- ・B:後でやるべきこと
- ・C:人に任せてもいいこと
- ・D:やらなくてもいいこと
フィジビリティスタディ
重要性や緊急性が不明で、アイゼンハワーマトリクスでは優先順位がつけられない場合、フィジビリティスタディが有効です。フィジビリティスタディでは、業務やタスクの可能性をあらゆる視点から検討し、優先順位を決めていきます。
具体的には技術面、財務面、運用面、市場動向の4つの視点から対象となる物事を分析する手法です。企業や自分にとって、有益となるものから優先的に実行することが可能になります。
SMARTの法則
SMARTの法則は、業務やタスクごとの目標設定に役立つタイムマネジメント手法です。以下の5つで構成されます。
- ・Specific(具体的な)
- ・Measurable(測定できる)
- ・Assignable(割り当て可能)
- ・Realistic(現実的な)
- ・Time-related(期間の設定)
HIROEN
HIROENは、業務効率化やよりよいタスク管理の方法として活用されるフレームワークです。仕事をを以下の6つに分解し、スムーズに進められるように役立てます。
- ・Hear(聞く)
- ・Inform(伝える)
- ・Request(依頼する)
- ・Operate(作業する)
- ・Examine(調べる)
- ・Negotiate(交渉)
従業員にタイムマネジメントを浸透させる方法
従業員にタイムマネジメントを浸透させるには、講座や研修の実施がおすすめです。外部の専門機関に依頼すれば、タイムマネジメントの知識を効率的に身につけられるでしょう。 個人のタイムマネジメントだけでなく、チームにおけるタイムマネジメントについても身につき、社内全体の効率化・生産性向上が目指せます。
まとめ
タイムマネジメントは、企業の生産性を向上させる重要な取り組みです。従業員1人ひとりが効果的なタイムマネジメントを実施できるようになれば、企業の利益に貢献するでしょう。
タイムマネジメントを学んでもらうための施策には、ユーキャンの「タイムマネジメント講座」がおすすめです。タイムマネジメントの基本が学べるほか、チームでの取り組み方や今の業務の改善点なども理解できます。社内におけるタイムマネジメントの強化を検討する際は、以下から詳細をご確認ください。