Linuxの代表的な資格試験
Linuxの代表的な資格試験は「LPIC」と「LinuC」の2つです。それぞれの概要について、以下で解説します。
LPIC
LPIC(エルピック)の正式名称は「Linux Professional Institute Certification」です。Linux技術者認定試験の1つであり、Linuxプロフェッショナル認定資格、LPI認定資格とも呼ばれています。
LPICは、世界共通のIT資格として、多くの国で実施されている資格試験です。カナダに本拠地をおく非営利団体 LPI(Linux Professional Institute)によって運営されています。試験は特定のベンダーに依存していないので、Linuxに汎用的に通用する知識を要求されます。
LPICの種類は「LPIC-1」「LPIC-2」「LPIC-3」の3つです。それぞれの種類で、難易度が異なります。「LPIC-3」は2023年現在、4種類あります。以前は、300、303、304の3種類でしたが、304が305と306に分割されました。
LinuC
LinuC(リナック)は、LPICよりも日本の市場向けに最適化されたLinux技術者認定試験です。「Linux技術者認定試験 LinuC」という正式名称で、LPI-Japanが独自に作成して、2018年から実施しています。
LPICが世界で標準化された試験なのに対して、LinuCは、国により市場や理想とされる技術者が異なることを意識し、市場ニーズに基づいた高品質で信頼性の高い技術者認定を目指しています。
LinuCは、試験の合格基準や合否判定、スコアなど、LPICでは開示されない情報が、受験生に提供されています。LinuCの種類は「LinuCレベル1」「LinuCレベル2」「LinuCレベル3」の3つです。それぞれの種類で、難易度が異なります。LinuCには、英語版もあるため、外国人であっても受験可能です。
LPICとLinuCの相違点
LPICとLinuCでは、世界と日本のどちらに向けて作成されているのかで異なります。LPICは世界的に認知されている資格ですが、日本語試験はグローバル基準に従い、英語版の試験内容を翻訳しています。LinuCは日本向けに最適化されており、日本語で設問が設定されています。
また、LPICが、世界のさまざまな国で活躍するITエンジニアに向けて作成されているのに対して、LinuCは、日本の市場に向けて作成されている資格試験です。LPICとLinuCは、運営団体が特定のIT企業に依存していない点で共通しています。
企業の人材がLinuxの資格を取るメリット
Linuxの資格は、従業員の人材育成に役立ちます。企業の人材がLinuxの資格を取るメリットは、以下の3つです。
Linuxに関する知識が身につく |
世界に通用するスキルが身につく |
キャリアアップに活かせる |
Linuxに関する知識が身につく
Linuxの資格取得を目指す過程で、従業員は新しい知識を身につけられます。LPICとLinuCは、Linuxに関するあらゆる知識が求められる資格試験です。試験には実務的な内容が多く、業務に活用できるLinuxの知識を学べます。
世界に通用するスキルが身につく
LPICは、世界的に認められている資格です。資格を取れれば、日本にとどまらず、さまざまな場面でLinuxのスキルをアピールできます。Linuxの実務経験と共に、LPIC-2の資格があれば、人材の知識と技術が、より信頼性のある情報と証明できるでしょう。
キャリアアップに活かせる
Linuxの資格を取れば、社内の人材にLinuxを扱うスキルが身につき、キャリアアップに活かせます。企業のなかには、新入社員研修にLPICの試験レベルに合わせた研修を組み込んでいる場合もあります。
Linuxの資格試験の内容
LPICとLinuCの試験内容を詳しく解説します。人材育成の手段として検討する際の参考にしてください。
LPICの試験内容
LPICは、全部で3段階のレベルに分かれています。LPICのレベルは、以下の通りです。
LPIC-1 |
LPIC-2 |
LPIC-3 |
LPIC-1
LPIC-1は、Linuxを使ったサーバー構築や運用、保守ができるエンジニアであると証明できる資格です。各レベルのなかで最も低い難易度になりますが、LPIC-1の資格を取れば、キャリアアップに役立ちます。LPIC-1には、2種類の試験があります。LPIC-1の2種類の試験は、以下の通りです。
101試験 |
102試験 |
101試験
101試験の試験範囲は、以下の通りです。
システムアーキテクチャ |
GNUとUnixコマンド |
Linuxのインストールとパッケージ管理 |
デバイス、Linuxファイルシステム、ファイルシステム階層標準 |
102試験
102試験の試験範囲は、以下の通りです。
シェル、スクリプト |
ユーザーの追加やアカウントの作成と管理 |
ユーザーインターフェースとデスクトップ |
必須システムサービス |
セキュリティ |
ネットワークの基礎 |
LPIC-2
LPIC-2は、小規模から中規模のサーバーを自身のスキルで構築、運用できるエンジニアであると証明できる資格です。LPIC-2の資格を持っている人材は、IT業界で重宝されています。LPIC-2には、2種類の試験があります。LPIC-2の2種類の試験は、以下の通りです。
201試験 |
202試験 |
201試験
201試験の試験範囲は、以下の通りです。
サーバーのキャパシティプランニング |
システムの起動、ファイルシステムとデバイス |
Linuxカーネル |
ネットワーク構成 |
高度なストレージ管理 |
システムの保守 |
202試験
202試験の試験範囲は、以下の通りです。
ドメインネームサーバー |
ファイル共有 |
Webサービス |
ネットワーククライアントの管理 |
システムのセキュリティ |
電子メールサービス |
LPIC-3
LPIC-3は、LPIC-1、LPIC-2と比べて、大きく難易度が上がります。LPIC-3には、4種類の試験があります。LPIC-3の4種類の試験は、以下の通りです。
LPIC-3 300 Mixed Environment |
LPIC-3 303 Security |
LPIC-3 305 Virtualization and Containerization |
LPIC-3 306 High Availability and Storage Clusters |
LPIC-3 300 Mixed Environment
LPIC-3 300 Mixed Environmentの試験範囲は、以下の通りです。
Sambaの基礎 |
Sambaとアクティブディレクトリドメイン |
Samba共有の設定 |
Sambaクライアントの設定 |
Linuxのアイデンティティ管理とファイル共有 |
LPIC-3 303 Security
LPIC-3 303 Securityの試験範囲は、以下の通りです。
暗号化 |
ホストセキュリティ |
Access Control |
ネットワークセキュリティ |
脅威と脆弱性評価 |
LPIC-3 305 Virtualization and Containerization
LPIC-3 305 Virtualization and Containerizationの試験範囲は、以下の通りです。
完全仮想化 |
コンテナ仮想化 |
VMのデプロイメントとプロビジョニング |
LPIC-3 306 High Availability and Storage Clusters
LPIC-3 306 High Availability and Storage Clustersの試験範囲は、以下の通りです。
High Availability Cluster Management |
HAクラスタストレージ |
HA分散ストレージ |
単一ノードHA |
LinuCの試験内容
LinuCは、全部で3段階のレベルに分かれています。LinuCのレベルは、以下の通りです。
LinuCレベル1 |
LinuCレベル2 |
LinuCレベル3 |
各レベルの試験内容について、特徴や種類を解説します。
LinuCレベル1
LinuCレベル1は、Linuxシステムの構築や運用の基礎知識が問われる試験です。LinuCレベル1には、2種類の試験があります。LinuCレベル1の2種類の試験は、以下の通りです。
101試験 |
102試験 |
101試験
101試験の試験範囲は、以下の通りです。
Linuxのインストールと仮想マシン・コンテナの利用 |
GNUとUnixのコマンド |
ファイル・ディレクトリの操作と管理 |
リポジトリとパッケージ管理 |
ハードウェア・ディスク・パーティション・ファイルシステム |
102試験
102試験の試験範囲は、以下の通りです。
シェルおよびスクリプト |
システム管理 |
ネットワークの基礎 |
重要なシステムサービス |
オープンソースの文化 |
セキュリティ |
LinuCレベル2
LinuCレベル2には、2種類の試験があります。LinuCレベル2の2種類の試験は、以下の通りです。
201試験 |
202試験 |
201試験
201試験の試験範囲は、以下の通りです。
システムの起動とLinuxカーネル |
ネットワーク構成 |
ファイルシステムとストレージ管理 |
システムの保守と運用管理 |
仮想化サーバー |
コンテナ |
202試験
202試験の試験範囲は、以下の通りです。
ネットワーククライアントの管理 |
HTTPサーバーとプロキシサーバー |
ドメインネームサーバー |
電子メールサービス |
システムアーキテクチャ |
システムのセキュリティ |
ファイル共有サービス |
LinuCレベル3
LPIC-3には、3種類の試験があります。LPIC-3の3種類の試験は、以下の通りです。
LPIC-3 300 Mixed Environment |
LPIC-3 303 Security |
LPIC-3 304 Virtualization & High Availability |
LinuCレベル3 300 Mixed Environment
LinuCレベル3 300 Mixed Environmentの試験範囲は、以下の通りです。
OpenLDAPの認証バックエンドとしての利用 |
OpenLDAP の設定 |
Sambaの基礎 |
Sambaのユーザーとグループの管理 |
Sambaの共有の設定 |
Sambaのネームサービス |
Sambaのドメイン統合 |
LinuxおよびWindowsクライアントの操作 |
LinuCレベル3 303 Security
LinuCレベル3 303 Securityの試験範囲は、以下の通りです。
暗号化 |
アクセス制御 |
ホストセキュリティ |
ネットワークセキュリティ |
LinuCレベル3 304 Virtualization & High Availability
LinuCレベル3 304 Virtualization & High Availabilityの試験範囲は、以下の通りです。
仮想化 |
高可用クラスタ管理 |
高可用クラスタストレージ |
LPICとLinuCの受験費用
LPICとLinuCの受験費用を解説します。受験費用は安価ではありませんが、人材育成に必要な費用といえます。
LPICの受験費用
LPICの受験費用は、1試験ごとに16,500円です。例えば、LPICレベル1を取るには、101試験と102試験に合格しなければならないため、合計で33,000円の受験費用が必要です。
※参考:Exam Pricing | Linux Professional Institute
LinuCの受験費用
LinuCの受験費用は、1試験ごとに16,500円です。以前、LinuCレベル3の受験費用は、1試験ごとに32,400円(当時の税率は8%)かかりましたが、現在は減額されており、多くの人が受験しやすくなりました。
※参考:LinuC(リナック)の受験ご案内|LPI-Japan - LinuC
LPICとLinuCの注意点
LPICとLinuCの受験における注意点は、以下の2つです。
LPICとLinuCでは、2科目の試験合格が求められるレベルにおいて、試験合格までの有効期限がある |
不合格だった場合に、同一試験を受験する際、前回の受験日の翌日から起算して7日目以降(土日含む)でなければ受験できない |
LPIC
LPICでは、2科目の試験合格が求められるレベルを受験する場合に、有効期限が設定されています。2科目の試験合格までの有効期限は、5年間です。例えば、LPIC-1を受験する場合、101試験に合格した日から5年以内を期限に、102試験の合格が必要です。
万が一、有効期限を過ぎても合格できなかった場合は、101試験の合格が無効になり、再度101試験から受験しなければなりません。受験費用も多くかかるため、注意が必要です。
LinuC
LinuCは、LPICと同じく、2科目の試験合格が必要なレベルを受験する場合に、有効期限が設定されています。2科目の試験合格までの有効期限は、5年間です。例えば、LinuCレベル1を受験する場合、101試験に合格した日から5年以内を期限に、102試験の合格が必要です。
万が一、有効期限を過ぎても合格できなかった場合は、101試験の合格が無効になり、再度101試験から受験しなければなりません。
LPICとLinuCの再受験に必要な条件
LPICとLinuCには、再受験ポリシー(リテイクポリシー:再受験規定)があります。再受験ポリシーには、同じ試験を再受験する場合は、前回の受験日の翌日から起算して、7日経過しないと実施できないと記載されています。(土日含む)
Linux資格取得のための勉強法
Linux資格取得に役立つ勉強法は、以下の3つです。
各資格試験の認定パートナー制度を利用する |
オンライン学習サイトを活用する |
参考書や過去問題集で知識を深める |
それぞれの勉強法について、詳しく解説します。
各資格試験の認定パートナー制度を利用する
LPICとLinuCには、認定パートナー制度があります。認定パートナー制度は、資格試験に向けた勉強の支援が受けられる制度です。制度を活用すれば、勉強の効率化に役立ちます。認定パートナー制度の名称は、LPIが「トレーニングパートナー制度」、LinuCが「LPI-Japanアカデミック認定校制度」です。
オンライン学習サイトを活用する
LPICとLinuCの試験勉強を効率的に行うには、オンライン学習サイトの活用がおすすめです。オンライン学習サイトはさまざまな団体や企業が提供しています。サービスのなかには、無償で利用できるものもあるため、費用を抑えたい場合に便利です。オンライン学習サイトであれば、通勤中や通学中のすき間時間を有効活用して、勉強を効率的に進められます。
参考書や過去問題集で知識を深める
LPICとLinuCには、参考書や過去問題集が販売されています。参考書と過去問題集を使って勉強を進めれば、実際の試験を受ける感覚で問題を解けるため、自分の現在のレベルを詳しく把握できます。参考書と過去問題集を選ぶ場合は、受験する試験に対応したテキストを選びましょう。以下で紹介するテキストを確認して、試験勉強の参考にしてください。
1週間でLPICの基礎が学べる本(インプレス)
「1週間でLPICの基礎が学べる本」は、Linuxの初心者でも、円滑に勉強を進められる入門書として役立つテキストです。練習問題を解きながら、試験の合格に必要な基礎知識を身につけられます。また、LPICの模擬問題や試験情報も載っているため、試験に向けた実践的な勉強も可能です。Linuxを扱った経験がない人でも、安心して勉強ができます。
※参考:1週間でLPICの基礎が学べる本 第3版 (1週間シリーズ) | 中島 能和 |本 | 通販 | Amazon
Linux教科書 LPICレベル1 スピードマスター問題集(翔泳社)
「Linux教科書 LPICレベル1 スピードマスター問題集」は、LPIC-1に対応したLPICの認定テキストです。101試験と102試験の対策問題が掲載されており、LPIC-1の試験範囲を網羅的に勉強できます。また、対策問題には、正答に関する解説が用意されているため、間違った部分や知識不足について確認できます。
※参考:Amazon.co.jp: Linux教科書 LPICレベル1 スピードマスター問題集 Version5.0対応 : 山本 道子, 大竹 龍史: 本
Linux教科書 LinuCレベル1(翔泳社)
「Linux教科書 LinuCレベル1」は「あずき本」とも呼ばれており、参考書のなかでも有名なテキストです。LinuCレベル1の試験範囲を網羅的に勉強できます。各章の終わりに掲載された練習問題を使って、理解度を確認できる点も特徴です。掲載の内容には、学習のためだけではなく、実務の参考書としても活かせる内容が含まれています。
※参考:Linux教科書 LinuCレベル1 Version 10.0対応 | 中島 能和, 濱野 賢一朗 |本 | 通販 | Amazon
まとめ
Linuxの代表的な資格には「LPIC」と「LinuC」があります。LPICが、世界中で活躍するITエンジニアに向けて作成されているのに対して、LinuCは、日本の市場に向けて作成されている資格試験です。 企業はLinuxの資格取得に向けた支援をして、人材育成に活用しましょう。
ユーキャンの法人向け人材育成サービスでは人材育成や福利厚生に関する支援を行っています。丁寧なヒアリングで課題を抽出し、その法人様にフィットするご提案をいたします。