ティール組織とは? 5つの組織モデルと重要な3つの要素・成功事例を解説

  • 公開日:2023.06.07

    更新日:2023.06.07

    ティール組織とは、管理職がすべての業務をマネジメントしなくても、現場のメンバーが主体性を持ち、意思決定していくフラットな組織のことです。この記事では、組織運営の担当者に向けて、ティール組織とは何かについて解説します。

    また、ティール組織に進化するまでの5つの組織モデルや、3つの重要な要素、海外や国外の事例についても解説します。自社の組織運営に役立ててください。

ティール組織とは

ティール組織とは、管理職から指示がなくても、現場のメンバーが主体性を発揮し、ルール作りや意思決定をしていきます。ティール組織には上下といったヒエラルキーはなく、組織が「生命体」のように、自由に変化し進化するのが特徴です。

上下関係や売上目標、各種ルールなどが敷かれた従来型の組織とは大きく異なり、意思決定や各種権限が所属メンバーに渡されることで、組織に革新的な変化を生み出します。

ティールとは

ティールとは、もともと青緑色を表し、英語で「鴨の羽色」という意味を持ちます。ティールには、原始的なものから少しずつ進化し、組織のあり方の最も発展した形を象徴する意味が込められています。

ティール組織が注目されるようになった背景

ティール組織が注目されるようになった背景は、従来の組織マネジメントの手法とは大きく異なったためです。ティール組織は2014年、フレデリック・ラルー氏が著書「Reinventing Organizations」において発表しました。

日本では2018年に「ティール組織」のタイトルで出版されています。ティール組織を取り入れることで、成功する企業が多く現れ、注目されるようになりました。

ティール組織に進化するまでの5つの組織モデル

ラルー氏は著書で、ティール組織になる前の組織モデルを、4つの色と発達段階で解説しました。組織モデルは「レッド」「アンバー」「オレンジ」「グリーン」と発達し、その後「ティール」へ進化していきます。

  • 1.レッド(赤):衝動型の組織モデル
  • 2.アンバー(琥珀):順応型の組織モデル
  • 3.オレンジ(橙):達成型の組織モデル
  • 4.グリーン(緑):多元型の組織モデル
  • 5.ティール(青緑):進化型の組織モデル

ここでは、ティールを含めた5つの組織モデルの発達段階について、詳細を解説します。

1.レッド(赤):衝動型の組織モデル

レッドは、人類における最も古く原始的な組織モデルです。レッドは「オオカミの群れ」と例えられ、圧倒的な権力を持つ者が、独裁的で支配的なマネジメントを行うことで成り立ちます。目の前の利益を短絡的に求めるスタイルは、現代ではマフィアやギャングなどの組織に多く見られます。

組織の特徴は、自分さえよければいいとする、自己中心的な思考です。自分以外を脅威と捉え、マネジメントも恐怖や力で行います。力によってメンバーを服従させるマネジメント手法のため、力を持たない側のメンバーは、より強いリーダーに従い気に入ってもらうことで安全を確保します。

レッドは今の安全や、目の前の利益に意識が向くため、戦略性はあまり高くはありません。

2.アンバー(琥珀):順応型の組織モデル

アンバーは、明確なヒエラルキー(階層的構造)が存在する組織モデルです。人類が農耕を営む社会になる中で誕生したのがアンバーであり、秩序や共通の価値観、普遍的なルールが組織には盛り込まれています。アンバーの階層型組織の代表例は、軍隊のような縦組織です。指示系統が明確なため、与えられた役割の遂行には適しているといえるでしょう。

毎年同じ時期に同じ手法を繰り返すような組織においては、アンバーは安定的な力を発揮します。一方で、個人に依存しないため、新しいアイデアが生まれにくく、状況変化に対応できないことがデメリットです。ラルー氏の著書では、グローバル化が進むビジネスにおいては不向きであると指摘しています。

3.オレンジ(橙):達成型の組織モデル

オレンジは、社会がより成熟する過程で生まれた組織モデルです。ヒエラルキー(階層的構造)はありつつ、環境変化へも柔軟に対応できることが特徴です。オレンジでは、上司や部下といった階層構造を持ちつつも、成果を上げれば、キャリアアップが可能な実力主義も取り入れています。
そのため、ある程度個人の能力を発揮しやすいといえます。

オレンジは、日本における一般的な組織モデルで、最優先事項は組織の成果です。ビジョンに向かった動きが取りやすい一方で、メンバーを組織のパーツとして扱う側面があります。その結果、個人の感情やコミュニケーションが軽視されるといった問題も生じます。こうしたスタンスは、組織の過度な競争や、長時間労働などにもつながるといえるでしょう。

4.グリーン(緑):多元型の組織モデル

グリーンは、オレンジに多様性が加えられた組織モデルです。別名「家族」と例えられるこの組織では、メンバーが主体性と裁量権を持ち、意思決定もボトムアップで行われます。レッドからオレンジまでの組織モデルとの大きな違いは、多様性が尊重され、メンバーが主体的に行動できる点です。

グリーンのリーダーが担う役割のひとつには、組織の環境づくりや業務の最大化へのサポートにあります。企業であればメンバーそれぞれの感情や協調的な繋がりを重視する一方で、意思決定で全員が合意できない場合は、依然としてマネジメント側が裁量権を持ちます。グリーンの理想は平等主義ですが、階層構造を残さねば成立しにくいことが課題です。

5.ティール(青緑):進化型の組織モデル

ティールではメンバーが対等な関係にあり、メンバー全体で組織運営を行います。ティールは組織構造を持たないため、権力を持つ上司や部下といった役割はなく、全員が平等に権利と責任を与えられます。組織の目的実現のために、それぞれが自分にできる最善を常に考えます。

ティールは、「やるべきこと」と「やりたいこと」が一致したとき、個人の主体性とモチベーションが発揮され、生産性も大きく向上し、組織のさらなる進化に繋がると考えられています。ティールでは、グリーンで課題となっている全員一致の合意を求めません。


組織の目的は全員の合意ではなく課題の解決であり、それをメンバー全員が理解しているからこそ、長時間の議論や会議は不要と考えられています。

日本企業はオレンジ:達成型の組織モデルが多い

日本企業では、オレンジの組織が一般的です。組織にはヒエラルキーが存在し、リーダーが決定権を持ち、その周りにメンバーが集まります。またリーダーは固定ではなく、プロジェクトごとに階層があるため流動的です。

メンバーは能力を発揮し成果を上げれば評価されるため、柔軟性がある反面、競争を続けることが求められます。成果を最優先にする組織構造は、過重労働の原因になる可能性が高く、現在は社会問題にもなっています。

ティール組織における3つの重要な要素

ティール組織が機能するには、メンバーの成熟度や横のつながりなどが重要です。ラルー氏はティール組織の共通点として、3つの要素があると述べています。

  • ・存在目的:エボリューショナリーパーパス
  • ・全体性:ホールネス
  • ・自主経営:セルフマネジメント

ここでは、ティール組織の理解を深める重要な要素について、それぞれ解説していきます。

存在目的:エボリューショナリーパーパス

ティール組織としての目標は、自社の存在目的の達成にあります。メンバー全員が「何のためにこの組織が存在するか(存在目的)」を共有し理解していきましょう。存在目的は固定ではなく、環境や状況に応じて流動的に進化します。

組織の方向性は、常に全体で探求し、追及する姿勢のなかで生まれます。そのためティール組織を採用する企業では、方向性を確認するためのコミュニケーション機会が多く設けられる特徴があります。

全体性:ホールネス

ティール組織では、メンバーが「ありのままの自分」でいられると同時に、対等な関係性を築きながら、能力を発揮する必要があります。その達成には、多様性を認め、否定しない環境であることも重要です。

ホールネスでは、メンバー全員の心理的安全性を確保し、「この組織は自分らしさを発揮でき、才能や個性を平等に評価する場所だ」と認識する必要があります。その結果、組織の目的とメンバーの自己実現が一致し、両者の成長が継続的に促されることになります。

自主経営:セルフマネジメント

ティール組織では個々のメンバーが権限を持ち、課題に対して指示を受けることなく主体的に対応していきます。こうした体制のために、会社は情報の透明化が求められ、メンバーは意思決定における情報や助言を適切に得られるよう、信頼関係を構築します。

助言を受けたとしても、決定権はメンバー個人にあります。セルフマネジメントが機能した組織では、固定化された役割がなく、流動的に必要なチームが生まれるような形を取ります。

ティール組織の成功事例

ティール組織は、国内外問わず採用する企業が増え始めています。ここでは、成功した5社の事例を紹介します。

海外企業A社の事例

アメリカの大手食品加工のA社では、ティール組織を導入し、自社が扱う食品のシェア獲得率を大きく伸ばすことに成功しました。主な取り組みとして、給料や報酬に関する権利は全てメンバーが持ち、合意書と成果度合いによって他のメンバーが評価します。また、全メンバーがマネジャーとして活動を行うことを採用しています。

海外企業B社の事例

アメリカを拠点とする大手アパレル系ECサイトのB社では、完全なティール組織ではないものの、組織運営では多くの独自ルールを取り入れています。例えば、定例ミーティングで個人の役割と責任の確認を行ったり、約40名のチームに1名のコーチをつけたりするなどです。こうした取り組みにより、現在B社は働きやすい企業として、たびたび注目を集めています。

日本企業C社の事例

C社では、全体性(ホールネス)を高める取り組みとして「Thanks Day」と「Good or New」を行っています。「Thanks Day」は年に1日、希望するメンバーに休暇と2万円を支給し、後日誰に対してどのような感謝をしたのか、社内ブログで共有する制度です。「Good or New」は、毎朝メンバーの長所や、24時間以内にあったニュースを順番に話していきます。

日本企業D社の事例

D社では、セルフマネジメントに通じる手法を取り入れています。具体的には、予算を決めたり何かを購入したりする場面で、メンバーが自由に意思決定できるケースを多く設けています。また、携わるプロジェクトの中身や進捗を共有し、透明性を高めることでメンバー間の信頼を高める働き方を築きました。

日本企業E社の事例

大手飲料メーカーのE社では、ミッションを全メンバーが共有しながらチームで活動をしています。課題を見つけた人がプロジェクトチームを立ち上げ、有志が自由に参加していきます。こうした取り組みにより、部門横断的なプロジェクトや勉強会の企画も盛んで、フラットな組織作りが達成された結果、売り上げも順調に伸びました。

まとめ

ティール組織とは、フラットかつメンバーが主体性を持って意思決定や行動を起こせる、従来の組織モデルからの進化系です。ティール組織の採用は、企業ビジョンとメンバー個々の目的が一致することで、最大限の効果を発揮します。

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