中小企業診断士とは中小企業の経営課題に対応するための診断やアドバイスを行う専門家であり、国家資格の1つでもあります。中小企業の成長戦略策定やその実行のための助言が主な業務で、経営資源を確保するための業務に従事する者として位置づけられており、人気の高い資格です。この記事では、中小企業診断士の試験概要や人気の理由、仕事内容などについて詳しく解説します。ぜひ、参考にしてください。

中小企業診断士とは?

そもそも中小企業診断士とはどのような資格なのでしょうか。ここでは、中小企業診断士の概要や難易度を解説します。

中小企業診断士の概要

ビジネスパーソンから注目を集めている資格として「中小企業診断士」が挙げられます。中小企業診断士とは企業の経営に関する診断や助言ができる人を認定する資格です。

企業の経営に関する知識を横断的に身につけられるため、実務に活かすだけでなくキャリアアップや独立、転職にも役立ちます。

中小企業診断士の難易度は?

中小企業診断士の難易度は決して低くはありません。中小企業診断士の試験には第1次試験と第2次試験があり、第1次試験の合格率は28~42%、第2次試験の合格率は18%程度です。どちらの数値からも、難易度が比較的高いことがわかります。

中小企業診断士の試験について

前述したように中小企業診断士の試験は、第1次試験と第2次試験があります。ここでは、各試験について詳しく解説します。

第1次試験について

第1次試験は、企業経営やコンサルティングに関する基本的な知識が問われます。試験はマークシート形式で7科目あり、以下の科目に分けられています。

  • 経済学・経済政策
  • 財務・会計
  • 企業経営理論
  • 運営管理
  • 経営法務
  • 経営情報システム
  • 中小企業経営・中小企業政策
試験日は例年8月上旬頃ですが、その年によって日付は異なるためホームページなどで確認しましょう。合格基準は全科目の総得点が60%以上かつ、得点が40%未満の科目がないこととなっています。


第2次試験について

第2次試験は応用力を有しているか判定することが目的で、筆記と口述という2つの試験に分けられています。

筆記試験は4科目からなっており、企業の問題点や改善点などに関しての問題が出されます。口述試験は面接試験のことで、筆記試験の内容をもとにした4~5問が出題されます。

筆記試験の合格条件は第1次試験と同様、全科目の総得点が60%以上かつ、得点が40%未満の科目がないことです。口述試験に合格するには、60%以上の評定であることが求められます。

実務補習、実務従事について

第1次試験、第2次試験に合格した後は、実務補習・実務従事へと進みます。実務補習、実務従事では、中小企業診断士としての診断実務能力があるかどうかが問われます。第2次試験合格後、3年以内に15日以上の実務補習を受ける、もしくは実務に15日以上従事しましょう。これらをクリアすると、中小企業診断士としての登録申請が行えるようになります。

中小企業診断士になるためには

中小企業診断士試験を受けて、中小企業診断士として新規登録申請をするための要件として、2つのステップがあります。

  • 第1次試験と第2次試験に合格すること
  • 第2次試験の合格後に実務補習を15日以上受けること、または実務に15日以上従事すること

ここでは、中小企業診断士になるための流れを解説します。

1.筆記試験に合格する

中小企業診断士の試験は第1次と第2次に分けられており、どちらにも筆記試験があります。第1次と第2次試験の筆記試験に合格することが、最初のステップです。

2.実務補習または実務に従事する

第二次試験合格日以降で以下(1)または(2)の実務要件(15日以上)を満たす必要があります。
(1)登録実務補習機関が行う実務補習を受講したこと
(2)中小企業者に対する経営の診断助言業務または、経営の窓口相談業務に従事したこと

将来性や需要はある?AIに代替されない?

中小企業診断士は、将来性のある資格なのでしょうか。ここでは、中小企業診断士の将来性や需要などについて解説します。

数値化できない指標を扱えるため

職業の将来性を判断するうえで、「AI(人工知能)に代替される可能性」は無視できないポイントです。

株式会社野村総合研究所と英オックスフォード大学の共同研究によると、「他社との協調や、他社の理解、説得、ネゴシエーション、サービス指向性が求められる職業」はAIによる代替が難しい傾向にあり、中小企業診断士はAIやロボット等による代替可能性が低いとされています。


AIは数値化できるデータの収集や分析、活用などを得意としています。一方、中小企業診断士は数値化されないデータ、たとえば企業イメージや雰囲気、ブランディングなどの定性的な情報を扱います。そのため、AIに代替される可能性は低く、将来性があるといえるでしょう。

高いコミュニケーション能力が求められる

中小企業診断士は、主に経営者とのコミュニケーションが求められる仕事です。中小企業診断士は、経営者とのコミュニケーションを通して、その思いを汲み取ることが求められるため、高いコミュニケーション能力が必要です。

中小企業診断士の仕事内容

中小企業診断士は実際にどのような業務を行うのでしょうか。ここでは、中小企業診断士の主な仕事内容を解説します。

経営コンサルティング

中小企業診断士の代表的な仕事としては、経営コンサルティングが挙げられます。企業が抱える経営課題を経営者と共有したうえで、課題解決につながるアクションやスケジュールなどの提案、必要な資源の洗い出しなどを行います。

相談窓口

中小企業診断士は公的業務にも携わっています。国や地方自治体の行政機関、都道府県等の中小企業支援センターなどの公的機関から業務委託され、不特定多数の経営者に対してアドバイスを行います。

経営診断書・経営改善計画書の作成

経営診断書、経営改善計画書の作成も中小企業診断士の重要な仕事です。経営診断書は「産業廃棄物許可申請」の際に必要な書類、経営改善計画書は金融機関から融資を受ける際に必要な書類です。

知識の発信

経営に関する専門知識を発信することも、中小企業診断士の業務に含まれます。特定の企業と顧問契約を締結して知識を提供したり、経営者層をターゲットにしたセミナーを開催して知識を広めたりすることも中小企業診断士の仕事の一部です。

中小企業診断士の活かし方

中小企業診断士を取得することで、独立やキャリアアップにつながります。しかし、中小企業診断士の資格を取得しても、どのように活かせばいいのか分からないという人も多いかもしれません。ここでは、中小企業診断士の活かし方について詳しく解説します。

コンサルタントとして独立

中小企業診断士を取得することで、コンサルタントとして独立しやすくなります。経営コンサルタントは資格がなくても行える仕事ではありますが、中小企業診断士の資格を取得することで他のコンサルタントとの差別化が図れます。加えて、独立する場合には、資格を取得するだけでなく自身の得意とする分野を作っておくといいでしょう。

社内でのキャリアアップ

もともと勤めていた企業で、中小企業診断士の資格を活かすことも可能です。特に、営業コンサルティングやマーケティング、経営スタッフなどはコンサルティング能力があると有利に働くため、中小企業診断士の資格が役立ちます。

中小企業診断士を取得するメリット

中小企業診断士を取得することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、3つのメリットを解説します。

年収アップが期待できる

企業によって金額は異なるものの、資格手当制度が設けられている場合もあるため、年収アップが期待できます。

また、中小企業診断士を取得することでコンサルタントとしての独立も視野に入るため、さらなる年収アップを狙うことも可能です。

コンサルティングの信頼性が上がる

中小企業診断士は、コンサルティング関連で唯一の国家資格です。そのため、資格を取得することでコンサルタントとしての信頼性が向上するでしょう。資格の取得難易度も比較的高いため、高い知識を有していることの裏付けにもなります。

キャリアの幅が広がる

中小企業診断士の試験範囲は広く、資格取得に向けて学習することで様々な経営知識が身につきます。試験に向けた学習を通して、経営など実務に役立つ知識も身につけることができるため、実際の業務にも活かしやすくなり、キャリアアップにもつながる場合もあります。

中小企業診断士を取得するデメリット

中小企業診断士には多くのメリットがありますが、デメリットもあります。ここでは、3つのデメリットを解説します。

独占業務ではない

中小企業診断士の業務は、独占業務ではありません。企業への診断やアドバイスなどは中小企業診断士の資格がなくても可能なので、一部の業務を独占的に行うのは不可能です。

ただし、独占業務にはあたりませんが、中小企業診断士はコンサルタント関連で唯一の国家資格であるため、信頼を獲得するのに効果的です。

実務につながるとは限らない

中小企業診断士の資格を取得したからといって、必ずしも仕事につながるとは限りません。資格があるから仕事が増えるわけではなく、身につけた専門知識を活かせる仕事を獲得する必要があります。そのため、積極的にアクションを起こすることが求められます。

年収の上がり幅には差がある

中小企業診断士の資格を取得しても、場合によっては期待したほど年収がアップしない可能性もあります。

中小企業診断士としてコンサルティング業務に携わっている人の年収は、日本の平均年収よりは高い傾向にありますが、大幅な年収アップが期待できるとは言い切れません。

中小企業診断士の年収

中小企業診断士として働く際に、どの程度の年収になるのかが気になるという人もいるでしょう。ここでは、コンサルティング業務日数の合計が100日以上の場合についてご紹介します。

中小企業診断士の年間売上(年収)で最も多いのは「501~800万円」

中小企業診断協会(現・「一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会)による「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果について(令和3年5月)によると、コンサルティング業務日数の合計が100日以上の場合、コンサルティング業務の年間売上(または年収)で最も多かったのは「501~800万円」21.4%で、「1,001~1,500万円」15.4%が続いています。



中小企業診断士のよくある質問

ここでは、中小企業診断士に関するよくある質問とその回答を紹介します。

  • 試験に合格するまでに必要な勉強時間は?
    中小企業診断士に合格するまでに必要な勉強時間は、約1,000時間程度と言われています。
  • 独学でも合格できる?
    独学でも合格可能ですが、中小企業診断士は難易度の高い資格です。そのため、通信講座の受講やスクールへの通学がおすすめです。
  • どのような人におすすめ?
    すべてのビジネスパーソンにおすすめです。
  • 他の資格と比較した場合の難易度は?
    公認会計士や行政書士などの他の国家資格と比較すると、難易度は高めです。

まとめ

中小企業診断士とは、中小企業への診断やアドバイスを行う専門家です。企業イメージや雰囲気、ブランディングといった定性的な情報を扱い、他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス指向性が求められる職業であることから、将来的にAIやロボットに代替される可能性は低いと考えられています。また、条件によっては、有資格者は年収アップも期待でき、コンサルティングの信頼性向上、キャリアアップなどにも役立つでしょう。

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この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

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