「佐藤さん」はあのしぐさから生まれた?!手話の意外な由来を紹介


手の位置や形、動きなどで会話を行う「手話」。「インスタ映え」など時代に合わせて新しいものも生まれていますが、実は意外な由来から生まれた手話もたくさんあります。今回は手話通訳士の谷千春さんにお話を伺いながら、手話の意外な由来をクイズ形式でご紹介します。
知っているようで知らない手話の世界
手話はどのようにして誕生したのでしょうか?まずは、手話の歴史について谷さんに伺いました。
「手話そのものは遙か昔からあったと考えられていますが、今私たちが使っているような近代手話の歴史は、そう古くはありません。日本では明治11年(1878年)に京都で初めて耳が聞こえない子どもたちのための学校ができ、近代手話が生まれたという説があります」(谷千春さん)
近代手話は各国で生まれ、発展していったようです。では、手話のしくみはどのようになっているのでしょうか?
「手話は『一文字ずつ表現している』と誤解されることも多いのですが、実は単語を組合わせて表現しています。例えば『おはよう』という挨拶は、『お・は・よ・う』と一つ一つの手話を組合わせるのではなく、『朝』という手話と『挨拶』という手話を使って表現します。
また、手話は『目で見る言葉』なので、音声言語とは少し考え方が違います。例えば日本語には『食べる』という言葉がありますが、この『食べる』は、『人間がパンを食べる』にも『ライオンがシマウマを食べる』にも同じ言葉を使います。しかし、目で見た時には全く違う動きをしていますよね。
そこで、手話では『人間がパンを食べる』『ライオンがシマウマを食べる』と、それぞれ違う表現の仕方をするのです」(谷千春さん)
目で見えるものを表現して、相手に伝えていく。これが、手話の大きな特徴なのだそうです。ちなみに、手話はどのようにして生まれてきたのでしょうか?
「歴史上の人物や特徴を由来として生まれる手話もあれば、親父ギャグのような生まれ方をするものもあります。例えば『ハイボール』というお酒がありますが、これは名前を呼ばれた時に『ハイ!』と返事をする『ハイ』(片手を挙げるしぐさ)と、ボールを投げるしぐさで表現します。
『チューハイ』も似ていて、キス(チュウ)と返事の『ハイ』を合わせて表現します。手話って、実はとても自由な言語なんですよ」(谷千春さん)
意外な由来の手話
ここでは、意外な由来から生まれた手話をクイズ形式でご紹介します。ぜひ一緒に考えてみてください。
スーパーやお寿司屋さんで見るマグロといえば、赤身が特徴です。そこで①「赤いお寿司」を選んだ方も多かったのではないでしょうか?実は、正解は③「黒い魚」。泳いでいるマグロは見た目が黒いところから、手話も「黒い魚」が由来となっているのです。
ちなみに、青魚の代表である「サバ」は、「青い魚」が由来となっています。
山梨県にはいろいろな名産品がありますが、やはり有名なのはブドウ。山梨県は「日本一のブドウ生産地」なのです。そこで、山梨県を表す手話はブドウが由来となっています。
ちなみに山梨県といえば富士山があることでも有名ですが、富士山は「静岡県」の由来となっているのだそうです。
意外な由来の手話 苗字編
苗字の中にも、意外な由来から生まれた手話があります。
「サトウ」といえば、思い浮かぶのが「砂糖」です。そこで、②が「佐藤さん」の由来で、「砂糖を食べると甘みが口の中に広がる」という表現の手話になっています。
このように、「同じ音」から連想されて生まれる言葉もあります。「だったら、『塩田さん』はどう表すのだろう?」なんて、考えてみるのも楽しいですね。
手話の自由な発想からすると、③の「パンダ」が由来でもあまり違和感がないように思えます。しかし、佐々木さんの由来はパンダではなく④「佐々木小次郎」が正解でした。
佐々木小次郎といえば、巌流島で剣豪・宮本武蔵と決闘したことで有名な人物です。そこで、手話では「佐々木小次郎が刀を抜いた姿」が佐々木さんの由来となっているそうです。 だとしたら、「宮本さん」はもしかすると……?気になった方は、ぜひ調べてみてくださいね。
手話にチャレンジしてみよう!
4択クイズ、すべて正解できましたか?手話は、私たちが想像しているよりもはるかに自由な発想で生まれていることが分かりました。さらに、手話を学ぶことで得られる知識は他にもあるようです。谷さんに聞いてみました。
「手話をする時、表情が豊かになります。よくいろいろな人から『耳の聞こえない人は美人やイケメンが多いですね』と言われることがあるのですが、それはなぜかというと、みなさんの表情がとても豊かだからなんです。手話は『目で見る言葉』だというお話をしましたが、手話をする時には、話すほうも見るほうも、相手の顔を見なければなりません。
さらに、手の動きだけでなく、顔の表情も合わさって手話は成立します。例えば、『この料理はまずい』と笑顔で手話をすると、相手には『この料理はおいしい』と伝わってしまうこともあります。手の動きだけではなく、話している人の表情も、とても大事な要素になるのです。
それに、最近は仕事でも、メールや電話でのコミュニケーションが増えてきています。そんな中、手話を使って表現豊かにコミュニケーションを取る人たちを見て『これが本来のコミュニケーションのあり方だ』と思って手話を学びに来る方もいるんですよ」
と谷さん。このように、自由な動機で手話を学ぶ方も増えているようです。しかし、手話を覚えるのは外国語を覚えるようなもの。とても大変なのではないでしょうか。
「最初は、『ありがとう』とか『おはよう』とか、そういった基本的な単語を、5個、10個くらいでもよいので覚えてみましょう。手話が外国語と大きく違うところは、通じなければ日本語で筆談もできるところです。身振り手振りでも伝えられますし、耳が聞こえない方の中には唇の動きを読んでくれる方も多いので、ゆっくり、はっきり話すと伝わります」(谷千春さん)
もし手話を間違えてしまったり、何か失礼なことをしてしまったりしたら、と思うとなかなか勇気が出ないものです。手話を学ぶ時、どんなことを心がければよいのでしょうか?
「よく、『もう少しうまくなってから会話にチャレンジします』とおっしゃる方がいますが、それは間違いです。水泳でもスケートでも、転びながら覚えていきますよね。手話も同じで、失敗しながら学んでいけばよいのです。それに、もしも私たちが逆の立場で、外国の方から日本語で話しかけられたら、嬉しいと思いませんか?たどたどしい日本語であっても、『頑張って覚えてくれたのだな』と幸せな気持ちになりますし、『迷惑だな』『嫌だな』なんて思わないはず。それと同じです。
また、耳が聞こえない方は『いつも困っている』という印象を持たれやすいのですが、そんなことは全くありません。私は先日、耳が聞こえない友人たちと食事に行きましたが、彼らはいつも通訳なしで、お店の人や居合わせた方たちと楽しく交流していますよ。ですから、彼らに胸を借りるつもりで、機会があればどんどん会話をしながら積極的に覚えていってほしいですね」(谷千春さん)
もしかすると、耳が聞こえない方のほうが、私たちよりもはるかに上手にコミュニケーションを楽しんでいるのかもしれません。手話を学ぶことによって、私たちも豊かなコミュニケーションの世界に足を踏み入れられそうです。
ちなみに、これから手話を勉強していくとすると、どれくらいの期間が必要なのでしょうか。
「日常的なやりとりができるようになるためなら、3週間あれば覚えられます。さらにレベルを上げて、ある程度の会話ができるようになりたいのなら、3ヵ月くらいは必要です。もっと上達して、プロとして手話通訳を目指すなら3年くらいでしょうか」
と谷さん。まずは基本的な手話を覚えて、楽しみながら学んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
取材協力
谷千春(たに ちはる)さん
1960年東京生まれ。手話通訳士。NHK手話ニュースキャスターやテレビの手話講座の講師を経て、現在、NPO手話技能検定協会副理事長。分かりやすい解説には定評があり、大学、カルチャーセンターや企業での手話講座の講師としても人気。英語の手話も堪能で、数々の国際会議でも手話通訳者として活躍している。

- この記事の監修者は生涯学習のユーキャン
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1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
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