国税専門官の試験難易度は高い?試験科目や対策方法について解説
- 更新日:2024/06/28
公務員を目指す際には「国税専門官」という職業も選択肢になります。税関係の仕事に興味があるのなら、国税専門官の試験内容や難易度をチェックし、受験を検討することがおすすめです。本記事では国税専門官の基本と試験難易度、合格のポイント・注意点などを解説します。公務員のなかでも、税関係の仕事を目指すのなら、国税専門官についてぜひ確認してみてください。
国税専門官の採用試験の難易度
国税専門官になるには、まず公務員試験の難易度を把握することから始めます。国税専門官は税務を担当する職種であることから、税に関する知識はもとより、法律や経済への確かな見識や知識が求められます。以下を参考に、国税専門官の採用試験の難易度を確認してみてください。
- 国税専門官の2023年度における合格倍率は約3倍(受験者数9,818人、最終合格者数3,274人)
- 国税専門官にはAとBの2種類あり、Aの合格倍率は3倍、Bの合格倍率は1.8倍
- 国家総合職の2023年度における合格倍率は7.5倍
- 国税専門官の試験に合格するには、最低でも1,000~1,500時間程度の勉強時間が必要
国税専門官の合格倍率について
国税専門官は2023年度において、受験者数9,818人に対して、最終合格者数は3,274人となっています。合格倍率は約3倍となるため、しっかりと勉強をしておけば合格の可能性は高まるでしょう。逆にいえば、きちんと勉強時間を確保せず、対策が不十分な状態で試験に臨むと、合格できる確率は低くなります。
国税専門官を目指すのなら、その難易度を目安に多くの時間を勉強に費やす必要があるでしょう。また、国税専門官にはAとBの種類に分けられています。国税専門官Aの合格倍率は3倍、国税専門官Bの合格倍率は1.8倍と、大きな差があります。
- 参考:国税専門官採用試験実施状況2023年度|人事院(https://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/sennmonnsyoku_daisotsu/kokuzei/kokuzei_daisotu_kekka_2023.pdf)
国家総合職と比較すると難易度は低い
2023年度における国家総合職の合格倍率は、7.5倍となっています。国税専門官の合格倍率と比較して、2倍以上の差があることが分かります。そのため国家総合職と比較した場合、国税専門官の試験難易度は低く感じられるでしょう。しかし、国税専門官には多くの専門知識が必要になるため、一概に難易度が低いと判断はできません。
国税専門官の試験には「税法」「経済学」「会計学」といった、専門知識を試す科目があります。また、判断力や応用力が必要となる問題が試験に組み込まれるため、万全の体調で高い集中力を持って臨む必要があるでしょう。試験の性質から、合格率だけで難易度を測れないのが、国税専門官の特徴です。
勉強時間の目安
国税専門官の試験に合格するには、最低でも1,000時間程度の勉強時間は必要になります。専門分野に関する知識が乏しい場合には、1,500時間を目安に勉強するケースもあります。先に解説したように、国税専門官の試験には専門分野からの出題があります。記述式による試験となるため、知識を保有するだけでなく、それを応用してアウトプットする能力も求められます。
そのため国税専門官を目指す際には、1,000〜1,500時間程度の勉強時間を確保しつつ、インプットとアウトプットの学習を繰り返すことが重要です。
国税専門官とはどんな職業?
国税専門官を目指す際には、職業としての特徴を理解することもポイントです。国税専門官がどのような仕事を担当し、どんな役割を担うのか知っていれば、就職に備えて知識やスキルの習得ができます。以下では、国税専門官がどのような職業なのか解説します。
- 国税専門官とは、税金の知識や租税収入の確保において、会計や法律関係の専門知識を用いた税務の業務を担当
- 国税専門官には、「国税調査官」「国税徴収官」「国税査察官」の3種類ある
- 国税専門官になると、勤続年数に応じて税理士試験の科目が免除される制度があり、税理士へ転職しやすい
国税専門官は税金に関するプロフェッショナル
国税専門官とは、税金の知識や租税収入の確保におけるプロの職業です。主に会計や法律関係の専門知識を用いて、税務の業務を担当します。税務は間違いが許されないため、高い集中力と責任感を持って仕事に臨む必要があります。専門知識を確保することはもちろん、それを正確に仕事に活かせる能力が、国税専門官には必要です。
国税専門官になるには税金についての知識を網羅し、それを丁寧に解説できるスキルを身につけることがポイントです。専門家とばかり仕事をするのではなく、幅広く、世間の人々とも深く接する点が国税専門官の特徴です。高圧的な態度にならないように、柔らかい物腰で仕事をするのも1つのコツになるでしょう。
国税専門官の種類について
国税専門官には、「国税調査官」「国税徴収官」「国税査察官」の3種類があります。「国税調査官」は会社や個人などの納税義務者を訪問し、正しい税申告がされているかを調査・検査します。申告に問題があった場合などには、今後の対応を見直すように指導します。
「国税徴収官」は、納付期限までに納税しなかった個人や会社に、税金の督促や滞納処分を行う職種です。納税を怠ることはときに犯罪となるため、適切な指導のもとで再発防止を促します。「国税査察官」は、悪質だと判断される脱税者を対象に、操作や差押を実施する職種です。裁判官から許可状を得たうえで、矯正調査を実施して刑事罰を求刑します。
国税専門官になると税理士へ転職しやすくなる
国税専門官になると、勤続年数に応じて税理士試験の科目が免除される制度があります。10年以上で税法3科目、23年以上で会計学と税法の全試験科目が免除となります。そのため国税専門官で経験を積んでから、税理士に転職・独立するケースも多いです。将来設計の1つに税理士という職業を加えられる点も、国税専門官の特徴です。
国税専門官になるには?
国税専門官という職業への理解を深めたら、続いて「国税専門官になるための方法」を解説します。どのようなルートで国税専門官を目指せるのか把握し、必要な準備を進めることがポイントです。以下を参考に、国税専門官になるための方法をチェックしてみてください。
- 国税専門官採用試験に合格し、採用候補者名簿に登録される
- 国税専門官採用試験の受験資格は、年齢や学歴、日本国籍を有する者などさまざま
国税専門官採用試験に合格する
国税専門官になるには、国税専門官採用試験に合格する必要があります。試験に合格して採用候補者名簿に登録されることで、国税局や税務署への就職が可能となります。まずは採用試験の合格を目指して、勉強することが重要なプロセスになるでしょう。しかし、先に解説したように、国税専門官の試験難易度は高めです。 多くの勉強時間を確保できなければ、合格を勝ち取ることは難しいでしょう。ですから、具体的な勉強スケジュールと勉強方法を確立して、効率よく学習ができる環境を構築することが先決です。「とにかく時間をかけて勉強する」という根性論ではなく、論理的かつ効率重視の勉強法を実践することが合格への近道になります。
国税専門官採用試験の受験資格
2023年度国税専門官採用試験の受験資格は、以下のようになっています。
- 1.平成5(1993)年4月2日から平成14(2002)年4月1日生まれの者
- 2.平成14(2002)年4月2日以降生まれの者で、次に掲げるもの
- (1)大学(短期大学を除く。)を卒業した者及び令和6(2024)年3月までに大学を卒業する見込みの者
- (2)人事院が(1)に掲げる者と同等の資格があると認める者
基本的に年齢と学歴が、受験条件として設定されています。1の条件に当てはまらない場合には、短大を除く大学を卒業および卒業見込みを得る必要があります。国税専門官を目指すのなら、大学への進学を検討しておきましょう。また、受験できない人の条件も、以下のように定められています。
- (1)日本の国籍を有しない者
- (2)国家公務員法第38条の規定により国家公務員となることができない者
- ○禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者又はその刑の執行猶予の期間中の者その他その執行を受けることがなくなるまでの者
- ○一般職の国家公務員として懲戒免職の処分を受け、その処分の日から2年を経過しない者
- ○日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
- (3)平成11年改正前の民法の規定による準禁治産の宣告を受けている者(心神耗弱を原因とするもの以外)
- 参考:国税専門官に関するQ&A|国税庁(https://www.nta.go.jp/about/recruitment/kokusen/qa/01.htm)
国税専門官の試験概要について
国税専門官になるためには、試験の合格に向けた専門の対策が必要です。対策をするにはまず試験概要を把握し、何を学ぶべきか理解することが重要です。以下では、国税専門官の試験概要を解説します。
- 国税専門官の試験では、「基礎能力試験」と「専門試験」を受験する必要がある
- 試験種目は国税専門A(法文系)・B(理工・デジタル系)に分かれているが、共通項もある
国税専門官の試験は「基礎能力試験」と「専門試験」で構成される
国税専門官の試験では、「基礎能力試験」と「専門試験」を受験する必要があります。「基礎能力試験」は多肢選択式となり、40題を2時間20分で解く形になります。「専門試験」には多肢選択式と記述式があり、記述式は1題を1時間20分で解きます。(いずれも2022年の場合)人事院のホームページでは、試験の問題例が公開されているため、参考にするといいでしょう。国税専門官の試験は1次試験で筆記試験を行い、2次試験で人物試験(面接)をする流れが基本です。
- 参考:国税専門官採用試験|人事院(https://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/mondairei/mondairei_21.html)
試験種目は国税専門A・Bで分かれる
国税専門官の試験種目は、国税専門A・Bで分けられます。国税専門A(法文系)と国税専門B(理工・デジタル系)の試験範囲には共通項があり、「知能分野」の文章理解・判断推理・数的推理・資料解釈、知識分野の自然・人文・社会(時事を含む)は、基礎能力試験としてどちらの場合でも受験します。
専門試験は国税専門A・Bで内容が異なり、それぞれ以下のとおりです。
国税専門A:<必須>民法・商法、会計学(簿記を含む)
<選択>憲法・行政法、経済学、財政学、経営学、政治学・社会学・社会事情、英語、商業英語、憲法、民法、経済学、会計学、社会学
国税専門B:<必須>基礎数学、民法・商法、会計学
<選択>情報数学・情報工学、統計学、物理、化学、経済学、英語、科学技術に関連する領域
国税専門官の試験に合格するためのポイント
国税専門官の試験に合格するためには、いくつかのポイントを踏まえて臨むのがポイントです。合格の確率を少しでも高められるように、事前準備を進めておきましょう。以下では、国税専門官の試験に合格するポイントについて解説します。
- 専門試験は基礎能力試験の1.5倍の配点
- 国家公務員試験の教養問題に加えて、民法・商法や会計学の勉強が必須
- 試験日程を確認し、早くから勉強時間を確保すること
専門試験をしっかりと勉強する
国税専門官の試験では、専門試験をしっかりと勉強することが重要です。専門試験の配点は、基礎能力試験の1.5倍となるため、確実に正答することが合格に近づきます。専門試験を落とさないように時間をかけて勉強し、試験中も意識して集中するように心がけましょう。
民法・商法や会計学の勉強が必須
国税専門官の試験では、国家公務員試験の教養問題に加えて、商法や会計学などが出題されます。そのため商法や会計学の勉強が、合格には必須となります。商法や会計学の出題範囲は広いため、難しく考えられるでしょう。しかし、難易度が低めの問題が出されることも多いため、しっかりと勉強できていればスムーズに点が取れます。
余裕を持って試験勉強に取り組む
国税専門官を目指す際には、余裕を持ったスケジュールで試験勉強に取り組むのも重要です。試験日程を確認し、早くから勉強時間を確保することで、直前になって慌てずに済みます。1日に必要な勉強時間を計算し、毎日コツコツと続けることがポイントです。
国税専門官の試験を受ける際の注意点
国税専門官の採用試験を受ける際には、注意点があります。事前に詳細を確認し、後悔のないように備えるのがポイントです。以下を参考に、国税専門官の採用試験における注意点をチェックしておきましょう。
- 国税専門官になるには、筆記試験と面接での合格が必要
- 試験合格後に税務大学校で約3ヵ月間の研修を受け、その後税務署で1年間の実務経験を積む
面接対策も必要になる
国税専門官になるには、面接対策も欠かせません。筆記試験と面接で合格することが、採用される条件になることは忘れないようにしましょう。独学では面接対策をする機会がないため、専門の学習サポートを活用する方法がおすすめです。
国税調査官になるには試験合格後に研修が必要
国税調査官になるには、試験合格後に研修が必要となります。税務大学校で約3ヵ月間の研修を受け、その後税務署で1年間の実務経験を積むのが基本的な流れです。さらに専攻税法研修と専科研修を受けることで、ようやく国税専門官として任用されます。試験に合格したあともさまざまな試練が待っていることは、事前に把握しておきましょう。
まとめ
国税調査官は税務のプロフェッショナルとして、国になくてはならない職業です。国税調査官になるには試験を突破して、その能力を採用者に示す必要があります。まずは国税調査官という職業の特徴と、採用試験の概要を確認し、具体的な学習スケジュールを構築することから始めてみましょう。
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- この記事の監修者は生涯学習のユーキャン
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