昨年2018年は、AIスピーカーの流行や最新のAIを搭載した「aibo」の販売など、一般家庭にもAI・ロボットが普及し始めた1年となりました。また、地震や台風による被災地での復興支援にもロボットが大活躍しました。
これまで以上にAI・ロボットの活用に期待が集まる一方、人間の仕事がなくなってしまうのでは、という心配の声も聞かれます。そこで、ユーキャンでは20~40代のビジネスパーソン310名を対象に、AI・ロボットによる仕事代替に関する意識調査を実施するとともに、ロボット研究の第一人者である大阪大学の石黒浩教授にお話を伺いました。
自身の仕事は
全く代替されないと思う方が40.0%
はじめに、10年後、自身の日々の業務がAI・ロボットに代替されていると思うかを聞いたところ、40.0%が「代替されない」と回答しました。
次に、「代替される」という方に自身の業務の何%が代替されると思うか聞いたところ、21~30%という意見が最多に。すべての意見を平均すると自身の業務の22.2%がAI・ロボットに代替されると考えていることが判明しました。
一方、世の中の1/3の仕事が
AI・ロボットに奪われると回答。
一方、10年後、世の中の業務がどれくらいAI・ロボットに代替されているかを聞いたところ、10%以下と答えた方の割合は全体の7.7%という結果に。平均すると33.2%の業務がAI・ロボットに代替されると考えていることが分かりました。
自身の仕事は全く代替されないと考えている方が多い反面、世の中の仕事は1/3がAI・ロボットに代替されると考えているようです。
給与は「現在より減っている」との
回答が「増えている」を上回る結果に。
AI・ロボットの普及による自身の給与の変化について聞いたところ、「現在より減っている」(28.7%)との回答が、「現在より増えている」(16.1%)との回答を大きく上回る結果となりました。給与面においては、影響を不安視する方が多いようです。
約半数がAI・ロボットによる
仕事代替に期待!
AI・ロボットによる仕事代替については、約半数が期待している(51.0%)という結果に。職種別にみると、管理職は回答者全員が、「とても期待している」もしくは「期待している」と回答しました。また、AI・ロボットに関しての知識について聞いたところ、「知らない」と回答した人が54.5%。また、「知らない」と回答した人の方が、AI・ロボットによる仕事代替に対し「不安」と回答していることも明らかになりました。不安を解消したいという方は、AI・ロボットについて調べてみるのもいいかもしれません。
期待する理由は
「人間がすべき仕事に集中できるから」
AI・ロボットによる仕事代替に期待する理由としては、「人間がすべき仕事に集中できるから(38.0%)」という回答が最多。「仕事の量が減ったり、残業が減るから(28.5%)」、「ヒューマンエラーを減らすことができるから(26.6%)」という理由にも多くの票数が集まりました。
一方、不安に感じる理由としては「人間の仕事が奪われ失業者が増えるから(40.0%)」、「自分の仕事がなくなる恐れがあるから(36.8%)」、「必ずしも商品・サービスの品質が保証されるものではないから(26.3%)」と続きました。AI・ロボットの仕事代替に対し、期待と不安が二極化していることが明らかになりました。
管理職、専門/技術職の6割が
すでに奪われないスキルを保持。
主な職種別「持っている」と回答した方の割合
次に、現在、AI・ロボットへ代替されないスキルを持っているか聞いたところ、持っている方は38.7%、持っていない方は34.2%という結果になりました。
職種別にみると、管理職、専門/技術職の人は大半が「持っている」と回答したのに対し、サービス職、事務職は「持っている」方の割合が20%台と、職種によって大きく異なる傾向があることが分かりました。
身につけておきたいスキルは
専門資格(専門知識・技術)
AI・ロボットがさらに発展している10年後に備えて身につけておきたいスキルは、1位「専門資格(28.1%)」という結果に。専門/技術職の方の大半が、すでに代替されないスキルを持っていると回答しているだけに、専門資格は取っておいて損はないようです。
その他「実行力(24.2%)」、「論理的思考力(23.9%)」、「課題を見つける洞察力(23.2%)」と続きました。
ビジネスパーソンへの調査結果を踏まえ、ロボット研究の第一人者である大阪大学の石黒 浩教授に、「ロボット技術発展への期待と不安」や「身につけるべきスキル」について、専門家ならではの見解をおうかがいしました。
ロボットや新しい技術の発展に対し、不安に思うのは当然で、昔から一緒です。例えばスマートフォンが登場した時もプライバシーの問題が取り沙汰されました。それでも今はみんなが使っています。技術の発展には良い面と悪い面があり、良い面を正しく理解すれば、その技術を使いたいと思うようになります。そうやって、新しい技術は受け入れられていくのです。
とにかく不安を解消したいという方は、ロボットについて学ぶしかありません。ロボットの中身を知れば、何が不安なのかが分かり、何をしていればロボットに勝てるかも判断できるはずです。
ロボットが長けているのは、人間には出来ない膨大な量のデータを高速で、ひたすら処理・分析できる点です。ですから、データ入力や検品作業のような仕事は、今後、ロボットに急速に代替されるでしょう。
また、ロボットとのワークシェアは、すでにある程度進んでいると言えます。医療の現場では、ロボットの方が正確に検査できますし、厨房はロボットだらけという飲食店も増えてきています。
ただし、それらの仕事の全体がロボットに奪われるということはないので安心してください。患者さんへのカウンセリングのような人と心を通わせるような仕事は、これからも人間のすべき仕事ですし、どんな時も不測の事態に対応できるのは人間だけです。ロボットはあくまで道具です。道具が発展し世の中がどんどん便利になっていくと考えればいいのです。さらに、ロボットを上手く活用することで新しい仕事も生まれてくるでしょう。
端的に言えば、ロボットが発展していく中で、人が身につけるべきスキルはコミュニケーション力やカウンセリング力だと思います。
例えば、これまで介護の現場では、食事や入浴といった身体的な補助を提供するのに精一杯で、カウンセリング的な要素は重要視されてきませんでした。しかし今後は、ロボットの活用により身体的な補助の負担が軽減し、カウンセリングの要素がより重要視されていきます。
他の仕事でも同じです。ロボットには、万人に対してホスピタリティのある仕事は難しいです。だからこそ、人と関わるスキルを高めるべきだと思います。
今後ロボットが発達することでコミュニケーションはより活発になると思っています。例えば、自閉症や認知症の方の中にはロボットとは上手く会話できるという方がいます。医師は、そのロボットとの会話から適切な診療計画を立てていくのです。ロボット活用以前であれば、患者の状態を理解できないまま、診療を進めるしかなかったことを考えると、より平等な治療が受けられるようになったといえます。
技術というのは本来、世の中の様々な人をサポートするためにあります。技術が発展することで様々な人をサポートできるロボットが登場し、平等な世の中になる事を私は期待しています。
高齢化社会が進む中、人と密に関わる介護福祉士は今後ますますその重要性が認識されるでしょう。また、ロボットを活用することで身体介護の負担が減り、利用者への相談・助言が主業務になる可能性も。体力も必要という介護のイメージにも変化が訪れるかもしれません。
詳細はこちら社会福祉士の主な仕事は、高齢者や障害者など福祉サービスを必要とする人の相談に応じ、助言や援助を行うことです。さまざまな立場の方の気持ちを理解するためには、思いやりの心と高いコミュニケーション力が必要となり、人間にしかできない仕事と言えます。
詳細はこちら企業に対しカウンセリングを行い、最善の解決策を提案することが中小企業診断士の主な仕事。それぞれの企業に応じた解決策はAIの計算や分析だけでは正解を出すことが難しく、複雑な判断は今後も人間が担うと考えられます。
詳細はこちら子供のわずかな変化や不測の行動に対応する必要がある保育士。コミュニケーション力だけでなく、高いホスピタリティが必要とされます。また、思いやりの心を持つ大人に育てるためには人間が育てるべきという人道的な意見もあり、ロボットに置き換わる可能性は低いと推測できます。
詳細はこちら職場での人間の機微な感情やストレスを、ロボットやAIが完全に理解することはできません。だからこそメンタルへルスについての正しい知識を身につければ、部下や職場全体の心の問題や不安に寄り添うことのできる重要な人材として重宝されるでしょう。
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