2021年06月15日
企業にとってニューノーマルに対応した事業転換が求められる現状において、適切なリーダーシップを発揮できる「次世代リーダーの育成」は急務と言えます。
HR総研(ProFuture株式会社)が2020年8月に実施した「現在の採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオに関する課題」※1 の調査では、「次世代リーダー育成」を課題とする企業が最も多く56%、次いで「マネジメントスキル向上」を挙げる企業が42%という結果が出ており、これを裏付けています。
そこで今回は、マネジメント研修に定評のある立花講師に、次世代リーダーの育成についてお話いただきました。
講師プロフィール
立花 敏男講師
元キヤノン株式会社周辺機器事業本部 理事・副事業本部長
Gallup認定ストレングスコーチ、(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
大学卒業後、キヤノン株式会社入社。2度のニューヨーク駐在を経て2014年退社。この間、周辺機器事業本部副本部長、事業部長、理事・顧問を歴任。現在はコンサルタントや、研修講師として豊富なビジネス経験から得た知見を多くのビジネスパーソンにシェアしている。
管理職とは、ただ人を管理すればいいというわけではないと考えます。とにかく、どんな人が自分のチームに入ってきても、成果を上げるように引っ張っていくことが必要ですね。チームを率いてパフォーマンスを引き出し、その結果に対して責任を負っている人が“管理職”であると考えます。
大学時代、私は剣道部の主将として団体戦で全国大会に出場しました。この経験が元となり、常にチームとして勝っていたいと思うようになりました。そして管理職も同様に、チームとして成功することを常に重視する人であるべきです。メンバーと協力しながらチームとして成果を上げることを目指すべきだと考えます。
例えば、管理職として新しいチームでプロジェクトを任されたとします。会社からは、結果を早く出すよう求められることもありますが、信頼関係がないなか仕事を急ぐだけだと、かえって遠回りになってしまいます。プロジェクトは、信頼関係を構築した後に着手すべきだと考えたほうがよいでしょう。
信頼関係を築くには、まずは部下を信頼し、かつ自らの心を開くことが重要だと考えます。上司がどんな人か分からないと、部下が発言をためらい、忖度してしまうことがあるからです。まずは「僕はこういう者である」「これが好きだ」などと、積極的に自己開示をし、自分から心を開くことで信頼関係の構築に努めましょう。
私自身の経験から、信頼関係の構築には少なくとも3~6か月かかります。信頼関係ができあがるまでは、焦らずに、チームのメンバーがこれまでやってきたことを尊重しながら、プロジェクトをすすめていく方がよいでしょう。また、チームをしばらく観察していると、キーパーソンが分かるので、その方と協力して業務を進めると、良い流れができます。
成果を上げることができるチームを作るためには、人材を単なる労働力として捉えるのではなく、経営資源だと考えることが重要です。そのために「弱み」ではなく「強み」に着目することで、その人の力を引き出すことができるのではないかと考えます。
実は、私自身が昔から「弱みの矯正」というのが大嫌いで、「強みがあれば弱みなんていいじゃないか」と考えていました。そんな折知ったのがストレングスファインダー(R)※2 でした。自分の強みに意識を向けそれを活かすことで最大の能力を発揮するというストレングスファインダー(R)の考えが、僕の考え方と非常にマッチしたんです。ストレングスファインダー(R)を研修で取り入れると、強みにフォーカスするので自己肯定感が高まり、モチベーションが上がります。また、チームで行うと、メンバーそれぞれの特徴的な資質がわかるので、相互理解ができ、余計な軋轢がなくなります。
ただし、各自の強みを活かすだけではチームでの仕事が回らないこともあります。そんな時は、お互いの弱みを別の人の強みで補い合う「強みの貸し借り」を行うとよいでしょう。
ストレングスファインダー(R)は、自分自身の強みを理解できるだけでなく、チームビルディングにも役立つ、非常に有効なアセスメントなのです。
※1:出展:HR総研:人事の課題とキャリアに関する調査 結果報告【人事の課題編】 https://hr-souken.jp/research/1649/
※2:ストレングスファインダー(R)とは?
アメリカのギャラップ社が開発した、人の「強みの元=才能」を見つけ出す全177問の選択方式のWeb診断アセスメントです。34に分類された資質(似たような才能の集まり)から自身の特徴的(生産的に適用できる思考、感情、行動のパターン)な資質が順位付けされ診断できます。
育成には段階を踏むことが必要です。そのステップについて、立花講師が教えてくださいました。
第一に、マネジメント理論や管理職の役割など、ベースとなる考え方を学ぶ必要があります。理論を学んでいる時には、実際の業務とのつながりが見えづらいですが、プロジェクトを進めていくと、点と点が線になるという実感があります。
第二に、プロジェクトマネジメントの基本となる考え方を学ぶべきです。プロジェクトマネジメントの仕事の8割はコミュニケーションをとることです。普段から各部門との連携を密にとることによって、トラブル回避ができ、スムーズにプロジェクトが進みます。プロジェクトの成功はリーダーのコミュニケーション力に大きく左右されます。
第三に、上記の考え方を学び、きちんと理解したうえで、まずは小規模のプロジェクトを任せて経験を積ませます。新任の場合、いきなりプロジェクトを任せるのではなく、組織リーダーとしてのスキルを身につけるため、ミーティングマネジメントがよい練習となります。
そして最後に大きなプロジェクトのリーダーを任せます。