コンセプチュアルスキルとは?高める方法やメリットを紹介

  • コンセプチュアルスキルとは?高める方法やメリットを紹介

    公開日:2024.07.09

    更新日:2024.07.09

    コンセプチュアルスキルは「概念化能力」とも呼ばれ、物事の本質を見極め、根底にある問題を発見する能力です。 複数の要素が絡み合った総合的な能力であり、日々の業務をこなすことで磨かれるスキルです。この記事ではコンセプチュアルスキルの概要や活用モデル、構成要素、育成方法などを解説します。

コンセプチュアルスキルとは何か

コンセプチュアルスキルとは、物事の本質を見極める能力を指します。日本語では「概念化能力」とも呼ばれ、別々の事象や物事に共通点を発見し、根底にある問題を見抜く力とされています。

コンセプチュアルスキルが必要になった理由<

コンセプチュアルスキルの高い人は、物事の本質を見抜き、課題となる根本原因を把握する力に長けています。そのためコンセプチュアルスキルには組織を発展させる効果があり、経営者には必要とな能力されています。 現代は「予測できない時代(VUCA時代)」といわれており、数年先の予測も難しい状況です。コンセプチュアルスキルは予測できない時代であっても、素早く変化に対応するために必要なスキルでもあります。経営者はもちろん、社員にもコンセプチュアルスキルを身に付けてもらうことで、先行きの不透明な時代でも正確な舵取りができるようになるでしょう。

コンセプチュアルスキルの2つのモデル

コンセプチュアルスキルには、ロバート・カッツ氏が提唱したカッツモデルと、ピーター・ドラッカー氏の提唱したドラッカーモデルの2種類があります。それぞれのモデルの特徴について紹介します。

カッツモデル

カッツモデルはコンセプチュアルスキルを提唱したハーバード大学教授のロバート・カッツ氏が、ビジネスモデルとして生み出したものです。カッツモデルは社員の階層別に3段階に分けており、経営者層であるトップマネジメントほど高いコンセプチュアルスキルが求められるとしています。カッツモデルでは、トップマネジメント・ミドルマネジメント・ロワーマネジメントの3つの階層があります。いずれの階層でもコンセプチュアルスキル、ヒューマンスキル、テクニカルスキルの3つが必要です。ただし、階層によって求められるスキルの割合に違いがあるとしています。
例えば、一番下のロワーマネジメントでは現場で求められるテクニカルスキルの割合が高く、コンセプチュアルスキルの割合は低いです。逆にトップマネジメントはコンセプチュアルスキルの割合が高く、テクニカルスキルが低くなります。経営者は予測できない時代を乗り切るために、物事の本質を的確に理解し、組織を運営していく必要があるからです。最もバランスを求められるのがミドルマネジメントで、良好な人間関係と社会を見る視野の広さ、現場での経験も求められます。

ドラッカーモデル

ドラッカーモデルは、オーストラリアの経済学者であるピーター・ドラッカーが提唱したビジネスモデルです。その特徴は、ナレッジワーカー(知的労働者)が追加されている点です。ドラッカーモデルでは階層を4つに分けています。上からトップマネジメント、ミドルマネジメント、ロワーマネジメント、ナレッジワーカーです。求められるスキルはマネジメントスキル、ヒューマンスキル、テクニカルスキル、そしてコンセプチュアルスキルの4つです。ただし カッツモデルとは異なり、すべての階層で、同じ割合のコンセプチュアルスキルが必要としています。この理由は、予測できない時代を生き抜くには経営層だけでなく、すべての社員に自律性が求められるからです。他にもナレッジワーカーにはマネジメントスキルがなく、ヒューマンスキルとテクニカルスキルが重要となっている点も、カッツモデルと違います。ドラッカーモデルに基づけば、コンセプチュアルスキルはすべての社員に求められ、会社を支える土台になるものといえるでしょう。

コンセプチュアルスキルの構成要素とは

コンセプチュアルスキルは1つのスキルではなく、14個の構成スキル・要素で成り立っています。14個の構成スキル・要素とは次の通りです。

構成スキル・要素 内容
受容性 
未知の価値観・特性と遭遇したときに、否定せずに受け入れる能力 
柔軟性 
時代の変化、社会のニーズを受け入れ、予想外の事象にも柔軟に対応する能力 
知的好奇心 
新しい物事を拒絶せず、知識として吸収する能力 
探求心 
起こった事象に対して、納得できるまで究明しようとする能力 
応用力 
既存の技術や経験を生かし、別の物事に活用する能力 
チャレンジ精神 
未知・未経験の領域や事象に対して、失敗をおそれずに挑戦する能力 
俯瞰力 
物事・事象を高い視点から見下ろし、広い視野で全体像を把握する能力 
直観力 
瞬間的なひらめきを生かし、物事に対応する能力 
先見性 
目の前のことだけでなく、何年も先の未来を予測して行動する能力 
洞察力 
物事の本質や変化を見抜き、原因を分析・把握する能力 


コンセプチュアルスキルは単独ではなく、さまざまなスキルが複合的に絡み合ったスキルです。そのため上記の構成要素のどれか1つだけが高くても成立せず、学び続ける姿勢が重要になります。組織全体でコンセプチュアルスキルを高めるには、階層別に必要なスキルを研修・ワークショップなどで学ぶのが効果的です。 

コンセプチュアルスキルが高い社員の特徴

コンセプチュアルスキルの熟練度は、人によって差があります。どのような社員が高いコンセプチュアルスキルを持っているのか、共通する特徴について紹介します。

話がわかりやすい人

コンセプチュアルスキルが高い人は、ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの能力が高く、わかりやすく話を伝える力があります。論理的思考の高さは筋道立てて物事を考える力の強さであり、人を納得させるための根拠を提示できるからです。「この人の話は理解しやすい」「要領をまとめてくれている」と感じる話し方をする人は、コンセプチュアルスキルが高い人といえるでしょう。

作業効率の良い人

コンセプチュアルスキルが高い人は、物事を俯瞰する力と洞察力に長けています。そのため仕事をする際も全体の工程を考えたうえで、効率的な方法を選択できます。要領が良い人、仕事を効率的に進められる人は、コンセプチュアルスキルが高い人であることが多いです。

柔軟な発想力を持つ人

コンセプチュアルスキルが高い人は、柔軟な発想力と未知のものを受け入れる受容力も備えています。 新しい知識を素直に受け入れられるため、固定観念にとらわれることなく、柔軟に物事を考えられます。また単に奇想天外な発想をするのではなく、物事の本質を捉えたアイデアである点も特徴です。例えば新商品の開発をしたり斬新な戦略を編み出したりする人は、コンセプチュアルスキルが高いといえるでしょう。

社員のコンセプチュアルスキルを高めるメリット

社員がコンセプチュアルスキルを高めることでどのようなメリットがあるのか、4つのポイントを紹介します。

課題の本質を見抜いて解決できる

コンセプチュアルスキルは物事の本質を見極め、解決までの道筋を導き出す能力です。スキルを高めることで企業課題を把握し、問題の本質を見抜く力も高まります。企業課題の解決には対症療法ではなく、根本原因を解決する必要があります。コンセプチュアルスキルを高めることで問題の原因を究明し、解決へ至ることができるでしょう。

イノベーションにつながる

コンセプチュアルスキルを高めると、企業にイノベーションを起こしやすくなります。コンセプチュアルスキルには柔軟性や応用力、チャレンジ精神といった能力も含まれます。複合的な能力を高めるコンセプチュアルスキルでは、社員が自らの想像を膨らませ、新たな事業につながる可能性を高められるでしょう。自由な発想力は固定観念にとらわれず、本質を捉えながらも新たなチャンスを掴むことにつながります。既存のサービスや商品にはない新たな価値を生み出し、新規の市場を開拓できるチャンスになります。

社員のパフォーマンスが高くなる

コンセプチュアルスキルの高さは、そのまま社員のパフォーマンスの高さにも結びつきます。論理的思考力や応用力といった複合的なスキルが高まれば、業務効率を最大化できるからです。業務プロセスの無駄を社員が自ら改善し、生産性の向上も期待できます。社員のパフォーマンスが高まれば、組織全体の業務がスリム化し、コスト削減と利益向上につながるでしょう。

トラブルを事前に回避できる

企業が直面するトラブルの中には、表面化していないだけで常にリスクが潜んでいるものもあります。コンセプチュアルスキルの高い社員がいると、俯瞰的に組織や業務プロセスを把握し、トラブルのリスクを事前に察知できます。漫然と仕事をしていれば気づかないポイントも、コンセプチュアルスキルの高い人は原因を徹底的に追究できるからです。会社と社員をトラブルから守るためにも、コンセプチュアルスキルは不可欠です。

コンセプチュアルスキルを向上させる方法

社員のコンセプチュアルスキルを向上させる3つの方法を紹介します。

抽象化と具体化を繰り返す

コンセプチュアルスキルの高い人は、物事の抽象化と具体化の両方を考え、まとめる能力に長けています。抽象化と具体化の能力を高めることで、コンセプチュアルスキルに必要な能力を高められるでしょう。抽象化とは日々の業務や事象を分析し、構成する要素や共通点を洗い出していく作業です。洗い出した結果、そこから共通点や要素でまとめ、業務プロセスや構造を多面的に捉えられます。具体化は成功例や失敗例などをまとめ、具体的に重要なポイントを表現する作業です。抽象化した事象を具体化することで、物事に対する理解を深める効果があります。2つの作業を繰り返すことで、コンセプチュアルスキルの鍛錬になります。

MECEを重視する

MECE(ミーシー)とは「モレ・ダブりがない」状態を指す言葉です。コンセプチュアルスキルを鍛えるには、MECEを意識した考え方を身につける必要があります。物事にモレ・ダブりがある状態では、本質を見抜きにくく、課題解決につなげることが難しくなるからです。日常の業務からMECEを意識しておくことで、本質を見抜く力が高められます。

物事の定義を明確化する

日ごろの業務で交わす会話で「どこか意図がかみ合わない」といった経験がある人は少なくないでしょう。物事や言葉の定義を曖昧なままで会話すると、自分と相手で言葉の受け取り方にズレが生じるためです。一つひとつの物事や言葉の定義を明確にすることで、コンセプチュアルスキルが高まり、伝わりやすい話し方に変わっていくでしょう。

企業が社員のコンセプチュアルスキルを育成する方法

企業が社員に働きかけ、コンセプチュアルスキルを育成する方法を2つ紹介します。

OJT

OJTは指導者と指導を受ける人がパートナーを組み、実践を通して能力開発を行う教育方法です。一般的には同じ職場の先輩社員が指導者となり、新人や若手社員を教育するケースが多いです。OJTでは日々の業務を振り返りながら、良かった点と悪かった点をフィードバックします。指導者には高いコンセプチュアルスキルが求められ、指導を受ける社員は実践を通してスキルを磨けます。OJTでは座学のような定型的な内容ではなく、より実践的な内容から学べるのが特徴です。また指導の中で抽象化と具体化の実例を学べば、効果的にコンセプチュアルスキルが鍛えられます。

e-ラーニング

e-ラーニングはPCやスマホ、タブレットなどの端末を利用し、オンラインで学習するシステムです。LMSという学習管理システムを利用するため、誰がどの研修をどのくらい学んだかがデータとして確認できます。OJTやOff-JTとは違い、業務の合間や隙間時間、自宅でも学習できる点が特徴です。 e-ラーニングを利用したコンセプチュアルスキルの学習のメリットは、各自のペースに合わせられる点です。集合研修のように決まった日時に講義を受けるのではなく、モチベーションの高いときなどを選んで学習することができます。また自分の学習進捗に合わせて学習内容を振り返ったり、先に進んだりすることも自由です。時間も場所も問わず学べるという点で、優れた学習方法といえるでしょう。

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まとめ

今回はコンセプチュアルスキルについて、スキルの概要や2つのモデル、構成要素、スキルを育成する方法などを解説しました。 コンセプチュアルスキルは業務の本質を見極め、問題の解決策を導き出すための重要なスキルです。 論理的思考や柔軟な発想、多面的視野など多くの要素が必要ですが、社員のスキルアップを通じて、企業のイノベーションにもつながります。日々の業務から抽象化と具体化を繰り返すことで、コンセプチュアルスキルを鍛えることも可能です。企業を支える人材を育成するためにも、社員のスキルアップを支援してみてはいかがでしょうか。

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