浮世絵入門講座

葛飾北斎　『冨嶽三十六景　凱風快晴』

北斎の代表作『冨嶽三十六景』全46作品中の１点で、「赤富士」としても名が通っています。“凱風”とは夏の早朝に吹く柔らかな南風のこと。富士山の背景に雲が湧き上がる、いかにも夏らしい風景です。『冨嶽三十六景』シリーズは印象派の画家たちにも大きな影響を与えました。
天保元-3(1830-32)年頃　所蔵：メトロポリタン美術館

葛飾北斎　『冨嶽三十六景　東海道品川御殿山ノ不二』

御殿山は現在の品川区北品川三丁目付近にあった丘陵。江戸時代には江戸湾が一望でき、桜が植樹され、品川宿からも近い桜の名所でした。桜の向こうには富士山、桜の下の楽しげな花見客。桜と富士山をセットで満喫する江戸の花見の様子がうかがえます。
天保元-3(1830-32)年頃　所蔵：メトロポリタン美術館

歌川広重　『東海道五拾三次之内　日本橋 朝之景』

『東海道五拾三次之内』は広重が東海道を描いた全55枚の連作で、広重を名所絵の名手として決定づけた代表作。『日本橋 朝之景』はその巻頭を飾った作品で、東海道の起点である江戸日本橋の早朝を描いています。
天保3(1832)年頃　所蔵：ニューヨーク公共図書館

歌川広重　『名所江戸百景　両国花火』『名所江戸百景　真間の紅葉手古那の社継はし』

全120枚の風景画シリーズ『名所江戸百景』は、江戸っ子の広重が親しんだ江戸の日常を描いた最晩年の代表作。『両国花火』では、今でも多くの方に親しまれている、隅田川の花火が描かれています。『真間の紅葉手古那の社継はし』は弘法寺（千葉県市川市に現存）にある楓と手児奈神社が主題。
『名所江戸百景　両国花火』安政5(1858)年　所蔵：ミネアポリス美術館
『名所江戸百景　真間の紅葉手古那の社継はし』安政4(1857)年　所蔵：千葉市美術館

東洲斎写楽　『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』『三代目佐野川市松の祇園町の白人おなよと市川富右衛門の蟹坂藤馬』

写楽と言えばこの顔！の『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』は、写楽のデビュー作である役者大首絵シリーズの一つ。『三代目佐野川市松の祇園町の白人おなよと市川富右衛門の蟹坂藤馬』は歌舞伎「花菖蒲文禄曾我」の登場人物です。
『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』寛政6(1794)年　所蔵：メトロポリタン美術館
『三代目佐野川市松の祇園町の白人おなよと市川富右衛門の蟹坂藤馬』寛政6(1794)年　所蔵：東京国立博物館、出典：ColBase（https://colbase.nich.go.jp/）

喜多川歌麿　『婦女人相十品　ポッピンを吹く娘』『当時三美人』

『婦女人相十品　ポッピンを吹く娘』は美人画の名手・歌麿による「婦女人相十品」シリーズの１枚で、江戸で人気の町娘を描いたもの。"寛政の三美人"を描いた『当時三美人』は、どれが誰かわかるよう身につけた着物やうちわに家紋があしらわれています。
『婦女人相十品　ポッピンを吹く娘』 寛政年間(1789～1801)前期　所蔵：東京国立博物館、出典：ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)　
『当時三美人』寛政5(1793)年　所蔵：ニューヨーク公共図書館

葛飾北斎　『菊に虻』

『北斎花鳥画集』の１点。70代の北斎による花と虫や鳥などを描写した10枚組の花鳥画シリーズです。何種類かの菊を花びらや葉脈の表裏を丁寧に描くことで、菊の立体感や生命力を見事に表現。菊の香りに引き寄せられた一匹の虻が、構図に動きを与えています。
天保4-5(1833-34)年頃　所蔵：ミネアポリス美術館

歌川国芳　『坂田怪童丸』　

『坂田怪童丸』は足柄山で生まれた怪力の金太郎の立身出世を描く童話の一場面。当時、金太郎は「怪童丸」と呼ばれ、男児の健やかな成長を祈願する「端午の節句」のシンボルでした。鯉との組み合わせは、縁起ものとしてよく浮世絵に描かれた題材です。国芳は“武者絵の国芳”とも称されるほど人気を博した武者絵に加え、動物の擬人化やユーモアたっぷりの発想で庶民を楽しませました。
天保年間(1830-44)中期　所蔵：東京都立中央図書館特別文庫室

歌川国芳　『其のまゝ地口猫飼い好五十三疋　中』『みかけはこはゐがとんだいゝ人だ』

国芳が得意とした戯画と呼ばれる作品です。『其のまゝ地口猫飼い好五十三疋』は、無類の猫好きな国芳が描いた猫まみれの三枚続の戯画（複製作品では中央の絵を使用）。『みかけはこはゐがとんだいゝ人だ』は、さまざまな姿態の人間で顔を表現した作品です。
『其のまゝ地口猫飼い好五十三疋　中』嘉永元(1848)年頃　所蔵：ギャラリー紅屋
『みかけはこはゐがとんだいゝ人だ』弘化4(1847)年　所蔵：山口県立萩美術館・浦上記念館
※『みかけはこはゐがとんだいゝ人だ』は「解説ブック」の名作ギャラリー収録。複製セットには含まれません。

鈴木春信　『雪中相合傘』『夜の梅』

春信は紙へのこだわりが強く、『雪中相合傘』はもともと「本柾」と呼ばれる厚手の高級和紙に刷られていました。そのため一般向けではなく、一部の富裕層や趣味人向けの限定作品であったとも。梅見をする女性を描いた『夜の梅』は何度も墨版を重ねて背景の漆黒を表現。
『雪中相合傘』明和4(1767)年頃　所蔵：シカゴ美術館　『夜の梅』明和3(1766)年　所蔵：メトロポリタン美術館
※『夜の梅』は「解説ブック」の名作ギャラリー収録。複製セットには含まれません。

葛飾応為　『吉原格子先之図』

北斎の三女 応為（おうい）による肉筆の浮世絵です。大胆な陰影で、暗闇の中の窓格子越しに遊女がシルエットで描かれ、一般的な浮世絵のイメージとは一線を画す幻想的な作品です。
文政-安政年間(1818-1860)頃　所蔵：太田記念美術館
※「解説ブック」の名作ギャラリー収録作品。複製セットには含まれません。

月岡芳年　『藤原保昌月下弄笛図』

物語集『今昔物語集』を題材にした歴史画。笛を吹く平安貴族の藤原保昌と、抜刀寸前の盗賊との無言の攻防が描かれ、人物の力強い存在感と緊張感が画面にみなぎっています。
明治16(1883)年　所蔵：東京国立博物館、出典：ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)
※「解説ブック」の名作ギャラリー収録作品。複製セットには含まれません。