2019.01.09
10年後のAI・ロボット時代に対するビジネスパーソンの意識調査
現在、世の中にある業務(仕事)の33%がAI・ロボットに代替されると推測。 ロボット研究第一人者、石黒浩大阪大学教授 ロボットとのワーキングシェアに期待することは「平等な世の中」 人が身につけるべきスキルは「コミュニケーション力」「カウンセリング力」
昨今の人工知能(AI)やロボット技術の進化は著しく、私たちの身近な生活の中にもスマートスピーカーが普及しだすなど、生活様式にも変化が訪れています。また、AIやロボット研究が進む中で、「AIやロボットによる仕事代替」などが話題になり、働くことや会社組織の在り方などを考え直す機運も高まっています。
通信教育を手掛ける株式会社ユーキャン(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:品川泰一)は、AI・ロボットなどのテクノロジーが発展し、「仕事の代替」が話題となっている現状をふまえ、20代〜40代の310名のビジネスパーソンに意識調査を実施いたしました。10年後の未来を自身の業務(仕事)と照らし合わせ、AIやロボットが台頭する時代に求められるスキルや代替されない資格に関して回答を得ました。
その結果、10年後、世の中の業務(仕事)量の33%がAI・ロボットに代替されると推測する結果が得られました。
また、本調査の結果を踏まえ、ロボット研究の第一人者である石黒浩大阪大学教授に、10年後のロボット研究がどのような進化を遂げているかなども考慮いただきながら、ビジネスパーソンへの調査で明らかになったAIやロボットによる仕事代替への期待と不安などに関して、コメントを頂きました。
また、石黒先生の研究領域である「人間らしさ」に関連して、AIやロボットとのワーキングシェアが進むと予測される10年後に必要なスキルなども伺いました。
【石黒浩教授のコメント】
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10年後くらいであれば、ロボットにSF映画に見られるような画期的な発展はなく、今から多少進むレベルだと思っています。
ロボットとは高度なデータ処理・分析能力を持った自律型機械といえます。人間には出来ない膨大な量のデータを高速で、ひたすら処理・分析するのに長けています。すなわち、データや検品作業など、ある意味“単純”な作業はロボットへの代替が進む仕事といえるでしょう。
しかし、人間がやっている仕事は、そんなに単純な仕事ばかりではないということを理解いただきたいと思います。多くの仕事の場合、10年のうちにその仕事全体がロボットに奪われるということはないと思います。
私は、あえて「10年後ロボットに奪われない仕事」は何かという問いに答えるなら、日本社会では当たり前と思われていたようなコミュニケーションを必要とする仕事。つまり、カウンセリングのような、人の心をくみ取りながら、人と関わりを持っていく仕事だと思います。
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■調査結果トピックス
[1]10年後、世の中の業務(仕事)の33.2%がAIやロボットなどに代替されると推測。一方、自身の仕事は全く代替えされないという回答が40.0%
・「世の中の業務(仕事)がAIやロボットなどのテクノロジーにどれくらい代替されるか」という質問に対し、平均して33.2%が代替されると回答。
・「自身の業務(仕事)が10年後、AIやロボットに代替されていると思いますか」の質問に対しては、40.0%が「代替されない」と回答。
[2] AIやロボットによる仕事代替に対して、期待が不安を上回る
・将来的にAIやロボットなどのテクノロジーが発展し、仕事の代替が話題になっていくことに対しての気持ちは、「期待している」方が51.0%、「不安を感じている」方が30.7%。
・期待する理由は「人間がすべき仕事に集中できる」、不安を感じる理由は「人間の仕事が奪われ失業者が増える」。
[3] 自身の業務(仕事)がAIやロボットに代替されるかもしれないとする不安は、AIやロボットに対する知識不足も影響か
・「AIやロボットについてどのくらい知っていますか?」の質問に対しては、「知っている」と回答した方が45.5%に対して、「知らない」と回答した方が54.5%と半数以上。
・「知らない」と回答した人の36.7%が、AI・ロボットによる仕事代替に「不安」と回答。「知っている」と回答した方の多くが、AI・ロボットに代替されないスキルを「持っている」と回答。
[4]10年後、AI・ロボット時代に備えて、身につけておきたいスキル:「専門資格(専門知識・技術)」「実行力」「論理的思考力」「課題を見つける洞察力」
「10年後、AI・ロボット時代に奪われない資格」:「保育士」「介護福祉士」「メンタルヘルス・マネジメント(R)」
・AIやロボットなどのテクノロジーがさらに発展しているであろう10年後に向けて、「身につけておきたいスキルがあるか」については、「専門資格(専門知識・技術)」(28.1%)、「実行力」(24.2%)、「論理的思考力」(23.9%)、「課題を見つける洞察力」(23.2%)が上位に。
・「10年後、AI・ロボットに奪われない資格」としては「保育士」(28.4%)、「介護福祉士」(20.6%)、「メンタルヘルス・マネジメント(R)」(18.7%)が上位にランクイン。
【トピックス1】
10年後、世の中の業務(仕事)の33.2%がAIやロボットなどに代替されると推測。一方、自身の仕事は全く代替されないという回答が40.0%
調査対象者全員に「10年後、今世の中にある業務(仕事)の何パーセントがAIやロボットなどのテクノロジーに代替されると思うか」を聞いたところ、最も多かった回答は、「21〜30%」(22.9%)となりました。平均すると、今世の中にある仕事の33.2%がAI・ロボットに代替されるという結果に。
次に、「10年後、あなた自身が遂行されている業務(仕事)はAIやロボットに代替されていると思いますか?」の質問に対しては、40.0%が「代替されない」、36.8%が「代替される」と回答し、拮抗した結果になりました。なお、「代替される」と回答した114名に、何パーセントの業務(仕事)がAIやロボットに代替されるかを聞いたところ、1位「21~30%」、2位「31~40%」および「41~50%」(同率)、4位「11〜20%」となり、代替の割合はかなりばらつきがあるようです。
【トピックス1に対する石黒浩教授のコメント】
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「10年後、ロボットに代替される仕事」は必ずあると思います。データ処理や検品作業など、ある意味“単純”な作業は、明らかに人がやるよりも、ロボットの方が長時間、疲れることなく遂行できます。
また、ロボットとのワークシェアは、すでにある程度進んでいると言えます。医療の現場では、ロボットの方が正確に検査できますし、厨房はロボットだらけという飲食店も増えてきています。
ただし、それらの仕事の全体がロボットに奪われるということはないので安心してください。患者さんへのカウンセリングのように人と心を通わせることが必要な仕事は、これからも人間がすべき仕事ですし、どんな時も不測の事態に対応できるのは人間だけです。ロボットはあくまで道具だと考えるべきです。道具が発展し世の中がどんどん便利になっていくのです。さらに、ロボットを上手く活用することで人をもっとサポートしたり、もっとハッピーにできるような新しい仕事も生まれてくると思います。
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【トピックス2】
AIやロボットによる仕事代替に対して、期待が不安を上回る
次に将来的に、「AIやロボットなどのテクノロジーが発展し、仕事の代替が話題になっていくことに対しての気持ち」を尋ねると、「とても期待している」(11.3%)、「期待している」(39.7%)と肯定的に捉える方が51.0%という結果に。「不安を感じている」(25.5%)、「とても不安である」(5.2%)と否定的に捉えた方が30.7%と、どちらかというと肯定的に捉えている方が多い結果となりました。
続いて、AIやロボットによる仕事の代替に期待すると回答した方、逆に不安を感じている方にその理由を伺いました。
「期待する」と回答した方の中では、「人間がすべき仕事に集中できる」(38.0%)が最も多く、「仕事の量が減ったり、残業が減る(ワークライフバランスの充実)」(28.5%)、「ヒューマンエラーを減らすことができる」(26.6%)という理由が続きました。AIやロボットにできる仕事は機械に任せて、より高次元でクリエイティブなことに集中できると考える方が多いようです。
一方、「不安を感じる」とした方の中では、「人間の仕事が奪われ失業者が増える」(40.0%)との回答が最も多く、続いて「自身の仕事がなくなる恐れがある」(36.8%)、「必ずしも商品・サービスの品質が保証されるものではない(最終的なクオリティは人の判断が不可欠)」(26.3%)という理由が挙げられました。AIやロボットに仕事を奪われることへの不安が強いようです。
【トピックス2に対する石黒浩教授のコメント】
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私がロボットの発展において期待していることは、もっと「平等な世の中」になるのではないかということ。例えば、自閉症や認知症の方の中には、ロボットとなら上手く会話できるという方がいらっしゃいます。医師は、そのロボットとの会話から適切な診療計画を立てていくのです。ロボット活用以前であれば、患者の状態を理解できないまま、診療を進めるしかなかったことを考えると、より平等な治療が受けられるようになったといえます。
技術というのは本来、世の中の様々な人をサポートするためにあると思っています。技術が発展することで様々な人をサポートできるロボットが登場し、平等な世の中になる事を私は期待しています。
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【トピックス3】
自身の業務(仕事)がAIやロボットに代替されるかもしれないとする漠然とした不安は、AIやロボットに対する知識不足も影響か
「AIやロボットについてどのくらい知っていますか?」の質問に対して、「知っている」と回答した方が45.5%に対して、「知らない」と回答した方が54.5%と、ほぼ半数ずつを占めていることもわかりました。
前出の「AIやロボットによる仕事の代替への期待/不安」の回答と合わせると、AI・ロボットについて「知っている」と回答した方のうち、AIやロボットによる仕事代替を期待している人は65.2%、不安と思っている人は23.4%。一方、「知らない」と回答した方では、期待している人は39.1%、不安と思っている人は36.7%という結果になりました。
AIやロボットに関して知識があるビジネスパーソンの方が、AIやロボットの能力と自分の仕事に必要なスキルや資質などを照らし合わせて考えることができるため、不安を感じている人が少ないのかもしれません。
また、「現在、AI・ロボットへ代替されないという『スキル』をお持ちですか」との質問に対しては、AI・ロボットについて「知っている」と回答した方のうち、「持っている」と回答した人が57.4%、「持っていない」と回答した人は22.7%となりました。一方、「知らない」と回答した方の中で、「持っている」と回答した人は23.1%、「持っていない」と回答した人は43.8%と、「持っていない」との回答が大きく上回る結果となりました。
AIやロボットによる仕事代替への期待と不安に関する質問同様、AI・ロボットに関して知識が浅い方ほど、ご自身の仕事やスキルがAIやロボットに代替されてしまうと漠然と不安に感じているのかもしれません。
【トピックス3に対する石黒浩教授のコメント】
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ロボットの発展に対し、不安に思うのは仕方がないことだと思います。新しい技術に対して不安に思うのは昔から一緒です。例えばスマートフォンが登場した時もプライバシーの問題が取り沙汰されました。それでも今はみんなが使っています。技術の発展には、必ず良い面と悪い面があって、良い面を正しく理解すれば、その技術を使いたいと思うようになります。そうやって、新しい技術は受け入れられていくのです。
とにかく不安を解消したいという方は、ロボットについて学ぶしかありません。現代は技術進歩が非常に速いため、その進歩にキャッチアップし続けるためには勉強し、知識を高めることが必要です。ロボットの中身を知れば、何が不安で何が不安でないのかが分かり、また、何をしていればロボットを上手く使いこなせるかも、自分で判断できるはずです。
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【トピックス4】
10年後、AI・ロボット時代に向けて身につけておきたいスキル:「専門資格(専門知識・技術)」「実行力」「論理的思考力」「課題を見つける洞察力」
「10年後、AI・ロボットに奪われない資格」:「保育士」「介護福祉士」「メンタルヘルス・マネジメント(R)」
最後に、AIやロボットなどのテクノロジーがさらに発展しているであろう10年後の未来に向けて、「身につけておきたいスキルがあるか」を聞いたところ、「専門資格(専門知識・技術)」(28.1%)、「実行力」(24.2%)、「論理的思考力」(23.9%)、「課題を見つける洞察力」(23.2%)という結果に。なお、人と関わり仕事を推進していくスキルともいえる「上司・同僚・顧客と協力しながら仕事を進めていく力」を身につけたいと回答した人は18.1%に留まりました。
また、「10年後、AI・ロボットに奪われない資格」としては「保育士」(28.4%)、「介護福祉士」(20.6%)、「メンタルヘルス・マネジメント(R)」(18.7%)が上位にランクイン。AIやロボットではおそらく満たすことができない、気配りや心のケアなど人ならではの細やかな心遣いを必要とする資格に票が集まりました。
【トピックス4に対する石黒浩教授のコメント】
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私は、ロボットが発展していく中で、人が身につけるべきスキルはコミュニケーション力やカウンセリング力のような、人と関わるスキルだと思います。ですから、人と関わる仕事やカウンセリング能力が必要とされる「保育士」、「介護福祉士」、「メンタルヘルス・マネジメント(R)」がロボットに奪われない資格に選ばれたのは、納得です。
具体的な例として、これまで介護の現場では、食事や入浴といった身体的な補助を提供するのに精一杯で、カウンセリング的な要素は重要視されてきませんでした。しかし今後は、ロボットの活用により身体的な補助の負担が軽減し、カウンセリングの要素がより重要視されていくでしょう。対話がない高齢者介護は想像することはできません。そんなことになれば、より認知症の方が増えてしまいますよね。
他の仕事でも同じです。ロボットには、万人に対してホスピタリティのある仕事は難しいです。だからこそ、人と関わるスキルを高めるべきだと思います。これからは、人と関わり、人間関係を深めるようなサービス、カウンセリングなどの仕事へのニーズが高まってくると思います。
私は、人が生きているのは人と関わるためだと考えています。一番の理想は細かい作業は全部ロボットがやってくれて、人がいろいろな形で人と関わるような世の中です。そうして、より“人間”を感じられるような社会になるのではないかと思います。
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■石黒浩教授プロフィール
1963(昭和38)年、滋賀県生れ。ロボット工学者。大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻・特別教授、ATR石黒浩特別研究所客員所長&ATRフェロー。
知能ロボットと知覚情報基盤の研究開発を行い、次世代の情報・ロボット基盤の実現をめざす。
人間酷似型ロボット研究の第一人者。2011年、大阪文化賞受賞。
主な著書に『ロボットとは何か』『ロボットは涙を流すか』『人と芸術とアンドロイド』『“糞袋”の内と外』。
哲学者・鷲田清一氏との共著に『生きるってなんやろか?』
■特設サイト
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20代〜40代のビジネスパーソン310名が回答
AI・ロボット時代に関する意識調査
ロボット研究者の石黒浩教授が思い描く人間とロボットのワーキングシェアとは?
特設サイトURL:
https://www.u-can.co.jp/2019research
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■調査概要
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調査名 :AIやロボットによる仕事代替の影響と備えておきたいスキルに関する意識調査
調査対象:20代〜40代のビジネスパーソン 310名(男性159名、女性151名)
実施期間:2018年11月5日〜9日
実施方法:インターネット調査
対象地域:全国
※グラフのパーセンテージは四捨五入されているため合計値が100にならないものもございます。
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